幼稚園は「幼児を保育し、適当な環境を与えてその心身の発達を助長すること。」
保育所は「日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育すること。」
基本的には文科省の管轄か、厚生労働省の管轄かという大きな違いがあります。が、私の脳裏には「伊崎田保育園」(鹿児島市)の強烈な印象が巣くっていました。実際に見学に行き、横峯文吉園長(プロゴルファー:横峯さくら選手の叔父さん)と話す機会もありました。
伊崎田保育園では「心・学・体」のうち「学」においては、次のようにHPに記載があります。
読み・書き・計算から自ら学んでいきます。『自主学習の力』を身につけることを目的として、年齢に応じ毎日コツコツと出来ることを積み上げていきます。 |
伊崎田保育園
3歳児から「自学自習」が日課に組み込まれており、大半の子が「小学校3年生」までの基礎的な学力を手に入れて卒園していく。学びは園児にとっては「遊びの一環」として受け止められている。学びの他にも「逆立ち歩行」「跳び箱」「レスリング(男の子)」「ピアニカ(全員が絶対音感を習得)」「合奏」などなど、ビックリする内容です。
むろん、上の下線部を期待しているのではありません。学力調査の結果(経年変化)を集団で見ると、「小学校低学年の学力が、ずっと中学校以降まで大きな影響を及ぼしている」ことは明白です。
具体的には、小学校入学時に「ひらがな」を習得している児童は、心身ともに余裕を持って小学校生活がスタート出来ます。その後の学力が順調に伸びていっています。
逆に、小学校入学時に「ひらがな習得」で難渋した子は、心の奥底に劣等感を抱き続けるとともに、成績面で苦難の道を歩んでいます。
ちなみに、言語力(読解力)という側面から見ると、(古典の)暗誦が大きな成果を得ることも、私の体験・研究から明らかになっています。これは年末・年始に「百人一首」カルタ大会導入でお茶を濁した?
程度で終わりました。

しかしながら「保育所」は「学校」の下請けではありません。保育所は基本的に「遊びの中で総合的に心身の発達を促す」ことに存在意義があります。
しばらく様子を見て、次の2点に私のアクション(関わり)を絞って、保育主任・年長児担任にお願いをしました。
@ 年長児でひらがなが読めない子は、個人的に「昼休み」(1時15分頃〜1時50分の間の適切の時間)に個別指導をする。入学時までには最低、ひらがなが読めるようにしておく。
A 年長児は毎日、「要約学習」の導入的な学習をする。具体的には「私の簡単な話「例=アメンボはなぜ水に浮かぶか?」を聞いて理解し、みんなの前に立って再現(スピーチ)する」学習です。時間帯は「午睡前」「終礼後」など、担任の意向で揺れました。 |
@は、当初は目当ての2人〜3人でしたが、「ぼくも」「わたしも」とやってきて、人数が増えました。やむなくというか、待ってましたというか、希望者にはその子用の小プリントを作ってやって、進める子はどんどん進化を促しました。
これは自由遊びの一角に「勉強コーナー」を設け、年長児(5歳児)に限り出入り自由の空間としていました。年長児(5歳児)にプレゼンのテーマとして「漢字」を取り上げました。取り上げたのは(簡単な象形文字)30字です。
このときをきっかけに、漢字一大ブームがわき起こりました。昼休み時間「自由学習の時間」を店開きしていましたが、ひらがな・カタカナをマスターした子が、問題プリントに「漢字」を加えて欲しいと申し出てきました。
迷った末に、せっかくやる気満々の時期を逃す手はないと考え、上記30文字(漢字)の「読み方をひらがなで書く」プリントを作りました。
幼児は友達と競うことが大好きです。というより、幼児は競い合う存在です。チャレンジする子が続出! 14名のうち、5名〜7名がこのプリントに幾度となく取り組み続けました。
たいした実践とは言えませんが、「漢字大好き」にして小学校へ送り出したという実感(充実感)は残っています。
……が、残念。この@は、保育士の申し入れもあって、3年目中途で店じまいしました。
Aは子ども達も、この時間を朝から心待ちにするほど楽しみにしてくれました。時間が一日15分以内なので、年長児が多い年度は「4人〜5人」ずつ交替で実施しました。この時間帯に、「絵を見せない読み聞かせ」(=自力読書を促す実践)「手品」(私の特技:タネに関して知恵を学ぶ機会)も導入しました。
振り返って、保育士にとっては違和感のある実践だったと思います。何とか私の熱意を汲んで(熱意に負けて?)ワガママを容認してくれていたと思います。
私の本心としてはもの足らない思いが残っていますが、よくぞ受け入れ続けてくださったと、感謝の思いでいっぱいです。
残念ながら私の退職後にも生き続けるという「夢」は断たれましたが、保育所に導入する手がかり、手応えを得ることだけは確認が出来ました。 ……天国で生かせるチャンスでもあれば、張り切ってがんばります。
さて、その成果ですが、「小学校入学後、きっと何かの役に立つはず」という薄ぼんやりとした自己満足かな? ただ、
子ども達がこの時間を朝からとても楽しみにしてくれていました。このことは、
私の充実感(確かな手応え)として残っています。