2025.04 花びらのひらりはらりと散りてゆく彼方に浮かぶ春逝きし旧友
血液のがんに冒されて余命一年の宣告を受けてから3年目の春、大学時代の友人K君が他界しました。この間、自身の来し方を振り返り、貯めてきた知の財産を本や紙芝居、新聞への寄稿の形で世に出してきました。無念には違いありませんが、恐らくは「やりきった!」という思いで息を引き取ったと思います。自身の肉体は「献体」という形で、死後も世に貢献しました。青空の下、桜の花びらが一枚一枚、意を決したかのように地に落ちていく様を眺めながら、ふとK君の生きざまが脳裏を過ぎりました。
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2025.04 うららかな春の陽を受け池の草むくむく起きて天に背伸びす
2025.04 むくむくと頭もたげて立ち上がる池のほとりの倒れし草木
池の周りの植物は、この冬の(80センチ以上の)積雪ですっかり地面に押し潰されていましたが、雪解け後のぽかぽか陽気にエネルギーをもらったか、むくむくと起きあがってきました。まさに死んだふり。その生命力に頭が下がります。
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2025.04 ふるふると風に揺れたるフキノタウ浅黄色して春を告げをり
2025.04 ほくほくとフキノタウ味噌食すれば春の香りが口に広がる
ランニングの道中、フキノトウを20個ばかり収穫し、今年もフキノトウ味噌にしました。ご飯に載せて食べると、春の香り(苦味)がそこはかとなく口の中に広がりました。
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2025.04 寒い冬何処で越したかカメムシの窓に貼りつき春を憩へり
今年初めてカメムシに出合いました。昨秋のカメムシの多さには辟易しましたが、この厳冬を何処で生き抜いたのでしょうか? マイナス十度以上の冷え込みにも逞しく生き抜き、窓に貼りついて気持ちよさそうに日向ぼっこをしていました。
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2025.03 空に満つ春の光に包まれて咲かむとすなり湖岸の桜
2025.03 うららかに陽の光満つ宍道湖に花冷えの風ふくらみて吹く
2025.03 静かなる春うらうらとたなびきて靄の彼方に嫁が島見ゆ
2025.03 宍道湖にさざ波立てて駆け抜ける風の行方を眺めてをりぬ
2025.03 地を這ひて舞い上がりたる春風の花さか爺を呼び寄せむとす
3月29日(土)、宍道湖畔のホテル7階レストランで朝食を摂りながら、青空に包まれて眩しく輝く宍道湖を眺めて過ごしました。折しも、島根県内でも桜が開花し始めたとテレビが報じています。いい季節を迎えました。
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2025.03 やはらかに春の光の満ち満ちてまだらに残る雪を包めり
先日は唐突に冬将軍が到来、20pの積雪がありました。が、昨日は「彼岸の中日」、今日は穏やかな晴れ。太陽も力強さを一気に増してきて、名残雪をずんずん溶かしていきます。ほんとうに嬉しい、いい季節がやってきました。
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2025.03 ゆふらりと燃ゆるかげろふ雪解けの野山を揺らし春を招かむ
三寒四温を繰り返しながら、赤来高原の野山も気が付けば一気に雪解けが進みました。朝、辺りを見回すと、どこそこに「かげろふ(陽炎)=太陽が照りつけた地面から立ちのぼる蒸気」が立ち上っています。きょうの天気予報は快晴、心の中にほのぼのとした気持ちがふくらんでいきます。
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2025.03 べた凪にゆるりと沈みゆく夕日ぷつんと消えて広がる闇夜
2025.03 半熟の卵のごとき姿して海の彼方に夕日落ちたり
3月7日(金)、多伎のレストランで食事をしながら、日本海の彼方へと沈みゆく夕日の一部始終を眺めました。夕日はじらすかのように、ゆっくりゆっくり落ちていきました。日が沈むと茜色から群青色へと、かぶさるように海と空とが溶け合っていきました。
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2025.03 口癖は よく分かりますそうですねそれではこれを短歌にしましょ!
2025.03 感動す季節を愛でる感性とそを映し取る言葉の魔術
先月2月1日、木次の岩佐恒子さんが他界されました。岩佐さんは長年、赤名短歌会の指導講師としてお世話になった方です。自らも歌人として地域に貢献されると共に、歌集も数冊発行されています。特に季節の微妙な移り変わりを捕らえる、その感性の鋭さ、素晴らしさが卓越していました。また、言葉の魔術師でもありました。3月23日には「お別れ会」が催されます。赤名短歌会として、会員が追悼詩を納めることにしています。
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2025.3 残雪の覆ふ野山に風遊びときおり春の流るるを見る
連日の雨で降り積もっていた雪も、あれよあれよと縮んでいく今日このごろです。健康ランニングの途中、ふと春の気配のする風が通り過ぎゆく気がしました。
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2025.3 しとしとと雪の景色をけぶらせてしみじみと降る三月の雨
2025.3 しとしとと雪の景色をくゆらせて三月の雨しみじみと降る
きょうは3月4日です。昨日からの雨は、どさっと降り積もった雪景色の上にしとしとと降り続いています。塩をかけられたナメクジが凋(しぼ)んでいくように、あたりの積雪をみるみる溶かしていきます。
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2025.3 また降るか積もりたる雪その上に淡雪の降るはらはらと降る

我が家の庭には、降り積もった雪が50p以上に達しています。そして、快晴の日が2日続きました。やれやれ、これで雪も一段落かと思いきや、3月1日夕方にかけて再びぼたん雪(降っても直ぐに溶けるあわ雪)がはらはらと舞ってきました。
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2025.02 バサバと天より雪の舞い落ちて一瞬のうち雪国と化す
本気で降り始めたら、その降りようは情緒も何もありません。さっきまで地面が見えていたのに、まさにバサバサと雪を積み重ね、辺りの景色を一変させます。
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2025.2 孫くれし手紙の文字が難解で感動までの宇宙空間
部屋の壁面に、「じいちゃんの誕生日」にと孫がくれた(数年前の)手紙が貼ってあります。 ……そうそう、こんなこともあったなぁ〜。古文書を解読するようにして読んだ記憶が蘇りました。
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2025.2 バサバサと天より雪の舞ひ落ちて生産性のなき労始む
「労」とは、心身を使って働くこと、ほねおり。今回の節分荒れは半端ではありませんでした。家の前の除雪は連日(一週間)、朝夕2回強いられました。除雪機があるとは言っても力仕事なので、作業後はだいたい下着を着替えます。全く生産性のない(やり甲斐のない)作業ではあります。
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2025.2 温泉の没我の耳に聞こえ来る果つることなき湧き出す話題
夕方、温泉で体を温めるのが日課の私です。とりわけ冬季の冷え切った身体を、ぬくぬくの温泉に委ねるのは至福の時間です。ゆったりした時間が流れます。が……、時によっては止めどもない井戸端会議に遭遇することもあります。高齢者同士の場合は自然、大声になりがちです。至福の時間が、一気に乱れます。
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2025.2 玄関のドアを開ければ突き刺さるやうな冷気が我が身を襲ふ
典型的な節分荒れに見舞われた赤来高原でした。一週間に渡り連日、玄関前・前庭の除雪作業に追われました。朝の冷気が強烈で、連日ー5度〜ー8度。愛犬の水が連日凍り付きました。
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2025.2 陽は照れど空よりガラス砕け散り夜は深沈と氷りつきたり
2025.2 陽は照れど空よりガラス砕け散り吹雪く夕べとなりて暮れゆく
弱々しい陽ざしが雪景色を際だたせていましたが、夕方にかけて細かいガラスような粉雪がキラキラと舞い落ちてきました。案の定、夜はすっぽりと雪国の世界に包まれてしまった赤来高原です。
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2025.2 撫づるごと風の過ぎゆく池の面に冬の光のたゆたひてをり
2025.2 雲低く垂れし切れ間に漏れてさす日光は池の面を揺らす
3匹の池のコイは、どこで休んでいるのでしょうか? 主の消えた池の面は、弱々しい冬の日を受けてゆらゆら揺れるばかりです。
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2025.2 清らかに冷えし空気に身を委ねひたひたひたと舗道を走る
午後から雪になるとテレビが言っていました。それまでにランニングを済ませようと、珍しく午前10時頃から、田園風景が広がる出雲のアスファルト道路を走りました。空気が澄んで、冷え冷えとしていました。
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2025.1 白黒の碁石に魂注ぎ込み打ち込む一手人生映す
2025.1 白と黒代わりばんこに打ちながら描く模様は絵画のごとし
2025.1 白黒の碁石が互いに競り合ひて描く模様ぞ絵画のごとし
囲碁の世界は人生と重なります。「ここで一気にたたみ込むべきか?」「ここは一歩譲って打つべきか?」「次の一手は(碁石の)生死に関わるぞ!」……。自問自答が続きます。相手にも思惑があります。こちらが予想したようには打ってくれません。駆け引きもあります。人生そのものです。
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2025.1 青空を見るといふより浴びてゐる大寒過ぎの雪国の冬
1月25日(土)、透き通るような青空が広がっています。5日前が「大寒」でした。毎年、この頃は除雪に追われる赤来高原ですが、何とも気分爽快、透き通った青空が広がっています。
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2025.1 新しき日記に文字を書くやうに雪の山道ふみつけ走る
2025.1 青空を吸い込むやうに深呼吸いざ雪道へ犬と飛び出す
2025.1 真冬でも早春のごとふっくらとした陽ざし浴び山道走る
ここまで(1/22)の所、有難いことに典型的な暖冬です。日課の愛犬との山道ランニングも、積雪10センチ〜20センチなので、何とか普通に走ることが出来ます。ただ「新しい日記に……」は、新雪に足跡を付けながら走ったときの詠草です。さすがに登り路は、走って駆け上がるのは不可能です。
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2025.1 ガンガンと頭の中を叩きつつインフルエンザ猛り狂へり
年末帰省のわが子と家族達が、年明けと共に軒並み高熱ダウン。代表で40℃の高熱が出た小1の孫が受診すると、インフルエンザと判明。あとは検査無し、「見なしインフル」。とんでもない年明けとなりました。私自身も2年ぶりの高熱ダウン。寝ても起きても、とにかく頭痛がひどくてとんでもない目に遭いました。
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2025.1 例のごと深夜にうごめく家ネズミ愈愈ここに貼り付きて止む
2025.1 安眠を乱し続けし家ネズミつひに捕獲す! 憎しあっぱれ
2025.1 ひと月の闘ひを終へネズミの瞳ひくつきながら恐怖見せをり
12月初め頃から夜中になると時折、カリカリガリガリ……毎晩毎晩しつこく、かそけき音が響いてきていました。さっそく「ねずみ取りシート」を買ってきました。しかし敵も去る者、なかなか仕掛けにかかりません。来る日も来る日も知恵比べが続きました。⇒⇒⇒
そしてほぼ一ヶ月後、ついにやっと捕獲に成功! 捕らえてみると、なるほど賢そうな丸まる太ったりっぱなネズミです。しばらくは見つめ合いました。敵ながらあっぱれ! ⇒丁重に穴を掘って埋め、般若心経一巻を唱えました。
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2024.12 暗闇に目輝かせカリカリと響くネズミの壁かじる音(再掲)
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