自己肯定感を育む
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2019.10.6(日)


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貴重なアイテム

 数年前、書棚から取り出した本からハラリと落ちてきた「通知票」、こんなお宝が『日本の文学』(森鴎外U)の中に眠っていようとは!

 ぼんやりと脳裏の片隅に存在していた、中学3年生1学期の「誇り」が、形となって登場してくれました。振り返れば、くじけそうになったときに支えてくれていた、アイテムの一つでした。

 この通知票が一つのきっかけとなって、東京のど真ん中の中学校(東京都中央区立文海(ぶんかい中学校)への転校が、急きょ(都立高校受験内申書の関係で、3年夏休み明け)決まった経緯もあります。

 ところが、転校後の3年生2学期の成績は惨憺たるものでした。転校先の中学校(文海中学校)は5段階評定、5教科のうち「5」は2教科に激減、「3」もありました。

 成績が落ちたとも言えますが、都会と田舎の学力差、これが現実でもありました。3学期はかなり成績が持ち直したとはいえ、まさに「井の中の蛙大海を知らず」を強烈に自覚させられた、苦い経験となりました。

※ 来島中学校 学年約110名3クラス
※ 文海中学校 学年約160名4クラス
   ……中央区立文海中学校(1968年、明正中と統合し中央区立第二中学校へ)

 人一人の人生は、自分を主人公にして小説が書けるほど、「禍福はあざなえる縄のごとし」「人生山あり谷あり」。この転校によって、自分の自尊心は見事に叩きのめされました。「婆さんっ子」の典型のような私の甘ったれ根性に焼きを入れてくれました。

 しかしながら、しばらく年を経て(主として教員になって)からは、このお宝通知票は私を支える貴重なアイテムの一つになっています。

 同時にプライド・誇りは持つべきではありますが、自信過剰・慢心は禁物! 人を見下したり、けなしたり、侮蔑したりはもってのほか。 ……この通知票は、(転校後の体験を含めて)自分を戒める貴重なお宝でもあるのです。

 ちなみに、通知票「行動の状況」はさすがに評価が甘すぎ、こんな立派な生徒(人間)ではありませんでした。が、時の担任の先生は、存在を認めてくださっていたのです。誇らしいことです。逆に言えば、こういう担任の先生の下だったからこそ、存分に力を発揮して自分を輝かせられたと言えるかもしれません。

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自尊感情の低い日本人


 『「いい親」をやめるとラクになる』(医学博士:古荘純一氏)によれば、日本では子どもが10歳頃から急激に「自己肯定感」が低下してしまう傾向があり、それは世界的にも珍しいとのこと。


 「自尊感情」は高すぎると他者との軋轢を生じやすくなる、という危うい一面がある。が、自尊感情(自己肯定感)の強い子どもは、情緒が安定し、責任感がある、社会的適応能力がある、成績もよいなどの特徴がみられる。(古荘純一氏)

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 残念ながら日本人の中高生の自己肯定感「私は価値のある人間だと思う」は、世界でも最低レベルにあります。(「子供・若者白書」=2018年11月〜12月調査:インターネットを通じた意識調査)

※  8% 日本
※ 20% 韓国
※ 42% 中国
※ 57% アメリカ

 日本人は謙虚なのか? 謙遜しているのか?
 この違いは、いったいどこから生じているのか?

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認め・褒め・励ます


 頑張っても頑張っても、勉強も運動も、その他の諸活動も、なかなかうだつが上がらない生徒がいます。

 スポ小バレーでも、アタックを教えたその日に、既に「形」になる子がいます。一方では、半年経っても「アタックの形」にならない子もいます。神様のイタズラとしか思えません。

 しかし思います。人間、そういう学校時代の「成績」「成果」では評価しません。どんな職業にあっても、いちばん大きな要素は「人間性」です。優しさ・あたたかさ・思いやり・勇気・根気強さ・責任感・前向きな姿……、そういう人間的魅力で評価します。

 児童・生徒に陰に陽に大きな影響を与える教師は、けっして「成果」のみで児童・生徒を評価すべきでは、当然ありません。

 子ども達は「依怙贔屓(えこひいき」に敏感です。でも偉いですね、遅れがちな子・問題を抱える子などに対して教師が「えこひいき」しても、まわりの子は決して文句を言いません。逆に応援してくれます。

  

 スポ小バレーを指導していた時期、練習中にあえて保護者にも聞こえるように、子ども達に話してきました。

 
「バレーが上手になることも、もちろん大事だ。それを目指して、今も頑張っている。それと同時に、いや、それ以上に重要なのは、バレーに取り組む姿だ。将来バレーを職業にする人は、ほんのわずか。じゃあ、スポ小バレーが終わって何が残るか? 辛くても苦しくても、なかなか上手にならなくても、ひたむきに一生懸命練習に取り組む、その姿。これは、将来に必ず生かされる。」(小学生には、もっと分かりやすい言葉で、……)

 「いや、それは違うでしょう!」「そんなきれい事を!」と反論される保護者もあると思います。でも、私にとっては、この精神が(教員時代から)ずっと息づいているのです。

 なお、社会人となれば「人間性」のみならず「成果主義」に翻弄される、厳しい現実の社会が待っています。そういう一面も、他方では伝えていく使命を、指導者は担っています。


 成果を上げている生徒については、心の底から褒め称えると共に、今後に生かされるよう支援していく。

 成果が上がらなくて下を向いている生徒(学力不振児・生活の乱れがちな子)には心から寄り添い、「えこひいき」も辞さない。良さを引き出し、認め、褒め、励ましていく。

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 いつも出来たかというと、反省点も多々あります。が、奉職以来、現在に至るまで「私の座右の銘(指針)」の重要な一つです。

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 15.12.27(日) 「勉強合宿を始めるに当たって」(努力bPをめざせ!)

 15.12.21(日) 「勉強合宿を終わるに当たって」(勉強をがんばる意味)