平成8年度〜9年度、私が教頭としてA中学校へ勤務している時、冬休み中、新年早々「勉強合宿」なるものを行っていました。場所は、三瓶青年の家。参加者は、中学校3年生のうち希望者。期間は3日間。一日、合計11時間勉強時間を確保しようという企画です。基本的に自学自習。最終日には、当日の日程通りの時程で、前年度の公立高校入試問題に挑戦、即自己採点という計画で行いました。
自学自習の取り組み状況を見ると、日ごろの学習成績との絡みで、いろいろと気づいたり感じたりすることもありました。なるほどな、と納得です。でも、初日も夜になると、大多数の生徒がまわりの雰囲気に包み込まれてか、集中して机に向かうようになるから不思議です。「朝の読書」ではありませんが、集団の持つパワーは凄いなぁと思います。
私が担当者でしたので、最終日の修了式の時に話をしました。その時の原稿が残っていますので、今回はそれを掲載することにしました。
蛇足ですが、「勉強合宿」になぞらえて、「読書合宿」なんてのはいかがなものでしょうかね? 一日11時間、みんなで読書三昧。日ごろそんなことはできないので、面白い企画だとは思うのですが、・・・?
1.受験勉強を機会に自分を磨こう!
勉強は、読んで字のごとく「勉めて強いる」、つまり、もともと「苦しい」、「ガマンする」という一面があります。逆に、それだからこそ意義があるのです。
「もっとゆっくり寝ていたい」、「ファミコンをもっとしていたい」、「テレビの見たい番組がいっぱいある」、「ぼーっとしたりゴロゴロしたりしていたい」、……。
人間はだれでも、楽な方・楽しい方を選びたいようにできています。でも、これに流されていては精神は腐ります。心は堕落します。
こういうつらく苦しい場面にあえて飛び込む、頑張って机に向かう、……。この積み重ねが精神を鍛え上げます。心がより豊かになります。
受験勉強は、「つらく苦しい」、「でも、頑張るべき」 という二面性を持っています。ここが大事です。苦しみを乗り越えれば、それだけの喜びが準備されている。それがまたいいところです。受験勉強は、若い時期、自分の精神を鍛え上げる貴重な機会です。
なお、実は、勉強はもともとやりがいのある、とても楽しい営みです。今まで分からなかったことが「分かった!」、できなかったことが「できた!」、そういう体験が積める世界です。
逃げ出さずに頑張れば、実に人間的な、価値ある喜びの体験を味わうことができるのです。. |
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2.勉強が得意だとなぜいいのか?
なぜ、そんなに苦しい思いをしてまで勉強をしないといけないのか? テストの成績がいいと、なぜいいのか?
率直に言います。「将来の選択肢が広がる」からです。「自分の将来のすそ野が広がる」からです。
つまり、成績がよければよいほど、選べる高校が増えます。成績がよければよいほど、選べる職業選択の幅が広がります。
どんなきれい事を言っても、これが今の社会の現実です。性格がどんなによくても、足がいくら速くても、足がいくら長くても、とりあえずはペーパーテストの成績が第一関門としてそびえています。
ただし、近年、入試や就職試験において、テストの成績や出身校によって選ぶ傾向が少しずつ弱まってきてはいるようです。
その人のやる気、思考力、創造力、実践力、誠実さなどを重視して選ぼうという動きがあります。. |
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3.「勉強が得意」というのは、人間を見るごく一部
大人になれば、中学校時代に数学の成績がよかったとか、英語が得意だったとか、そんなことは些細なことです。「あ、そう・・・」で終わりです。学校時代、勉強が得意だったというのは、人間を見るほん一部分に過ぎません。
大人の世界では、(みんなもそうかも知れませんが、)最終的には、その人の人柄です。人間性です。どんな考えの持ち主で、どんな生き方をしているか? そこが重要です。
だから、今、成績が悪いからと言って悲観したり劣等感を持ったりする必要は、全くありません。
また、成績がいいからといって「優越感」を持っても欲しくないです。そんな傲慢な人にはなって欲しくありません。
大事なのは、温かい心を持ち、前むきに、ひたむきに、いつでもどんなことにもベストを尽くして生きている、その姿です。
今回の勉強合宿で見せてくれた、その集中力とねばり強さをこれからも大事にしていって下さい。
受験まであと2ヶ月あまりです。勉強がタイギになったり、怠け心が起こったら、どうか今回の「勉強合宿」で頑張り抜いた自分を思い出して下さい。そして、つらく苦しい受験勉強の期間を、立派に乗りこえていって下さい。自分を鍛え上げる大事な期間にして下さい。. |
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