日本語の特色
[bS]

.

22.12.05(日)


コメントの部屋に戻る

これまでは、
@語順
A関係代名詞
B主語の省略
C敬語
D男女の言葉の違い
E終助詞
F格助詞・副助詞
G擬音語・擬声語・擬態語
を取り上げました。
今回はその続きです。





H 文字


 日本語表記は、漢字仮名交じり文です。

 同じく漢字文化の中国は、マスターすべき文字数(漢字数)が多すぎる(最低5,000文字)ので、ローマ字化を試みた時代もあります。が、同音異義語が多すぎるため見切りを付けて、「略語」の方向に動いています。

 韓国は、新たらしい文字(ハングル文字)を考案して、漢字を捨てました。
 ベトナムは、ローマ字化することによって漢字を捨てました。

 その点、日本は漢字から「ひらがな」「カタカナ」を考案し、それらを使い分けることによって、漢字の長所(表意文字)とひらがな・カタカナの長所(表音文字)を織り交ぜながら併用しています。

 日本をのぞいては、文明国において、表意文字(漢字)を使用している国は皆無と聞いています。 ……それは、「ひらがな」「カタカナ」が存在するおかげです。もっと言えば、日本語の構造上の特徴があったればこそ、表意文字・表音文字の併用が可能だったわけです。

 確かに、漢字の読み(約2,000文字)、書き(約1,000文字)をマスターするには、そうとうの労力が必要です。しかし、膨大な語彙を獲得していく過程で「漢字」の存在は貴重です。漢字無くしては、抽象語彙の獲得は困難を来します。

 漢字をマスターしていく過程で語彙を獲得し、語彙を獲得していく過程で漢字をマスターしてきているのです。日本において、漢字と語彙とは表裏一体の関係にあります。

.




この日本語表記は
以前取り上げていますので
22.02.14(日) 日本語の表記をめぐって

以下に
その中から
一部を抜粋(再掲)します。




日本語は
優れた表記法


 日本語の表記は、漢字仮名交じり文。(異論はあろうとは思いますが、)つくづく、ありがたい優れた表記を後世に残してくださったものだと、祖先に感謝です。

 もともと漢字の発祥地は中国。6世紀、仏教伝来に伴って輸入されたとされています。が、もっと以前だとの説もあります。いずれにしても、全く文字を持たなかった日本人が、中国の恩恵を受けて文字を持ったことは間違いがありません。

【備考】 神代文字(じんだいもじ、かみよもじ)と称し、漢字が伝来する以前に、古代日本で使用されていた文字があるという説がありました。が、現在では、近世以降に捏造されたものであり、漢字渡来以前の日本に固有の文字は存在しなかった、とする説が広く支持されています。

 この漢字を基に、「ひらがな」を発明し、「カタカナ」までも生み出した日本人の智恵は、これまた創造力に富んでいます。

 ところで、漢字仮名交じり表記は、漢字と仮名の特長を生かした、実に優れた表記法だと、つくづく感心しています。

漢字=基本的には、名詞、動詞・形容詞・形容動詞の語幹など。
ひらがな=基本的には、活用語尾、接続詞、感動詞、助詞、助動詞など。
カタカナ=外来語、計量,貨幣などの単位を表す語など。

 漢字をマスターしていない時期には、ひらがなだけで書き表すことが可能です。また逆に、漢字仮名交じり表記でも、漢字に「ルビ」を付ければ、漢字が読めなくても、その文章を読むことができます。 ……ただし、漢語の語彙の知識がなければ、文章が読めても意味が不明ですが・・・。

 韓国では、漢字を捨てて「ハングル文字」(表音文字)にしました。その結果、国立大学でも図書館の書籍の利用率は2%程度しかないそうです。要するに、過去の漢字交じりで書かれた本を、現代の韓国人は読めないのです。

 一方、中国では日本における「ひらがな」に当たる文字が作れません。作ったとしても数百文字必要の上、イントネーションに対応できないと言います。読み書きが通常にできるためには、最低でも5,000文字マスターといいますから、気が遠くなります。そこで、識字率を上げるため、思い切った簡体字化を押し進めました。その結果、過去の繁体字で書かれた書物を読める人は、ほとんどいなくなってしまいました。

簡体字 ←←←繁体字
万 ←←← 萬
与 ←←← 與
个 ←←← 個
乱 ←←← 亂
争 ←←← 爭
云 ←←← 雲
仆 ←←← 僕
体 ←←← 體
余 ←←← 餘
佛 ←←← 彿
儿 ←←← 兒
党 ←←← 黨
写 ←←← 寫
冬 ←←← 鼕



 もし日本人が「ひらがな」を編み出していなかったら、おそらくは遅かれ早かれ、漢字という怪物に押しつぶされ、韓国や中国のような運命をたどっていたかも知れません。

                 

 繰り返しになりますが、日本人は「漢字仮名交じり文」というすごい方式を、よくも生み出したものではあります。もし、日本語の文字が「漢字」だけだとしたらと考えると、ぞっとします。「ひらがな」は平安時代に生み出されましたが、これと「漢字」とを併用するなど、よくぞ考えついたものではあります。

 「漢字は、習得までに時間がかかりすぎる、労力が要りすぎる。」という主張がなされた時代がありました。実際に戦後、日本語廃止論を志賀直哉が唱え
(六十年前、森有禮が英語を國語に採用しようとした事を此戰爭中、度々想起した。若しそれが實現してゐたら、……(中略)……尺貫法を知らない子供のやうに、古い國語を知らず、外國語の意識なしに英語を話し、英文を書いてゐたらう。英語辭書にない日本獨特の言葉も澤山出來てゐたらうし、萬葉集も源氏物語もその言葉によつて今よりは遙か多くの人々に讀まれてゐたらう)たり、日本語のローマ字表記やひらがな分かち書きを、梅棹忠夫が提唱したりしたこともありました。が、幸い多数派にはならずに済みました。

 「ひらがな」だけの表記は、読む場合にはとてつもない労力を伴います。特に「漢語」は同音異義字が多いので、読み間違ったり混乱したりもします。その上、速読が不可能になってしまいます。


【漢字の力】 ……平仮名だけの世界だと?

 かんじを おぼえるのは ちょっかんりょくだと いわれています。かんじを おぼえるじきに おぼえさせなくては いっしょうの ふかくです。とりわけ しょうがっこうのいちねんかんは おとなの じゅうねんかんに あたると いわれています。

 こくごの じゅぎょうに おいては、ないようはあくに りきてんが おかれすぎています。ていがくねんの じきには むずかしいことを いわず、かんじが よめるよう にしてやるべく ぜんりょうを とうにゅうすべきなんです。すぐれた さくひんや はっと おどろくような ぶんしょうひょうげんに どんどん であわせてやるべき じゅうような じきなのです。


.

 とりわけ抽象的なこと、抽象語の内容については、「漢字」からインプットするケースが多いと思います。漢字でインプットするから、忘れにくくなるという側面も見逃せません。

 確かに、漢字のマスターには労力・時間を伴いますが、その習得の過程で得るものも大きいし、何と言ってもマスターしてしまえば、こんなに素晴らしい表記(表音文字と表意文字の長所を生かした表記)はありません。

.


 ★ ひらがな ……助詞、助動詞、送りがな。その他、接続詞、感動詞など。
 ★ カタカナ ……外来語、擬音語など。
 ★ 漢 字  ……実質的な部分。名詞、動詞など、文章骨格(主語・述語等)となる部分。









I 音韻



 日本語の音声は、「母音」が、ア・イ・ウ・エ・オの5つしかありません。英語や中国語などと比較して遙かに少ない数です。

 また、「子音」の数も英語などと比べると、圧倒的に少ない数となっています。

 そして、日本語の場合は、「母音プラス子音」という、実に単純な方法で「一音節」を形成しています。子音の複雑な組合せもありません。

 したがって、英語の「strike」が外来語として導入されると、「sutoraiku」という音声に変わります。

 総じて、日本語の音声は実に単純だと言えます。

.





 英語を習い始めたとき、日本語を話すときには使わなかった「舌」を酷使したり、唇を歯で噛んで発音したり、……。ずいぶん難渋したものです。いかに日本語の発音が単純明快かと言うことです。

 一方、外国人が日本語を話すとき、促音「っ」の発音に苦労していることが分かります。「かかった」「やっつけた」など、難しそうに発音しておられます。日本人から見たら、不思議に見えます。

 ところで、橋本進吉博士(国語学者)によると、短音についてのみいえば、日本語の音韻は次第に数を減じ、シンプルなものになったと言われています。

 逆に、今日普通に用いられている拗音(きゃ、きゅ、きょの類)、促音(いった、さったの類)、「ん」を含む言葉(死んだ、生んだの類)は、古代にはなかったとされています。これは、漢語の影響を受けて生まれたものだそうです。

 また、近代以降には、西洋語の影響が加わり、「ぱ」行や濁音で始まる言葉も生まれるようになりました。これに長音を加えると、音のバラエティは、古代よりも現代において豊かなように思われます。

               

 蛇足ですが、高校時代に「平安時代は、『星』のことを『poshi』と発音していました。」と教わり、驚いたものです。

 基本的に古代日本には「H」の発音はなく、今の「H」の発音は「P」の発音だったそうです。時代とともに「P」は「PH」の発音へと変化し、完璧な「H」の発音ができたのは江戸時代に入ってからです。

 例えば、「星光る」という言葉は、次のように変遷しました。

平安時代「ぽしぴかる」
→鎌倉時代「ふぉしふぃかる」
→江戸時代「ほしひかる」


同様に「日本」という言葉も、次のように変化しました。

平安時代「にっぽん」
→鎌倉時代「にふぉん」
→江戸時代「にほん」


               

 これも蛇足ですが、日本には「方言」が存在しており、とりわけ「出雲弁」における、(私から見たら)とてもまねが出来ないほど難しい発音がいっぱい存在しています。

.

出雲方言番付表(音声ファイル付き RealAudio).




○平田弁(文責:奥野)

1)わーわ、日本の国民は、えこたえ、わりこたわり、ちー、まっとーな考え方を、だいじんして、
世の中が、らしのねことね、ならんやね、安堵して暮らせーやな、
おだいかな世界を、心底、願っちょーとこです。
だけん、国と国が、えじおこいたけんてて、そぎゃんとこへ、出かけてえって、
武力使って、ちからせぎで、せごしたーやなんか、こんりんざい、やーません。

2)そーだけん、陸軍、海軍、空軍、せから、大砲だのミサイルだの爆弾やなんかの兵器は、
なんだい持たんことにしました。
わーわ、日本の国民は、国が戦争すーこた、だーが、なにいわと、認めません。

http://www7a.biglobe.ne.jp/~izumobenn/より引用しました。