@ この夏、世界の多くの地域が記録的な熱波に襲われ、北極圏ですら高温の日が続きました。しかし、ひょっとすると、これはまだ入り口にすぎないのかもしれないのです。最近、これまでの気候変動をめぐる考え方を覆す新説が登場し、注目を集めています。その一つが、たとえ今から温室効果ガスの排出量を削減しても、既に動き始めている温暖化が自然界全体の現象の引き金を引いてしまっているので、制御不能な温暖化が進行する可能性があるという説です。
A 温暖化によりアマゾンの熱帯雨林が縮小したり、北極の永久凍土と南極の海氷が解け出したりすると、熱帯雨林や永久凍土や海氷に貯蔵されていた二酸化炭素が大気中に放出され始め、温暖化の進行に歯止めが利かなくなるというのです。この現象は「ホットハウス・アース(温室化した地球)」と名付けられています。現在、世界の平均気温は産業革命前に比べて約1度高く、10年間に約0.17度のペースで上昇しています。気候変動による最悪の事態を避けるためには、産業革命前との温度比較で2度上昇までに抑えることが不可欠だと、大半の専門家は主張しています。気候変動に関する2015年のパリ協定でも、この目標の達成に向けて世界の国々が合意しました。
B しかし、今年8月6日に米国科学アカデミー紀要に発表された論文によると、最悪のシナリオでは、ホットハウス現象により世界の平均気温は産業革命前と比べて4〜5度高くなり、海水面は最大で60メートル上昇するとのこと。そうなれば、地球上の多くの場所が人間の住めない土地になると指摘しています。