コメント力の育成
.

2018.6.1


ホームページに戻る


「要約学習」の時間に
知り得た情報から
自分なりに思考をめぐらし
自分の考えをまとめて
友達にプレゼン(スピーチ)する。

その際
スピーチ内容を
事前に作文しない。
(作文を朗読しない。)

キーワードを構造化した
図式のスタイルで考えをまとめ
発表の際の拠り所とする。

授業50分間のうち
後半を使って実施しました。

まずは
生徒の図式を紹介します。






 先生は働き過ぎだから、部活動指導はやめにして勤務時間に「ゆとり」を持った方がいい。それに専門以外の種目を教える先生もあるので、外国の多くの国がしているように、一般の人が指導する方がいい。そうしたら生徒も専門家に指導してもらえていい。
 ただ、地域に部活動を指導してくださる人が見つかるかどうかが問題。すぐには実現出来ないかも知れない。

.











 部活動をやりたくない先生もあると思う。無理やりやらせるのは問題がある。そこで将来的には、部活動指導は地域の人がすべきだ。
 そうすることにより、先生の労働時間が正常になる(超過勤務がなくなる)し、専門的知識があってやる気のある人が指導されると、生徒にとってもありがたい。
 せめて、担当の部活動を校長が決めるのではなく、先生がやりたいと思う部活動を選ぶべきだ。

.










 今、赤来中にはバレー部と卓球部には「外部講師」の人が入っている。これを広げて、将来的には先生ではなくて地域の人が指導を担うべきだ。
 こうすることにより先生の負担が減るし、生徒は地域の人と関わるので交流が生まれる。

.










 将来的には、部活動の担当は外部講師にすべきだ。そうすると、確かに先生との会話が減ったり、ケガなどの時に外部講師の方に負担がかかったりするかも知れない。
 でも、先生の休養にもなるし、先生にゆとりが出来て生徒とのコミュニケーションが増えるのではないか。

.











コメント力の向上を目指す!


 指導者の提示した情報が「学校における働き方改革に関する緊急対策」に関すること(下の背景が青い文章)でしたから、生徒のコメントの大半が「部活動指導者を先生から地域の専門家へ」という傾向になりました。

〜タイトル「部活動」〜


 昨年(2017年)4月、文部科学省は小中学校の教員を対象とした平成28年度の勤務実態調査結果を公表しました。10年前の前回調査と比べ、小中の教員とも勤務時間が増加。週60時間以上だった教諭は小学校で34%、中学校では58%に上っています。

 公立校教員の勤務時間は週38時間45分と規定。上記の教諭は「週20時間以上の時間外労働」が常態化しており、「過労死ライン」(月80時間超が目安)を上回っていることになる。文科省は「学校を支える教員の負担は限界に近い」とし、中教審などで今後対策を議論すると発表しました。

 これを受けて、昨年12月(2017.12.26)、文科省は「学校における働き方改革に関する緊急対策」を発表しました。それによると、「部活動は学校ではなく、地域が担うものとする」という方向性を打ち出しました。特に、「教師の負担軽減」と「適切な部活動指導」を挙げています。日本独特のスタイルを抜本的に見直そうというわけです。

 教師の負担軽減という視点では、すでに「開かれた学校づくり」(1990年)で打ち出されています。部活動の外部委託が予算化され、現在では全国で3万人を超えています。今回の提言では更に推し進め、外部委託を「学校単位」から「地域単位」に移行させたいとしています。

.


音声言語で伝えるため
実際には
上の文章通りではありません。
骨子は上記の通りですが
枝葉を付けながら
約6分間のスピーチでした。


 意見をまとめる(図式を書く)時間を4分、設けました。意見発表は2人組を作り、相互に30秒以内という設定で行いました。その後、(授業時間の関係で)2人のうち一人が全体発表というスタイルにしました。

 4分以内に図式に考えをまとめるという作業は、出来不出来は別として全員が出来ました。図式に基づいて意見発表するという学習も、教室全体的に前向きに真剣に出来ました。

 ただ、自分の意見を図式のスタイルでまとめるという作業は、(要約学習の授業としては)2年生にとって初体験。戸惑っている生徒も若干名いました。

 こういう「
与えられた情報に関して、自分なりの意見をまとめて発表する」というスタイルは、これまで要約学習の授業で何度か(年度末に3年生)試みてきています。が、表面的で淡泊な意見発表が大半。指導者としては今ひとつ消化不良の授業となっていました。

 しかし、今年の2月に2・3年生で導入したところ、思いがけない成果を発見! その基盤として、図式力が全体的に合格点。よって図式に基づくプレゼンも堂々としており、短時間でコンパクトにスピーチ出来ていたという実態がありました。

 そこで、今年度は年間7回の授業のうち、2・3年生はすべて導入しようと計画しています。赤来中の先生方の了解も得ています。

 今年度第一回目を終えての感想ですが、(同じく部活動をテーマとして実施した結果)2年生と3年生との差が歴然としていました。やはりコメント力の基盤として「図式力」、それに基づく「プレゼン力」が必要十分条件として横たわっているという印象を受けています。

 しかし、めげずに第2回目(7月)も、「与えられた情報に関して、自分なりの意見をまとめて発表する」学習を2年生にも導入するつもりです。

.







要約学習の飛躍を期して!


 「総合的な学習の時間」の目的(目標)として、学習指導要領には次のように書かれています。


[第1章]横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに,学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにする。

.

 内容がてんこ盛りの文章ですが、ポイントは次のようになります。
1) 探求的な学習
  
情報の収集(調べ学習) 
  ⇒整理・分析・まとめ 
  ⇒プレゼン(発表)


2)協同的な学習
  
異なる視点から考え、協同的に学ぶ(例;討論・ディスカッション)

3)言語活動の重視
  
思考力・判断力・表現力を伸ばす。

 「要約学習」においては、特に「調べ学習」において「文章を丸写ししない資質や能力の育成」を念頭に置いています。そのための手だてとして「図式」を取り上げ、図式力の向上を目指しています。

 また、プレゼンの際、予め発表原稿を書いてそれを音読したり、暗記して発表したりというスタイルの打破を目指しています。そのための手だてとして「図式」を取り上げ、図式力の向上を目指しています。

 ところが、上記の学習の積み重ねからは「自分」が出せません。与えられた文章を図式化し、それを基にプレゼンしているわけですから、(考えてみれば)国語の読解力の育成と何ら変わりません。

 本来、「総合的な学習の時間」創設の根元的なねらいは、自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成する」です。

 今回取り上げている「コメント力の育成」はズバリ、ここにメスを入れることを目指しています。情報を正確に理解するだけでは自立した社会人と言えません。
情報を基に横断的、縦断的、立体的に思考をめぐらし、しっかりとした根拠の基に自分の考えをまとめて述べる! ここを育てる必要があります。育てなくてはいけません。

 これまでの「要約学習」は、ですから基盤の学力を育てるところで止まっています。今年度は、赤来中学校2・3年生を軸に、これからの社会に求められている学力
(上の青文字)育成を目指そうと、強く決意しています。

 そこで問題となるのが、何と言っても題材です。私自身の指導者としての資質・能力が問われています。

.




応用編
これまでの「要約学習」で取り上げてきた題材。

メディア・リテラシー(英: media literacy)
=情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、
その真偽を見抜き、活用する能力のこと。



リテラシー
=読み書き能力。情報の応用力。
情報を受信するだけでなく、発信できる能力も含めた活用力。




.