要約学習の実際
〜第2時間目〜
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N小学校6年生〜

2014.6.19(木)


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はじめに


 N小学校6年生を対象に、要約学習の授業を行いました。5時間目と6時間目、2時間連続で実施。私にとっては初めての体験でした。

 例によって、5時間目(要約学習第1時間目)は、2人ペアになって、音声言語のみによる「聞き取り⇒再現」を行いました。全部で8本、行いました。

 6時間目(要約学習第2時間目)は、音声言語から文字言語への橋渡しとともに、いよいよ「図式」を自分で描く時間です。そして、プレゼンテーションも盛り込んでいます。

 準備した教材は4本です。すでに手元にある教材の中から、小学校6年生をイメージして再構成(作文)しました。

 以下は、授業(45分間)の流れです。


05分 導入……さまざまな図式の紹介(図式のイメージ作り)
15分 個人学習(各自、手渡された文章の図式を書く)
07分 同じ文章を図式化したもの同士が、図式を見せ合う。
07分 違う文章同士2人ペアを作り、お互いにプレゼンし合う。
     ⇒できるだけ図式を見ないでチャレンジ!
10分 代表者4人による全体プレゼン。

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40人の教室でしたが
そのパワフルなこと!
実に純で前向きな子ども達です。
圧倒されながら
頭が下がる思いで
授業を展開していきました。

では
6時間目(要約学習第2時間目)の
図式をご覧ください。
子ども達にとっては
「図式」という名の下に
初めて描いた作品(学習の成果)です。










ミドリムシ




児童の図式(例)


















@ ミドリムシは 0.1mmの小さな生物です。「ミドリムシ」と言いますが「ムシ」ではなく、ワカメやコンブと同じ「藻」(植物)の仲間です。それなのに、動物のように移動することもできる、たいへん珍しい生物です。今、このミドリムシが注目されています。

A 一つは、ミドリムシから日本が輸入に頼っている石油を作ることです。ミドリムシは増え方も早い上に、体の中に油を造ります。そこで、このミドリムシを大量生産して石油を取り出す研究が進められているのです。

B 二つ目は、栄養食品として脚光を浴びていることです。ミドリムシは、ビタミン・ミネラルなど、実に59種類もの不足しがちな栄養を備えています。そこで、被災地や難民キャンプ地への食料援助物資としても、ミドリムシが利用できるかも知れません。

C 三つ目は、ミドリムシを食べることによって、病気になりにくい体を作ることです。ミドリムシは(病気から体を守る役目の)「免疫機能」を高める効果が確認されています。このように、ミドリムシは今、たいへん注目されているのです。

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※ 難民キャンプ地 =戦争などから避難した、大勢の人が貧しい暮らしをしているキャンプ場(仮の住まい)。








指導者サンプル

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昆虫の工夫




児童の図式(例)
















@ 昆虫は、カエルや鳥などの食料(食べ物)になります。そこで、昆虫はいろいろな方法で身を守っています。では、どんな方法があるのでしょうか。

A まず、敵をだます方法があります。体の色や形を周りの物に似せて周りにうまく溶け込み、敵の目をごまかします。バッタは、木の葉や草を食べていますが、体の色や形が木の葉や草によく似ているので、うまく身を隠すことができるのです。

B 次に、見た目で敵を脅かす方法があります。ムクゲコノハというガは、羽を広げると後ろ羽の模様が、大きな動物の目のように見えます。この目玉模様は鳥を驚かせ、追い払う効き目があります。

C 武器で戦う方法もあります。自分の体に持っている武器で、敵に攻撃を仕掛けるのです。例えば、テントウムシは、足の節から黄色くて臭い汁を出します。ハチは、毒針で攻撃します。

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指導者サンプル

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NK細胞




児童の図式(例)












@ 人間の体は、60兆個もの細胞から出来ています。この細胞一つ一つは、古くなると死んでいきます。代わりの新しい細胞をどんどん造らないといけません。その際、遺伝子の情報(どのような細胞にするのかという設計図)に基づいて、死んでいく細胞と全く同じ特徴を持つ細胞を造ります。(Aくんは、Aくんの姿形であり続けないといけません。)

A ところが、さまざまな原因で、正常な細胞とは異なった細胞が出来ることがあります。これが「ガン細胞」です。一日に約5,000個も発生していると言われています。でも、安心してください。ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)が、このガン細胞を破壊してくれるのです。誕生したばかりのガン細胞を発見しては、たちどころに攻撃して殺します。私たちのカラダの中では、毎日毎日、「5,000勝0敗」の闘いが繰り広げられているのです。

B しかし、ナチュラル・キラー細胞による監視も、さすがに時にはミスが起こります。生き残ったがん細胞は、やがて大きな塊に成長して「癌」になっていくのです。

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指導者サンプル

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傷の修復




児童の図式(例)












@ 手を切ったりしてケガをすると、たちどころに傷口から血が出てきます。人の体は、この血の働きによって傷を治すことを始めます。

A 血管が切れると、血液中からフィブリンという細い糸のようなものが出てきます。このフィブリンは、血小板や赤血球の粒を絡めながら、血の塊を造ります。この塊が少し固くなったのが「かさぶた」です。かさぶたは傷口をふさいで出血を止めたり、細菌が入ってくるのを防いだりします。

B 同時に傷口で始まるのが、白血球などによるばい菌攻撃です。このことにより、傷口が化膿する(膿む)のを防ぎます。

C さらに、かさぶたの下では傷口を治して元通りにするために、新しい皮膚や皮下組織の細胞をどんどん造り始めます。ですから、かさぶたは無理に剥がしてはいけません。傷の修復が終わったら、自然にかさぶたは剥がれるようになっているからです。

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指導者サンプル

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冒頭にも紹介しましたが
子ども達の目の輝きは
指導者を圧倒するものでした。

参観者(教職員)が50人前後おられたと思います。
そんな環境にあっても
それを全くものともせずに
ばりばり授業に立ち向かってくれました。

こういう姿勢で授業に臨んでくれたら
めきめき学力が付きます。
個と集団の力です。
目指すべき学習集団です。

上に紹介した図式については
完成度は今ひとつかも知れません。
しかし
初めての作品(学習の成果)としては
学級全体的に
立派な合格点です。

図式はもとより
伝えようというその意欲
聞き取るぞというその集中力
これらが
教室中にみなぎっていました。

そして
最終プレゼン(教室全体で代表プレゼン)ですが
挙手が沢山あって
じゃんけんで決めるほどでした。

そして
4人とも実に堂々たる
プレゼンテーションを見せてくれました。
うち一人は
まったく何も見ずに
会場を見回しながら
立派にスピーチしました。
驚きを越えて
感動の拍手が
教室内にこだましました。

この教室では
一週間後に
もう一時間
授業を行います。

いわゆる
要約学習が軌道に乗った状況を
授業公開します。

あのパワフルな子ども達と
授業が出来るのが
今から楽しみです。








 
2014.6.26
N小学校6年生 要約学習(第3時間目の授業)