フシダカバチの秘密
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2014.1.29(水)


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 「フシダカバチの秘密」は、かつて国語の教科書(東京書籍)に掲載されていました。ファーブル昆虫記からの引用教材です。
 ここに紹介するのは、平成9年度赤来中学校一年生の生徒が、私が担当していた「国語」の授業で作成したものです。全体構成の巧みさに加えて、挿絵(漫画)がユニーク。今でも宝物の一つとして、手元に残しています。

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不思議の一つ


 フシダカバチには、不思議なことが2つあります。一つは、冷蔵庫も持っていないのに獲物のゾウムシを見事に保存することです。その謎を解明するために、フシダカバチが抱えて巣に戻ってきたゾウムシを横取り。調査してみました。
 すると、しなやかな関節、鮮やかな色、傷一つ見つかりません。ゾウムシは動かないだけで、まるで生きているときと一緒です。

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やっぱり生きている!


 観察もしてみました。ビンや袋に入れて一ヶ月間ほったらかしにしておきました。すると、腐りもしなければ、カラカラに乾きもしません。しかも、お腹の中のものがすっかりなくなるまで、フンもし続けたのです。

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実験もしました


 そこで、本当に生きているかどうか試すために、ベンジンに浸したおがくずの上にゾウムシを置いてみました。すると、ぴくぴくと反応したのです。念のため、電気ショックも与えてみました。やはり、電流に反応しました。 ……生きていることがはっきりとしました。
 すると、この獲物のゾウムシは麻痺させられているのではないか? これは是非、ハチがゾウムシを刺すところを観なくてはいけません。

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狩野現場を探し回る


 まずは、狩野現場に出くわすために、必死になって探し回りました。しかし、目撃は絶望的でした。

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巣穴の近くにゾウムシを置く


 そこで、巣穴の近くに自分が捕まえてきたゾウムシを置いてみることにしました。不思議なことに、このゾウムシには見向きもしませんでした。

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ビンの中に両方を閉じこめる


 次のアイデアは、ビンの中にゾウムシとフシダカバチとを閉じこめる方法です。ところが、何としたことかゾウムシの方が攻撃する側に回ったのです。

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分かったぞ!


 そこで一計を案じ、巣穴の近くに戻ってきたフシダカバチのゾウムシと、自分が捕まえたゾウムシとをすり替える作戦に出ました。獲物を抱えて巣穴に戻ってきたゾウムシは、いったん獲物を下におろして後ろ向きになって巣穴に獲物を運び込みます。
 このときがチャンスです。自分のゾウムシと素早くすり替えました。大成功です。
 動かないはずのゾウムシが暴れ始めたので、ハチはビックリ仰天。あわててゾウムシに挑みかかりました。そして、ものの一撃でゾウムシを動けなくしてしまいました。
 あとでゆっくり調べてみると、その場所とは、前胸のど真ん中であることが分かりました。

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ところで……


 どうしてフシダカバチは、殺さないで動けなくするんでしょうか? 獲物のゾウムシは、フシダカバチの幼虫のえさとなります。
 死んでいては、幼虫が中毒を起こします。かといって、動き回ったら幼虫が踏みつぶされます。
 しがたって、動かないけど、生き生きとしたえさ(獲物)が必須条件なのです。

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運動中枢を麻痺させていた理由


 そこで、ゾウムシの運動中枢に針を差し込んで、麻痺させていたのです。

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なぜゾウムシだけ?


 一つの疑問は解けました。もう一つの謎は、他にも昆虫はいっぱいいるのに、なぜわざわざゾウムシだけを捕まえてくるのかということです。
 針を刺す場所(運動中枢)が分かっているので、辞典などで調べてきました。すると、なるほどということでした。

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神経が一つにまとまっている


 他の昆虫の運動中枢は、3カ所に別れています。一カ所針を刺しても動き回ります。ところが、ゾウムシは運動中枢が一カ所に集まっているのです。その場所(前胸)を指せば、一刺しで獲物をしとめることが出来ます。
 フシダカバチは、解剖学者にしか分からないようなことを理解して、幼虫のえさを狩ってきているのです。

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