@ 人間への移植用の臓器を持った状態の子ブタが今年2月、国内で初めて誕生しました。明治大学と協力したベンチャー企業「ポル・メド・テック」(川崎市)は、アメリカの企業「イージェネシス」から輸入した遺伝子改変ブタの細胞を使い、このクローン子ブタを誕生させました。今後、誕生したブタの腎臓をサルに移植し、生存期間や臓器が正常に機能するかなどを確かめるとのことです。その後、人間に移植する臨床研究を2025年に始めるとしています。
A 種の壁を越えて臓器を移植すると、強い拒絶反応が起きます。遺伝子改変ブタの細胞は、この拒絶反応を抑えるために、10種類の関係遺伝子を改変したり、ブタの遺伝子による体へのリスクを除くために約50カ所の遺伝子が働かないようにしたりという操作がされています。アメリカでは2023年、今回と同じタイプのブタの腎臓を移植したサルが2年以上生存したり、ブタの心臓を重い心臓病の患者に移植して一時的に心機能の回復に成功したりという成果が発表になっています。
B 日本臓器移植ネットワークによると2022年、人口100万人当たりの臓器提供者数は日本は
0.9人、アメリカ 44.5人、イギリス 21.1人、韓国 7.9人など海外と比べて少ない一方、日本の移植希望登録者は腎臓が1万4346人、心臓が861人に上り、待機患者が圧倒的多数に上っています。ブタからヒトへという種の壁を越えた「異種移植」は、新たな移植医療につながると期待されています。