@ サシバエは、普通のハエと異なり哺乳類から血を吸う昆虫で、特にウシやウマなどの家畜にとっては深刻な問題です。サシバエに襲われたウシはストレスから運動量や食欲が減退し、不眠などの症状を引き起こします。そのため体重が落ちたり、乳牛が出す乳の量が大幅に落ち込んでしまったりします。畜産業者は殺虫剤を使用するなどして対策を講じてきていますが、強力な殺虫剤は環境汚染や人畜への健康被害があります。しかも、サシバエはすぐに殺虫剤に対する耐性を獲得(=効きめがない)してしまいます。
A そこで、ハエ対策を模索していた愛知県農業総合試験場の研究者らは、「シマウマのしま模様には昆虫が体表に止まる運動を阻害する効果がある」という仮説に着目し、実際にウシにしま模様を付ける実験を行いました。具体的には、6頭の黒毛和牛を「白黒のしま模様のウシ」「模様を付けないウシ」に分けて、同じ場所にロープでつなぎました。1分間ごとに1回の写真撮影を30分間行う観察を、朝と晩の2回に分けて実施し、写真に写ったハエの数やウシが行う「忌避行動」(ウシが体表に付いた虫を追い払うための動作)の回数を調べました。
B 3日間の観察実験の結果、しま模様が描かれたウシに付いたハエの数は4分の1で、忌避行動も約20%減少しました。研究グループは「ハエの飛来期3〜4カ月の間持続する塗料が開発されれば、畜産業での実用化が可能。」と結論付け、新たなサシバエ対策を発表しました。