@ 致死率が90%という人類史上もっとも危険な、圧倒的な破壊力を持つのが、エボラ出血熱です。この感染症に対して、まだ有効な治療薬がありません。このウイルスと戦う、執念の日本人科学者がいます。それはウイルス学者、北海道大学の高田礼人(46歳)氏です。
A 高田氏のエボラウイルスとの戦いは、20年前(27歳のとき)にまでさかのぼります。当初は実績のない研究者だったため、毒性を弱めた偽ウイルスを使って研究をしていました。エボラウイルスは5種類あります。この全てのウイルスに効く「究極の抗体」を探すため、数億の物質の中から地道な研究を重ねてきていました。そしてついに、99%のウイルスを殺す抗体を発見しました。今後、「新薬」の開発につながる大発見です。
B ところで20年前、高田氏がエボラ出血熱と出会って一年後、猿モデルを使ってエボラ抗体を実証しました。にもかかわらず、世界中の製薬会社から何のオファー(問い合わせ)もありませんでした。いちばんの理由は、「エボラ出血熱はアフリカ風土病。罹るのはアフリカの限られた地域で、せいぜい年数百人程度。とても製品化しても儲からない。」でした。でも近年、エボラ出血熱は世界中に広がり、人類にとって大きな脅威となっています。新薬づくりには現在のところ高額です。高田氏は、より安く作れる抗体を求めて今も全力をあげて研究中です。未来のために、人類のために淡々と。