@ iPS細胞とは、人間の皮膚や血液などの細胞を培養する(増やす)ことによって、様々な臓器の細胞に分化させることができる細胞(人工多能性幹細胞)のことです。このiPS細胞を活用した、医療への応用は2種類あります。一つは「再生医療」です。例えば、失った視力回復を目指し、患者のiPS細胞から作成した網膜の細胞を使った移植手術が試みられています。
A もう一つは「難病の治療薬開発」です。これまでの新薬開発は原因物質を究明し、それに対応した薬を開発するという方法がとられてきています。ところがマウス実験で成功しても、人間には効かなかったり、重い副作用の危険があったりして、新薬の開発には多くの時間と費用と労力がかかります。ところが、危険を伴う人体での実験ではなく、iPS細胞を使った実験の結果、「軟骨無形成症」(低身長になる難病)にスタンチン(コレステロール低下薬)が効くことが判明しました。
C このiPS細胞を活用した治療薬開発は、これまでの新薬開発とは全く方法が違います。実際に人間に薬を投与する前に、効くか効かないか、副作用あるかないかについて、iPS細胞を使って細胞段階で調べることが出来るのです。したがって、たとえ投与できる患者が少数のために新薬開発が難しいケースでも、iPS細胞を使った検証結果を基に新薬承認が可能になったのです。