@ これまでの人工骨は、簡単に形が変えられないとか、何時までも体に残るとか、欠点がありました。この度、この難点をクリアーする人工骨が誕生しました。この新しい人工骨の開発に成功したのが、田中順三教授(東京工業大学)です。その研究成果が2001年に発表され、これを受けて実用化に向けて動き始めたのが、ペンタックス株式会社(セラミックス製の人工骨を扱う会社)です。
A 新しい人工骨は、小さい結晶の「アパタイト」と細長い分子「コラーゲン」から出来ています。この二つの素材を混ぜ合わせる点が、大きな問題点となっていました。これをクリアーしたのが、田中教授です。体温に近い温度で二つの素材を反応させると、二つがきれいに並んで細長い繊維(1mm)出来るという、不思議な現象を発見したのです。さらに驚きは、体内で自然に本当の骨に変化することが分かったのです。
B 商品化する上で、次に課題となったのは、作製した細長い繊維に細胞が入りやすくするため、0.1
mm の小さい孔を開ける技術でした。これについては、きめ細かい氷の結晶を造る「アイスクリームの製法」がヒントになり、小さい孔を開けることが出来るようになりました。更に医療現場の声を取り入れて、伸縮自在に形を変える「スポンジ型人工骨」の製造にも成功しました。こうやって、多くの困難を乗り越え、この度、ヒトの骨にきわめて近い人工骨「リヒット」が誕生したのです。