部活動の地域移行
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2023.6.11


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中学校を巡っては
今年度から3年間かけて
部活動が大きく変わろうとしています。
指導者(顧問)が
教員から地域指導者に移行します。
当面は
土・日曜日、祭日を目指します。

以下のように
要約学習の教材にもしました。

全体像


教材


@ 中学校の「運動部」への入部率(全国平均)が、令和4年度は59%となり、初めて60%を割り込んだことが判明しました。正確な記録が残る、2006年度以降で見ると過去最低です。なぜこんなに減少が続いているのでしょうか? いちばんの原因は「少子化」です。生徒数が少なくなったため野球やサッカーなど、「チームスポーツ」が成立せず廃部になったケースが目立っています。また、運動部の顧問を担う教員が転勤となり、廃部になったケースも増えてきています。

A 一方、「少子化」だけが原因ではありません。入部率が55%で過去最低だった福岡県では、中学校のサッカー部ではなく、福岡市内の「クラブチーム」を選ぶ生徒が増え続けています。その理由は、「指導者の教え方が上手」「厳しい練習をして上手になりたい」「レベルが高い(強い)」などという声が聞かれます。スポーツ庁は「学校から部活動を切り離し、地域に移行する取り組み」を段階的に進めています。この措置により、中学生の入部率はさらに下がり続けるとみられています。

B また、全国的な傾向として、部活動が「強制加入」から「任意加入」(部活動に所属しなくてもよい)になってきています。そのため、入部率が下がったことも大きな原因の一つです。部活動に加入していないある生徒は、「放課後は家族と過ごす時間を大切にしている。勉強できる時間も取れている。」と答えています。

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@ 「休日の部活動は教師ではなく、地域のスポーツクラブなどが指導する。」「複数の中学校から集まって活動することを進める。」など、今年度から部活動が変わることになりました。これは、スポーツ庁の有識者会議が提言しました。来年度から3年間を「改革集中期間」として、全国で具体的な計画が進められています。合唱部や吹奏楽部など文化系についても現在、文化庁の有識者会議で議論が進んでいて、近く同様の改革を求める見通しです。

A なぜ部活動を改革するのか。大きな理由は2つあります。一つは少子化です。公立中学校の生徒数は、「第2次ベビーブーム世代」が中学生だった1986年が589万人でした。ところが去年は296万人、ほぼ半分です。今後も年々減っていく見込みです。これに対して中学校の数は30年間で1割程度しか減っておらず、1校あたりの生徒数がどんどん減って部員数が減少しているのです。

B 地域移行のもう一つの理由は、教師の長時間労働です。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の中学教師の1週間の仕事時間は56時間で、48か国の中で最も長くなっています。特に、部活動が影響しています。土日も練習や試合の引率で、休日出勤という先生は心身ともに休めません。そうした休日出勤や残業が多いことで、教師を志す若者が減ってきています。教師の労働環境の改善、働き方改革のためにも、部活動を改革する必要に迫られているわけです。

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生徒の意見は?


 6月9日(金)、赤来中学校3年生「要約学習」の中で、この教材を取り扱うとともに「情報活用能力育成」としても、生徒に課題を与えました。
 部活動指導は、これまでのように学校の先生がいい。
 部活動指導は、地域指導者がいい。

 この両面から「根拠(理由)」をそれぞれ3つずつ以上、挙げるよう指示しました。時間は3分です。

 両方合わせて多い生徒で10個以上、少ない生徒で2個でした。以下のような理由を挙げていました。


 学校の先生がいい。


◎ 今のままがいいから。
◎ 活動しやすい。
◎ 専門的だから。
◎ 教え方が上手。
◎ 信頼出来る。
◎ 聞きやすい。
◎ 普段でも聞ける。
◎ 慣れている。
◎ 日ごろからのふれあいがある。
◎ 親しみやすい。
◎ 部員の気持ちがよく分かっている。
◎ 学校生活も一緒だから。
◎ 安心、信頼感。
◎ 活動しやすい。
◎ 若い。(地域指導者は高齢者?)
◎ 何かあったとき対応しやすい。
◎ 先生の特技が生かせる。
◎ 指導者をを探さなくてもいい。
◎ 終礼後、すぐに活動出来る。
◎ 保護者が安心。

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 地域指導者の方がいい。


◎ 専門的な指導が受けられる。
◎ 上手になる。強くなる。
◎ 何だか楽しそう。
◎ 違った目線で指導してもらえる。
◎ 活動時間が長くなりそう。
◎ 他の種類の部活動が新設されるかも?
◎ 地域の人が生かせる。⇒元気・健康
◎ 先生が助かる。⇒負担軽減・授業準備など。

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 まだ地域指導者の体験がないので、後者の方は理由が少なかったようです。
 ちなみに、どちらを希望するか聞いたところ次の通り、全く半分に分かれました。

○ 7人 先生
○ 7人 地域指導者
○ 1人 不明(どちらとも言えない)

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現実として……


 田舎の小規模校では、どんどん生徒数が減ってきています。チームスポーツ(野球・バレー・バスケットなど)については、チーム編成が出来なくて、大会の際は「合同チーム」がどんどん増えてきています。

 都会であれば数校の生徒が集まって、一つのクラブチームとして練習、試合参加も出来ると思います。しかし、学校間の距離が遠い山間部の中学生にとって、この方法は現実的でありません。

 実際に「合同チーム」の場合、平日の練習はそれぞれの学校で行っています。送迎の時間、送迎の人とお金が課題で、毎日合同練習は無理です。

 一方、同じく田舎の学校の場合ですが、若くて元気な人は仕事があります。融通が付く人で、しかも適任者はなかなか見つかりません。実際2年前の4月、私(当時71歳)も○○中学校から依頼がありました。丁重にお断りしましたが、3度4度と依頼に来られました。

 やむなく「毎週1日のみ」ということで受けました。昔取った杵柄で指導は体力的にも問題ありませんでした。昔の「虫」が騒いで気持ちが乗った面もあります。

 しかし、通うのに片道20分、それよりも「要約学習」の授業でシーズン中(5月〜7月・9月〜12月)は心身ともにギリギリの毎日でした。昔の古傷(右手小指)の痛みもありました。 ……結局、昨年7月、県総体を最後に引退させてもらいました。

 自分のことが長くなりましたが、田舎では現実問題として「外部指導者」なるものが存在しません。

 いやいや小学校では「少年野球」「ミニバス」「スポ小バレー」など、外部指導者に移行して、今も順調に行われているではないか。

 これについては、数人の該当者(小学生の外部指導者)に尋ねると、同じような回答が帰ってきました。「中学生は体力が違う」「中学生を教えるだけの技術的な裏付けがない」「中学校の部活動は勝たないといけない」など、全員が尻込みでした。

 これでは、中学校の部活動は崩壊してしまいます。もともと教員が部活動を指導するスタイルは、日本・韓国・台湾ぐらいなものです。他国は社会体育(スポーツクラブ)が当たり前です。

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打開策はあるのか?


 正直言って、これぞという打開策案は持ち合わせていません。ただ、次のようなことをうすぼんやりと考えています。

教員の中には熱血漢が少なからずおられます。部活動指導に心血を注ぐ教員です。そういう先生にとって「超過勤務」など、ほとんど念頭にないかも知れません。

 しかし、そういう訳にはいかないので「手当」をしっかり準備することです。


◎ 私の時代は平日むろんのこと、土日曜・祭日も全くのボランティアでした。手当など、考えたこともありませんでした。

◎ 確か20年前頃から、若干の部活動手当が始まりました。その後、段階的に増額となって、現在は下記のようになっています。

◎ 休日2時間以上 =1,800円
◎ 休日4時間以上 =3,600円

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平日(9月まで)は一般的に、部活動終了は 6:45 です。生徒を送り出して自由になるのは概ね7時です。勤務時間は 5:15 ですので、部活動だけで1時間45分程度の「時間外勤務」です。これが毎日ですから、トータルではものすごい時間になります。 ⇒これには、全く手当無しです。

自主的にやる気のある先生には、現在のバイト程度の手当ではなくて、しっかり残業手当並みの手当を出すべきです。

土日曜・祭日の勤務(部活動)指導については、授業を割り振りして「月〜金」の一日は出勤しなくていい曜日を設けること。ただ、補助的な人員を配置する必要があるかも知れません。

学校5日制が段階的にスタートした当時、超過勤務分については「夏休み」に勤務しない日(振替日)を一人一人の申請(○月○日にする)して解決していました。この方法の導入も考えられます。

他の方策として、飯南高校野球部監督の例があります。今春の異動で退職となった野球部監督の先生が、4月以降も「サポーター」として学校に勤務。そのまま監督を続けておられます。

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都会的発想


 何事につけて、行政(文科省)のやることは、いつでも「都会」からの発想です。現役時代から、いつも疑問・反論を抱いていました。

 今回の移行期間(3年間)で、都会ではかなり解決される可能性があります。しかし、田舎の学校(教員)は蚊帳の外です。

 移行期間でいちばんの問題点は、平日は先生が指導して、土日・祭日は(大会・練習試合を含めて)外部指導者が指導というのでは、部員(中学生)が蚊帳の外です。納得出来るわけがありません。

 今、各教育委員会では善後策について協議中です。しかし、地元(飯南町)でも、これぞという「名案」が未だ見つかっていません。

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ピンチはチャンス


 しかし、今こそチャンスです。もともと「部活動」は生徒が自主的主体的に活動を行うことが理想です。ただ、合理的専門的な観点から、大人の顧問がアドバイザーとしてバックアップする必要があります。そういう顧問なら、勤務時間内にサポートすることも可能です。

 実際の活動場面では、(未だ発達途上の中学生ですから)生徒だけだとトラブルが起こったり、適切に処理出来ない可能性があります。また、事故や怪我などの対応についても、大人が側に付いている必要があります。

 教員の勤務時間外にあっては、地域社会の協力を得ることも考えられます。例え専門的知識はなくとも、見守りが目的であるなら「高齢者」のボランティアという方法もあります。

 さて部活動の目標、日々の練習メニュー、練習時間、活動日などについてですが、現状では教員が主導しているのが実態です。これを生徒主体にします。ただし、一緒に考えたり相談に乗ったりする「顧問」が必要です。アドバイスや調整役が必要かと思います。教員は生徒たちよりも知識がありますし、引き出しもあります。

 このように、生徒が主体的に物事を決めていくことによって、どうしたら成長できるのか考えたり、対立する意見の中で合意形成して物事を決定していく過程を学んだりすることができます。

 部活動を通して、社会に出てから役に立つ考え方やスキルを身に付けるチャンス到来です。大学生は昔から、当たり前のように自主的な運営をしています。

 こういう視点から知恵を絞る、またとないチャンス到来です。

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