@ 冬眠できるのはクマ・リス・ハムスター・コウモリなど、哺乳類の中でも一部の動物だけです。人間は、残念ながら冬眠できません。血流の停止を必要とする「心臓血管手術」においては、体温を25〜28℃程度まで下げ、代謝(=人間が生命を維持するため行われる一連の反応)を低下させることで臓器が低酸素状態によるダメージを防ぐ「超低体温法手術」が行われてきています。しかし、低体温にすると出血しやすく、また血液が固まりにくくなります。そこで、もし体温を下げずに代謝を低下させる「人工冬眠」が実現すれば、より安全に「心臓血管手術」出来るようになります。
A 現在、冬眠時に起こる現象について、急ピッチで研究が進んでいます。これが解明されれば、人間でも冬眠状態を作り出せるようになるかも知れません。人工的に冬眠が可能になれば、例えば脳出血の際、命が助かる確率がぐんと高くなります。また、もし人工冬眠の技術が確立すれば、急病やけがなどで救急搬送するとき、治療開始までの時間稼ぎにも活用できます。
B また、多くのがんは成長が速いため抗がん剤が効きにくいことがあります。そこで、もし冬眠によってがんの成長速度を抑えることができれば、じっくり治療できます。また、現在は保存が難しい人工臓器を冬眠状態で保存できれば、移植が必要になった際、一気に手術の成功率が向上します。