@ がん(癌)の治療方法は基本的に、手術によってがんを取り除く「手術療法」、薬物(抗ガン剤)を投与する「化学療法」、がん細胞に放射線を当てて死滅させる「放射線療法」の3種類があります。手術療法は患者への負担が大きい上に、「がんの転移」が大きな課題です。化学療法は全身に転移してしまったがん細胞に効果がある全身療法ですが、正常細胞も攻撃するため患者が副作用(吐き気・しびれ・脱毛・倦怠感など)に苦しむ欠点があります。放射線治療は入院しなくてもよい利点がありますが、疲労感・吐き気・食欲の低下・臓器の障害などの副作用が出ることがあります。
A 2020年12月28日、日本で開発された「ウイルス療法」が悪性脳腫瘍(脳のがん)の治療薬として「製造販売承認申請」が行われ、実用化への最終段階に達しました。これは、革新的ながん治療法です。これまで、悪性脳腫瘍は手術をしてから放射線治療と薬物療法を行っても、平均余命は診断から18カ月、5年生存率は10%程度で、治癒は極めて困難とされています。その点、「ウイルス療法」は副作用を起こすことなく、完治を目指しています。
B がんのウイルス療法とは、人工的に造ったウイルスが直接がん細胞を破壊する治療法です。このウイルスは、がん細胞だけで増えるように造られています。ウイルスががん細胞に感染するとすぐに増殖を開始し、がん細胞を次々と死滅させていきます。一方、正常な細胞には、感染してもウイルスは増殖できないような仕組みを備えています。そのため、正常組織は全く傷つきません。