@ いま “史上最強の侵略生物” と恐れられる小さな生き物が、日本で爆発的に増えています。その名は、アルゼンチンアリ。南アメリカ大陸原産(いちばん最初に発見された場所)の小さなアリですが、インターホンの機器に接触して音が鳴ったり、風呂の操作パネルに入り込んで壊したり、寝ている布団の中へ入ってきて人を噛んだりと、人々の生活を脅かしています。大阪空港周辺で調査した被害(複数回答)は、「家の中に侵入(89世帯)」「食べ物・機器に群がる(71世帯)」「屋外の物置・鉢植えへに侵入(68世帯)」が上位3位を占めています。
A アルゼンチンアリは(他の種類のアリと違って)一つの巣に女王アリが数匹棲んでいます。しかも、一匹の女王アリが一日30個から40個の卵を産んで「ねずみ算」式にどんどん増えます。一般的に、別の巣のアリは同じ種であっても殺し合うことがあります。ところが、アルゼンチンアリは、同じ遺伝子型を持つ血縁どうしで互いの巣を行き来したり、餌を分け合ったりして繁殖しています。爆発的に増えながら他の種類のアリを駆逐(殺して勢力範囲を広げる)し、生態系を乱してきています。
B 1993年に、広島県の廿日市市で初めて国内への侵入が確認され、2005年には「特定外来生物」に指定されました。環境省によると2022年5月現在、12都府県で存在が報告されています。同じ特定外来生物の毒針を持つ「ヒアリ」と比べると毒針はなく、体も小さく、かむ力も弱いアルゼンチンアリです。しかし人々にさまざまな被害を及ぼし、恐怖を与えているのが実態です。