@ 悲しいときに私たちは涙を流します。ところが、実は悲しくなくてもほとんど一日中、休みなく誰もが涙を出しています。これは「涙の基礎分泌」と呼ばれています。この涙の分泌が止まると、私たちは目を開けていられなくなります。目の表面が乾燥してしまうからです。普段の涙は、瞬きの刺激によって出ています。瞬きの回数は、通常の人なら1分間に平均21回。3秒に一度は瞬きしている計算です。これによって目が乾燥するのを防いでいるのです。
A 涙は「目の乾燥を防ぐ」役割のほかに、もう一つ重要な役割があります。それは、目に酸素と栄養を届ける役割です。目は大きく黒目と白目に分かれます。黒目の部分をおおう透明な膜が「角膜」です。角膜は光を屈折して集めるために、透明で弓なりに曲がっています。一方、白目は細かな血管が張り巡らされています。目を使いすぎると、血管が目立つようになり充血します。これは、目に酸素や栄養をたくさん送り込むための体の反応です。
B ところが、黒目には血管がありません。白目が黒目に接するところで、血管が途切れています。透明な黒目に血管が入り込んだら、視界の邪魔になるからです。しかし、黒目は生きた細胞です。酸素と栄養が必要です。そこで血液の代わりの働きをしているのが、涙なのです。