@ コロナ禍による緊急事態宣言が出た去年4月以降、「郊外」や「地方」に注目する人が増えた。テレワーク(テレ=離れて+ワーク=仕事)が広がれば、毎日通勤する必要がなくなる。過疎地と呼ばれるような場所では人口減少に歯止めをかけるため、「家賃はタダでいいから、住んで欲しい」という古い一軒家が見つかる。そんな家に住むことができれば、住居費が節約できるし、物価も安い。身近に自然があるので、毎日がキャンプ気分で楽しそうだ……。
A しかし、過疎地の古民家をサイトで検索する人は増えたものの、実行までは至らなかった。通勤圏の郊外で安くて広い新築マンションが売れた、という動きはあったが、遠く離れた地方に移住するという人は増えなかったのである。その理由として大きいのは、テレワークの広がり方が限定的だったことだ。多くの企業において、テレワークの採用は「一部の職種で、週に1日か2日の在宅勤務」というレベルにとどまったからである。
B 一方、テレワークを経験した人たちが「テレワークといっても、よいことばかりではない」と、身をもって知ったことも理由に挙げられる。「やはり出社し、オフィスのデスクに向かわないと仕事をする気にならない、集中できない」、「一人仕事をするのは孤独だ」、「毎日家にいると家族が嫌がる」などという声が多く聞かれた。現状では、テレワークになれば毎日出勤しなくて済むが、自宅での仕事は必ずしもバラ色ではなかったという結果に終わっている。