日本の人口一億人

維持すべきか?

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2021.7.11


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少子化は経済問題に行き着く


家族社会学者の山田昌弘氏は、成人後・学卒後も親と同居し続ける未婚者を「パラサイトシングル」と命名しました。こういう人たちの存在も、少子化の原因のひとつになっていると主張しています。

経済が成長していけば、年齢が高くなるにつれ収入が増えていきます。が、経済の成長が低迷することにより雇用環境も悪化し、収入が伸びていかなかったり、失業や非正規雇用の継続ということになります。パラサイトシングルがなぜ増えているかというと、経済状況が悪化したままだからです。国に変わって、親が社会保障をしているような状態と言えます。

親が、成人後も子供を自宅で扶養するということは、欧米ではあまり考えられません。日本に特有な文化と言えるようです。欧米では、成人したら子供は家を出るのが当然です。同棲なども特に問題視されず、未婚のまま出産することもそれほど珍しくありません。多様な家族のかたちがあります。

日本の場合は多くの人が、将来にわたり十分な収入が得られる見込みがなかったりすることにより、結婚できず親元にとどまります。それが長期化することにより、レジャーや消費等にまわす費用があることから、ますます結婚に対する期待値が高くなるという悪循環です。

未婚を減らすには、現在の経済状況の改善とともに、将来的に明るい見通しが社会に立てられるようにすることがまず第一です。

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 「未婚を減らすには、現在の経済状況の改善とともに、将来的に明るい見通しが社会に立てられるようにすることがまず第一です。」という見識は、全く同感です。私の身近にも、経済的な主に理由で結婚をためらっている若者が、少なからずあります。

 しかし、右肩上がりの時代に終焉を告げ、今や少子高齢化の時代です。今の低成長時代に(若者の)給与を上げるというのは、至難の業です。安倍政権は金融緩和によって「円安」に誘導、自動車など輸出産業を軸に景気浮揚を狙いました。が、その結果はといえば、景気の先行き不安から「蓄財」(内部保留)に走っています。給与アップや投資に「儲け」が回されてきていません。

 まして昨年からは「コロナ禍」の世の中にどっぷりとつかってしまっています。

 そもそも輸出産業が儲かるという図式ですから、日本全体の景気浮揚にはつながりません。冨の一極集中、貧富の格差がますます広がるという、資本主義の陰の実態が広がりつつあるようです。

 今秋は衆議院選挙を控えています。争点になるかどうか不明ですが、少子高齢化の日本は、なかなか突破口がないのではないかと、私は思います。右肩上がりの経済は、今の日本は無理です。低成長時代なら、それにふさわしい政治・経済の方向性があるはずです。

 パラサイトシングルに関わって
「国に変わって、親が社会保障をしているような状態という分析は驚くやら、なるほどと納得するやら、……。日本特有な文化というのが不思議でもあり、疑問でもありというのが正直な気持ちです。

 恐らく日本の伝統として長らく当たり前となってきていた「親・子・孫、三世代同居」が破綻してきていることと、関連がありそうです。欧米の「個人主義」が徐々に日本社会に浸透してきているのでしょうか? 私の感覚では、悲しい現実です。

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子どもが欲しくないのか?


合計特殊出生率が1.39と低迷しているわけですが、それでは結婚した夫婦が子供を望んでいないかと言うと、そうではないことがわかります。理想の子ども数や予定子ども数は、30年以上あまり大きくは変わっていないようです。

近年は未婚の人が多くなり、結婚する場合でも、初婚年齢がとても高くなって晩婚化の傾向になってきています。

それとともに、自然と出産年齢も高くなりますから、女性の身体的理由からくる30代後半からの妊娠確率の低下とともに、たくさんの子供を産むのが難しくなっているようです。

若い夫婦には、経済的理由をあげる人が多いですが、30代になると年齢や健康上の理由で子供が出来ないと回答する人の割合が急増します。つまり、子供が2人以上欲しいと考えていても、結婚、出産が遅れ気味になったために、希望の人数が達成出来ない人が多くなっていると考えられます。

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 ここで述べられていることは、全くその通りだと思います。では、なぜ初婚年齢がどんどん上がってきているのか?

 社会の風潮といえばそれで終わりですが、一つには高学歴時代(2人に1人が大学卒業)、今一つは女性の社会進出ではないかと思います。

 これが悪いわけでは、むろんありません。これを否定すれば、世間から袋だたきに合います。

 ただ、批判されることを前提に理想論として許されるなら、「大学進学するほどの必要性が、ほんとうに国民の半数も必要なのか?」、「理想の子育てという視点からすれば、女性の社会進出ははたして日本にとって良かったのか?」という考え方もあります。

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結婚・出産を決断する「期待」とは?


結婚を決断する時に比較するのは、今の自分が良くなるのか、悪くなるのかということです。特に女性にとっては、結婚することにより、現状より経済的に良くなる見通しがないと、なかなか結婚に踏み切れません。

したがって、親の世代の方が現在の世代より裕福だと「期待値」が高くなっているので、なかなか「適当な相手」が見つからないことになります。

出産についても同じことが言えます。自分の産んだ子どもが、自分より良い環境で育つ見込みがないと、なかなか出産を決断できなくなります。つまり、親の世代より経済・環境などが良くならない時代には、少子化が進むのではないかという予想ができます。

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 結婚・出産問題も、やはり経済問題と深くリンクしているという論調です。なるほどと納得させられます。

 共同通信の調査によると、2020年時点で50歳までに一度も結婚したことのない「生涯未婚率」は男性は26%、女性は17%と、いずれも過去最高とのこと。しかも、近年はずっと右肩上がりです。

 一方、どの国でも既婚者より未婚者の方が「自分は不幸だ」と感じている率は高く、諸外国は未婚男性の約15〜25%がこれに該当。一方、日本の未婚男性の不幸率は44%と際立って高く、これに反して、日本の未婚女性の不幸率は8%と諸外国の女性と同等程度とのことです。

 社会全体のことはよく分かりませんが、教員世界のことをあれこれ思い浮かべてみると、明らかに女性の未婚率が年々上昇しています。理由は、経済問題でしょうか?

 いや、「日本の未婚女性の不幸率は8%」というデータの方が、より説得力があるように思います。一人暮らしでも「不幸感がない」、いや「十分現状に満足」という生活実感が、未婚率を上げていると、私は考えています。

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人口の減少


日本の人口は現在世界で10番目です。1980年代に、圧倒的な経済力を発揮したのは、この時期に高い労働力があったことが大きいと言えます。また、生産力を支える大きな消費力となる国内市場を形成してもいました。

しかし、このままいくと2050年には日本の人口は世界で16位に転落します。合計特殊出生率が現在と同じ水準で進むと仮定した場合、2005年に1億2777万人だった日本の総人口は、2045年に1億人を割り込み、2055年には8993万人になると見られています。

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 悲しい数字です。

 いや、森林の多い日本の国土面積から見て、現在の人口は案外多すぎるのかも知れません。少子化の昨今、学校がどんどん消えていっています。当然、生活不便な山間僻地から消えていっています。

 このまま行けば「限界集落」が雪崩を打って増えていきます。つまり、生活不便な地域から人がいなくなります。これがいけないというなら、人口を増やすしかありません。が、そこが大きなネックとなっているのが日本の現状です。

 この際思い切って発想転換。限界集落は自然に任せて、野生動物に譲っていきましょう。老人ホームや介護施設、病院、学校などは、交通やいインフラの行き届いた「平野部」に一極集中。市町村の歳出削減にもなります。

 心ある人が、限界集落跡に民家を活用した「田舎暮らし体験」などと銘打って、人々の心を癒す空間に活用したらどうでしょうか?

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この社会問題は裾野が広く
かかわる課題が錯綜しています。
まだまだおくが深い課題ですが
ここでいったん追求は
ひと息つくことにします。