弔辞

岩佐恒子先生へ

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2025.3.19


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赤名短歌会の指導を
十数年間してくださっていた
講師の先生(岩佐恒子さん)が
2月1日
(娘さんが介護されていた)長野で亡くなられました。

葬儀は長野で済まされたのですが、
改めて「お別れの会」を3月23日に
地元(木次)で行うとの旨
ご遺族からご案内がありました。

その折に
弔辞を依頼されました。

以下は
そのメッセージの文章です。








弔辞
岩佐恒子先生へ

 岩佐恒子先生に 赤名短歌会を代表し 謹んでお別れのご挨拶を申し上げます

 岩佐先生には平成二十年から十四年間 私たち赤名短歌会の指導をしてくださいました この間 木次から赤名までの移動は 長い時間をかけてバスで通って来てくださっていました また逆に岩佐先生のお住まいの木次で短歌会を開くこともありました 一緒に自然を歩きながら短歌づくりをしたこともあります そんなときいつも岩佐先生の短歌が飛び抜けていました 先生がお作りになった短歌は どれも感性が豊かで またそれを表現される言葉も豊かで深く 短歌会の会員一同 いつも感銘を受けておりました 先生の短歌に近づきたいと いつも見上げておりました

 また 岩佐先生はとても親しみやすく 温もりのある先生で 指導はいつも静かでした うまく表現出来たところは しっかりと褒めてくださいました その上で「短歌の作品」という視点から ここをこう直すと立派な短歌になりますよと 分かりやすく解説をしてくださっていました 認めるところは認めてくださった上で 「それではこれを短歌にしましょう」と 分かりやすく指導してくださいました 赤名短歌会の会員の中には 年老いた母に付き添って短歌会の定例会に参加しているうちに 岩佐先生の人柄と短歌の魅力に引かれて 赤名短歌会に入会した会員もおります

 岩佐先生は草花にお詳しくて 花の種類や特徴をいっぱい教えていただきました また夜空の星についても知識が豊富で 特に冬空にきらめくシリウスが大好きな先生でした 星の話からご主人のことについてもお聞きすることがありました ご主人は逞しく大らかで思いやりがあり いちばんの理解者 お話を伺うたびにご主人は岩佐先生にとって 大きな大きな存在であることが伝わってきました 

 岩佐先生は私たち赤名短歌会の一人一人にとって 今でもとてもとても大きな存在です 岩佐先生から教えていただいた短歌の魅力や短歌づくりの心をこれからも大事にしながら 短歌づくりを楽しんでいきたいと思っております 私たちのこれからの短歌づくりをどうぞ見守り続けてください

岩佐先生 長い間ほんとうにお世話になりました ありがとうございました 赤名短歌会の会員を代表して 心からお礼申し上げ お別れのご挨拶とさせていただきます


    
 令和7年3月23日

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追悼詞

口癖は よく分かりますそうですねそれではこれを短歌にしましょ!

感動す季節を愛でる感性とそを映し取る言葉の魔術

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 先月2月1日、木次の岩佐恒子さんが他界されました。岩佐さんは長年、赤名短歌会の指導講師としてお世話になった方です。自らも歌人として地域に貢献されると共に、歌集も数冊発行されています。特に季節の微妙な移り変わりを捕らえる、その感性の鋭さ、素晴らしさが卓越していました。また、言葉の魔術師でもありました。3月23日には「お別れ会」が催されます。赤名短歌会として、会員が追悼詞を納めることにしています。


       水のほとり 歌集 / 岩佐恒子/著 : 京都 大垣書店オンライン

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岩佐恒子 先生
赤名短歌会に残された詠草から



太陽のひかりに揺るる蜘蛛の巣は春待ちて見上ぐる万華鏡とも


暖冬の光に伸びるチューリップさみどりの芽が添ひて立ちをり


はつ夏の池の水底透きて見ゆおたまじゃくしは尾だけ揺れをり


梅雨寒しテレビリモコンに手を伸ばし動かざる吾よ夏の炬燵に


丁重なる残暑お見舞いのはがき文字ひとり暮らしのおぼつかなきに


高校へ行く坂道に散る黄葉銀杏大樹に父性の見ゆる


病院の三階の窓によりたてば銀杏の黄葉はららぐが見ゆ


降る雪に窓を鳴らすは子を連れし鬼かもしれぬ節分の夜


花びらの向きそれぞれに散りてくる十日余りを乱れず咲きて


おもねりて生くるは哀しと言う母のかたへの壺の重き八重ざくら


眠れざる母の気配に梅雨ふかき夜の襖のきしみしのばす


朝顔の花を数ふる老い母のもの忘れ増ゆるとまたかぞへをり


こんなにも透きとほりたる月光の注ぐ奥出雲すがしくあらむ


風触に欠けし石仏の身のうちにちちろちちろと鳴く虫の声


ちかちかとシリウス光りて大寒の風ちぎれとぶ夜をたぢろぐ


やかましく鵯さけびて花を喰ふ三寒四温の昼あたたかし


水の辺りにうすきみどりの風となりふるふる振るふ御衣黄ぎょいこう


新しき緑のほかに色のなく何処へ行けど風みづみづし


飛び立ちて夏日を反す負んぶバッタかたほうの脚おもく垂りゐる


逝く夏の影深みゆく町通り無住の家に百日紅咲く


柿もみじ桜もみじの散り敷ける坂道選び遠回りする


ほぐれては流るる冬の白き雲石蕗つわぶきの花ひかりて黄色


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