『ふじつる』第十九集をお届け致します。今年も多くの皆様の深いご理解と温かいご支援に支えられて発行できたことを、衷心よりお礼申し上げます。
短歌の歴史は古く、奈良時代の『万葉集』から始まって現代まで、千三百年以上も愛され続けています。「短歌は年配の人が好むもの」という印象の方もおられるかもしれませんが、今、SNSを中心に若い世代でも静かなブームになっています。若者の短歌は、自由な感性で作られたユニークな作品が多く、今後個性的な作品がどんどん生み出されるかもしれません。インターネット上で気軽に短歌を投稿できる場のひとつに『うたらば』があります。いくつか紹介(テーマ「スマホ」)します。
感情を持たないはずの指先が既読のたびに芯から冷える 郁葉
会うときは目も合わせない人なのにきみのメールは声が聞こえる さくらこ
正しくはスマフォだからと言ってくる友だちはまだ独身である 龍翔
僕だって触りたいのに君の手を独占してるスマホがずるい いつき
顔文字が雄弁すぎて語るべき愛の言葉がおろそかになる 紗都子
いいねとか既読で紡ぐこの恋の二年しばりが来月解ける 永昌
今年もこの合同歌集には、小・中・高校生の感性豊かでユニークな作品が届けられました。どうか、これを機に短歌の奥深い世界へ足を踏み入れてくれることを、心から願っております。以下は『ふじつる』第十八集に掲載された作品から、いくつかご紹介します。
雪解け水に色鮮やかな梅の花卒業前の胸の高まり 小学生 柚稀
暑き夜花火が上がり拍手する上がった後は少しさびしい 小学生 嗣道
思い切り気分を出せたカマキリ役さらなる一歩を踏み出す自分 小学生 敬一朗
お参りで新年一発拝む時神に願うぞ初彼女 小学生 関羽
夏過ぎて緑の木々も紅葉しふわりふわりと散りゆくもみじ 小学生 美嶺
ほつほつと舞い散る桜恋しけれあの人と交わしたあの約束を 中学生 和香
「行ってきます」寒さに飛び込む白い息赤鼻のトナカイさあ出発だ 中学生 倭玖
体育祭スタートラインに足並べピストル響くいざ勝負! 中学生 優真
振り返れば歩いた日々が背中押す遠くに響くは懐かしい音 中学生 華千代
三年間過ごした日々を振り返るあの日交わした会話忘れず 中学生 結奈
ありがとう三年間の思い出がつまった制服今日でさよなら 高校生 咲季
野球より大事なものは世の中に山ほどあると説教される 高校生 海音
みんな叫ぶ最後の授業どっどどどどうどどどうどどどう 高校生 琉希
冬休み初詣行きふと思うもう卒業か地味にさみしい 高校生 大空翔
思い出があるにはあるがあり過ぎて語りきれない短歌だけでは 高校生 未来
時が過ぎ花もゆらりと舞い落ちる行く先分からぬ私と同じ 高校生 聖登
窓見れば無限にカメムシ湧いてくる泣けどわめけど対処もできず 高校生 拓海
終わりになりましたが、飯南町教育長 大谷哲也様には「短歌を通じて飯南町の子どもたちの心豊かな成長にお力添えいただいている」との嬉しいお言葉をいただきました。学校を代表して飯南高等学校校長 岡秀樹様には「短歌のタネを探すセンサーをオンにして過ごす生活というのは本当に素敵だと思います。」「(本校生徒作品の)型にはまらない奔放な発想が、逆に新鮮ということもあるのではないかと考えます。」など、貴重な視点からの感想をいただきました。ご多忙の中から感銘深いご寄稿をいただき、ほんとうにありがとうございました。
なお、この歌集制作に当たっては、発刊の趣旨をくんでいただき、「赤い羽根共同募金」から温かい助成をいただいております。この場を借りまして厚くお礼申し上げます。