島根県小中学校
読書感想文集

『あをの』最終号に寄せて

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2025.2.26


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『あをの』最終号
原稿依頼


島根県学校図書館協議会事務局長さんより
下記のような原稿依頼がありました。
伝統ある読書感想文集が姿を消すとの由、
寂しく悲しい思いで原稿を書くことになりました。


 さて、題意通り、今年度の編集をもって、「あをの」の長い歴史に幕をおろすこととなりました。経緯は昨今の働き方改革、教員の負担軽減に伴う業務の軽減、そして、全国学校図書館協議会のコンクールに対する姿勢の変化に応じて、今年度の理事会で協議、検討の後、決定した次第です。

 これにより、これまでのあをの(「あをの」となったのは昭和49年発行から)発刊とそれにより輩出した素晴らしい感想文入賞者の数々に敬意を表し、「あをの最終号」を編集することとなりました。

 最終号をどんな紙面にするのか、検討に検討を重ね、お世話になった烏田先生、飯塚先生、小田川先生には思いを寄せていただけたらと考え、依頼に至りました。紙面はこのほかには、過去受賞者の声として、お二人(杉原茉里子さん、野中大聖さん)にも寄稿依頼をしております。

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読書ノートを軸にして

 今年度の編集をもって「あをの」の長い歴史に幕をおろすことになった由、羽柴会長さんから伺いました。これまで読書感想文の指導にご尽力くださった各学校の皆様、審査をしてくださった皆様、お世話や編集に関わってこられた皆様、心から敬意を表します。

 私は平成10年から13年間の間に、副会長5年・会長8年務めさせていただきました。この間、県大会3回・中国地区大会1回が開催されました。一方、島根県は平成21年度、県内の全市町村立小中学校の図書館に学校司書ら専任の人材を配置するため、人件費の一部を補助する新規事業を始めました。全校配置を目指した県からの財政支援は、全国的に例がありません。こういう流れを受けて、各学校においては改造・整備された図書館を活用した読書指導、図書館を活用した学習指導が一気に進展し始めました。


 「高次の情緒力」という概念があります。この言葉は、平成15年の「国語分科会国語教育等小委員会」で登場しました。高次の情緒力とは、例えば他人の痛みを自分の痛みとして感じる心、美的感受性、もののあわれ、家族愛、郷土愛、名誉や恥などを指します。これは、後天的に獲得されるものとされています。しかも、体験を通してというよりは、(教養がそうであるように)「読書を通して培われる」ものとされています。

 さらには、思考をめぐらす基盤となる「語句・語彙力」こそ、高次の情緒力と論理力を根底で支えています。いずれにしても、「読書離れ」は「高次の情緒力」「論理的思考力」の欠如を招くと、この小委員会の報告書で警鐘を鳴らしておられます。

 今後、読書感想文コンクール審査は無くなっても、島根県独自の取組「読書ノートコンクール」は生き続けるとお聞きしました。私の現役時代、読書ノートで成長した児童生徒を何人も見てきています。どうか、今後は「読書ノート」を軸にして島根県内の読書活動がますます進展していくことを願って止みません。

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