秋田式学力向上策
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2023.9.16


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読解力とは?


 一つの文章から読解問題を考え出す人には、いつも頭が下がります。しかし、なかには読解力を診る問題というより、クイズに近い発問もあって愕然とさせられることもあります。

 が、さすがに(島根県)入試問題となれば、文章内容も中学生に読ませたい内容が準備されています。発問も読解力を診る上で、よく練られた発問だと感心させられます。

 ただ、思います。創意工夫を凝らして設問を考えなくても、図式を書かせてみれば読解力が一目瞭然で分かります。要約文でもいいのですが、ただ採点が面倒です。

 なお、文章を読んで要約文(図式)が正しければ文章を読めたかと言うと、まだ不十分です。その文章を読んで(考えに接して)自分はどう考えるか? 感想や意見などのコメントが述べられないと、本当に文章を読んだとは言えません。

 これは、1989年(平成元年)改定の学習指導要領で打ち出された「新しい学力観」に立った学力です。

 以前(私が教諭として国語の授業を行っていた時期)は、「そこにある文章がいかに正しく読みとることが出来るか」、この視点に立って授業を行い、学力テスト「国語」もそういう視点に立った発問でした。

 「新しい学力観」に立った学力は、上記の下線部が要求されています。また、学力テストも下線部を診断する発問が盛り込まれています。

 採点基準が難しいのですが、島根県入試問題においても毎年、出題されています。具体的には「作文問題」として出題されています。(はるか昔、確か平成6年、作文問題第一号は私が作問しました。当時は配点もたった3点、字数も確か30字程度でした。)

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注目の秋田県


 ところで話題は飛躍しますが、全国学力・学習状況調査について話題を転じます。秋田県は昭和30年代 、全国学力テストで40位台を低迷。ここから教育改革が始まったとのこと。そして秋田県は、平成19年度の調査開始以来、全国トップ水準を維持し続けています。

 あわせて行われた生活状況調査によると、秋田県では塾に通っている子どもは小学6年生で22.8%と全国最下位。一方、県内でも成績上位の地域は早寝早起きや朝食をとるといった、基本的な生活習慣を実施している家庭が多いとのこと。

 また、小学生6年生の休日の学習時間は1時間以上が84%と、全国平均の57%に大差をつけています。教育専門監の設置、家庭教育の基礎「学びの十か条」、対話型の授業など、秋田方式を実践してきたその成果だと、新聞報道で読みました。

 なお、秋田の指導法を学ぼうと全国各地からの視察が後を絶たなかったと言います。例えば、下位に低迷していた高知県は、”秋田式”を導入して大幅に躍進。地域ぐるみでの放課後補習の支援は、学力向上の好事例として文部科学省も注目しているとのことです。

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リハーサルテスト


 ところが先日、図書館で読んだ週刊誌の特集に気になる内容が掲載されていました。

 新聞で報道されていないことで、秋田県が実践していること。それは、リハーサルテストの実施とのこと。全国学力調査の傾向を分析、それを基に12月、県内の小5と中2を対象に学力テストを実施。さらに4月当初、小6と中3は直前テストを実施しているとのこと。

 現地を取材して、教員から聞き取りをしたとのことなので、誤報ではなさそうです。

 ふむふむ、そういうことなら評価は違ってきます。水を差すようですが、私が教諭時代、3年生には特に3学期に集中的に「公立高校の入試過去問題」を過去10年間分、行っていました。むろんテストの翌時間は、文章を読みながら一つ一つの発問の解説と解答。生徒は自己採点しながら、文章の読み方と解答の仕方(コツ)とを学んでいました。

 島根県の入試問題は、各教科の平均点が50点〜60点を目安に作問されています。リハーサルテストのテストの推移ですが、第一回目(10年前のテスト)はおおむね学年平均が40点〜45点です。それが回を重ねるに連れて、どんどん平均点が上がっていって、最後の3回ぐらいになると70点〜75点にまで達します。

 しかし、別に国語の学力が伸びたわけではありません。テスト問題への対応力が向上したのが、大きな要因です。

 傾向としては、漢字の基礎学力がない子はほとんど点数が伸びません。逆に中上位の生徒は、回を重ねるうちに90点以上が続出し始めます。

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原点に返って


 ただ、これによって秋田県の評価が下がるわけではありません。一時間一時間行っている授業評価を、着実に次の授業に生かそうとしているとのこと。併せて、家庭学習の充実に特に力を注いでいることなど、全県ぐるみの取組には大いに学ぶべきところがあります。

 全国学力テストの公表について、ケンケンガクガクの昨今です。あまりに公表に走ると、結果として見せかけの点数を上げるために、あらぬ方向へと学校教育がゆがむ恐れがあります。

 要は、各学校の担当者が実態をしっかり受け止め、学力向上に向けて知恵と力を大いに注ぐことです。また、保護者は少なくとも、わが学校・我が子の学力の実態と学校の学力向上策とをしっかりと把握し、学校と家庭が一丸となって子ども達の学力向上に努力することが大事なことは、言うまでもありません。

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