家族葬
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2023.5.20


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 青空に皐月幟(さつきのぼり)のはためきて突如、電話が訃報伝へる

 ゆったりと温泉にくつろいで車に戻ったとたん、携帯電話が鳴って若き教え子の訃報を知らせてきました。あまりに唐突で予期しない、思いも寄らない出来事に、しばらくは現実が理解出来ませんでした。おりから晴天の下、場違いにゆうゆうと鯉のぼりがはためいていました……。

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しめやかに家族葬とや五月雨よ若き教え子天に召されし

 過日、小雨そぼ降る中、教え子(29歳男性)の葬儀が行われ、心の整理が出来ないままに参列しました。事情があったのでしょうか、11人という少人数での淋しい葬儀でした。死因は心筋梗塞とのことですが、あまりに唐突で若すぎる出来事です。ご両親の心痛は計り知れません。他界した教え子の兄が連絡してくれたので、お別れに立ち会うことが出来ました。事後、短歌を考えましたが、自分の心の深さと比べて、あまりに浅い作品に嘆きながら、とりあえずの追悼歌とすることにしました。
[註]「〜とや」=古語。「〜というのか?」(疑問・反論)

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流れ焼香が主流の社会に……


 家族葬は、初めて参列しました。「親族だけでしめやかに執り行われるんだろう。」という認識で出かけましたが、着いてみると「教会」建物玄関に「悔やみ受け」も「受付」も見当たらず、閑散としています。

 不審に思いつつ中に入っていくと、ご両親始めご家族の姿が見えました。しかし、ご家族を始め参列者は私を含めて、たったの11名。あまりにしめやかすぎて、ビックリしてしまいました。

 コロナ禍以降、通常の葬儀も参列者は受付で香典を渡して、お悔やみを伝えて、焼香して、葬儀には参列しないで帰っていく。……という、いわゆる「流れ焼香」が一般的となっています。致し方ないとはいえ、寂しく悲しい社会になってしまったものです。

 コロナが収束した今日、従来のように多くの皆様が参列する葬儀が戻ってくることを願ってやみません。寒暖など問わず、葬儀に立ち会うことが(私は)供養だとを思っています。

 家族葬について調べてみると、次のような傾向になっていることが分かりました。

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株式会社鎌倉新書による『お葬式に関する全国調査』

家族葬 一般葬 一日葬 直葬・
火葬式
2015年 31.3% 58.9% 3.9.% 5.9%
2017年 37.9% 52.8% 4.4% 4.9%
2020年 40.9% 48.9% 5.2% 4.9%
2022年 55.7% 25.9% 6.9% 11.4%








家族葬が増加


 ここ、田舎ではまだまだ「一般葬」が広く行われていますが、親戚の様子だと都会では「家族葬」が主流となっているようです。

  近年の家族葬増加の背景には、次のような理由があると考えられます。

● 新型コロナウイルスの影響
● 価値観の変化
● 経済面での変化

 ひと昔前までは、「盛大な葬儀が好ましい」「多くの人に故人を見送ってもらいたい」と考えるのが一般的でした。

 しかし、近年は故人・遺族ともに、「家族や親しい友人だけでゆっくり見送ってほしい・見送りたい」と考える方が増えているようです。

 この背景には、経済的な理由はもちろん、人間関係の希薄化や高齢化の影響があると考えられます。

 昔のように積極的な近所付き合いが希薄になってきている現代においては、そもそも葬儀に参列してもらいたい友人や知人が少なく、さらに高齢で参列が難しい人も多いため、自然と家族葬を望む人が増えていると言えます。

 また、従来の葬儀に見られる伝統的なしきたりに捉われたくないという思いから、比較的自由な内容で執り行うことができる家族葬を選ぶ方もいます。

 今回の「家族葬」も、これらの理由が複合したものかも知れません。

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葬儀費用の少額化


 先ほどの「株式会社鎌倉新書による『お葬式に関する全国調査』」では、葬儀費用に次のような変化が出ています。

2013年:202.9万円
2015年:184.0万円
2017年:178.3万円
2020年:184.3万円
2022年:110.7万円

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家族葬を行うときの留意点


 家族葬では、喪主や遺族に依頼された近親者だけが葬儀に参列します。つまり、葬儀に参加したくてもできない人が出る可能性があります。そこで次の点に気をつける必要があります。

★葬儀の参列を依頼するか辞退するか、相手に明確に伝える。
★参列を辞退する人には家族葬で行う旨を伝える。
★事後報告になる人には通知状を送る。

 東京の叔父の場合、他界したのも家族葬をされたのも4月でしたが、訃報が届いたのは5月も下旬でした。すでに荼毘に付されているとのことだったので、慌てず7月になってから上京し、お墓参りをしました。

 拝顔は出来なかったかも知れませんが、出来ればすぐに伝えて欲しかった。すぐに駆けつけたかったという無念さが残っています。

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だけど、されど、……


 今回の教え子の家族葬の場合、亡くなったことを伝えてきたのは3人兄弟の兄でした。これがなかったら、何も知らずにのんのんと暮らしているところでした。

 後日、携帯電話で生前の写真と動画を送ってくれました。特に動画には涙で曇って、初回はしっかり視聴出来ませんでした。校長時代の教え子ですから、そんなに濃厚なつきあいがあったわけではありません。

 が、在学中は先生方には何かとご迷惑をかけて、しかし、3年間で大きく成長し、……今では社会人として自立して頑張っている若者でした。それだけに残念でなりません。

 私は一応、葬儀に参列して、気持の上で一区切り付けた感じがしています。しかし、出来うるならば「新聞」「ローカルテレビ告知」で訃報を広く知らせ、葬儀当日には大勢の人で見送って欲しかった。

 ご両親のお考えはおありでしょうが、第三者として、今も心にくすぶっている一件です。

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ちなみに
5月10日(水)
父の兄弟姉妹=計7人のうち
上から4番目の叔母が他界しました。
これで
父方の叔父4人、叔母3人のうち
元気に暮らしているのは
上から5番目の叔父(90歳)一人となりました。

心寂しい今日この頃です。