高校生の卒業公演
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2023.3.25


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卒業公演


 「卒業式」と題して、三刀屋高校掛合分校(男子3人)、松江工業高校(男子1人・女子2人)が、それぞれ高校生最後の演劇を披露しました。時は、3月22日(水)夜7時〜、場所は島根県民会館でした。

 先般、要約学習の授業で掛合分校を訪れた際、副校長先生からこの公演を紹介され、興味を抱いて観に出かけました。

 演劇に先だって、ドキュメンタリー映画「走れ!走れ走れメロス」(50分間)を視聴しました。掛合分校演劇同好会の歩みを映像化した作品です。全国規模の映画祭で入選・入賞を5つも獲得した映画だそうです。感動しました。涙もあふれました。


 演劇に初めて触れた島根県の4人(うち1人は照明係)の高校生と、顧問の先生の奮闘を追いかけたドキュメンタリー。

 全校生徒70人、島根県で最も小さな県立高校・三刀屋高校掛合分校で、4人の高校生たちが演劇を始めた。

 それぞれ演劇に初めて触れる4人は、対人関係が苦手、ずっと机に向かっているのも得意ではない、熱中できるものもないなど、各々が劣等感と向き合いながら、次第に演劇に打ち込んでいく。

 顧問の亀尾佳宏先生のもと、演目には太宰治の名作「走れメロス」を選び、意気揚々と高校演劇の地区大会に出場することにした彼らだった。

 しかし、本校である三刀屋高校のレベルの高さに圧倒された上、コロナ禍で大会は無観客になってしまう。県大会への進出はかなわず、このまま誰にも見てもらえないまま終わると思った4人の青春は、しかし、予想外の方向に向かっていく。……

第14回下北沢映画祭で審査員特別賞や観客賞など4部門を受賞、東京ドキュメンタリー映画祭2022入選など各地の映画祭で高い評価を獲得した。

2022年製作/53分/日本
配給:下北沢映画祭

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 もともと掛合分校には、演劇部がありませんでした。演劇に造詣が深い亀尾佳宏先生が着任、生徒に演劇への勧誘をしたところ、2年生3人が申し込んでくれました。その後、コロナ禍で思いがけない苦しみを味わいながらも、今回の公演に繋がったとのことでした。

 ちなみに、この「走れ!走れ走れメロス」の演劇で、亀尾佳宏先生は「若手演出家コンクール」(日本演出者協会など主催)で最優秀賞に選ばれています。

 ネットで調べると、次のような解説(一部)が紹介されています。


 コロナ禍で校歌も歌えない制限された学校生活の悔しさなどを交えて演じた。

 重要な場面でセリフを忘れるハプニングもあったが、生徒たちはとっさに「セリフは?」「忘れた」とアドリブ。約40人の客席からは笑いも起きた。ふだんの稽古でもセリフ忘れはあり、冷静に対応できたという。

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 新聞の記事には、次のようなコメントが載っています。

 上演を心待ちにして稽古を重ねてきた曽田昇吾さん(17)は「プレッシャーはあったが楽しめた。達成感と喜びがある」。常松博樹さん(17)は「挑戦することが好きで、客が入った劇場でできてよかった」と満足した様子を見せた。

 コロナ下での上京は迷ったという亀尾教諭は「生徒たちは想像以上の活躍で、客に届くような表現をしたことがプロの俳優と対等に評価されたと思う。地方で活動する人たちに希望を与えられればうれしい」と喜んだ。

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「走れ!走れ走れメロス」


 演劇は3人とも学生服姿、背景もなし。飾りっ気のない、実にシンプルな設定の中で「走れ!走れ走れメロス」が始まりました。

 暴君ディオニスを演じるのは曽田君です。ナレーションも全て受け持ちました。


 曽田君は進路を演劇に定め、「演劇界の東大」と言われる劇団「文学座」の狭き門に挑戦、合格。2023年春から役者へのスタートを切ります。

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 メロスを演じるのは、4月から自衛隊入隊が決まっている常松君です。運動能力が抜群、キレのいい動きを見せました。全力投球する彼の姿には身震いするほどでした。しかも、いくら激しい動きを続けても、スタミナが切れない! 感動的でした。

 石飛君は、セリヌンティウス始め一人数役を演じました。どちらかというと、声も動きも素人っぽく、かえってそれが魅力を生みだし、笑いを誘っていました。

 30分の上演でしたが、人生を駆け抜けるような白熱の演技に引き寄せられ、時間の経つのを忘れるほどでした。

 20年ほど前、朗読したら35分程度かかる「走れメロス」の全文を、私は暗誦しています。それだけに、演劇のところどころで「本文」を語る場面では、大波のような感動に襲われました。

 若さが弾けるほどに眩しい! 自分の全てを演技に出し切る、燃えたぎるエネルギー、……。言葉にならない「大事なこと」がストレートに身体に入ってきたような気がします。上演中、2度・3度と涙があふれました。

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演劇はもう一つ
松江工業高校演劇部
「葉桜と魔笛」(原作:太宰治)が上演されました。
動きの少ない地味な内容でしたが
しんみりと心の底を感得させられる
なかなかの好演でした。








演劇の魅力(底力)


 曽田君は映画の中で吐露していました。「自分は人に迷惑をかける人間だった。実際、停学も食らった。劇の中では暴君を演じたが、昔の自分そのものだった。でも、演劇に出合って自分は劇的に変わった。演劇を通して、自分が目指すものが定まった。」

 演劇の中で人物を演じることは、「なりきる」ことが重要です。それだけに「役作り」が至上命題です。劇を演じる中で感情移入し、きっとそれが自分の魂を揺さぶり、人格さえも変えてしまう力があるのかも知れません。

 一方、観劇する側にとっても大なり小なり、魂が揺さぶられます。「劇団四季」は上京の度に足を運びます。その度に、魂が震えます。心の中の何かが動きます。

 ネットで、演劇の底力を調べてみました。



 劇を観て雷に打たれたような衝撃を受けた、という方がいます。何がどのように衝撃的だったのか、自分でも言葉にできないですが、確かに自分の心に直接刺さるものがあるのが観劇の魅力です。

 そして、のめり込むように物語を追っていると、いつの間にか自分が当事者のような感覚に陥ってしまうのです。集中して必死に感情を理解するように努めているからこそ気が付ける新しい感情もあります。また登場人物を自分に重ねて、様々な体験をすることで新しい感情や感性に出会えることも観劇ならではの特徴でしょう。 

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舞台初体験の方へ!舞台の魅力とは-キレイスタイルニュース (kireistyle-woman.com)



 舞台演劇が「生もの」である以上、台本も言語だけで完結してしまってはいけません。

 たとえば冗談ばかり続いた後、核心となるセリフが来る場面。セリフそのものも重要ですが、一番のポイントは「ふざけていた人が急に真顔になる瞬間」です。

 優れた台本は、言葉では表現できない登場人物の想いやその裏にある背景など、非言語的な内容をも喚起させるもの。ちょっとした仕草や表情の変化、間など、演者の言葉にならないセリフに注目すると、より深くお芝居を楽しめます。

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愛知淑徳大学/4コマでわかる学びのまとめサイト『CLIPPINGS neo』/スペシャル学校情報/スタディサプリ進路 (shingakunet.com)
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新型コロナが
2類から5類に変更になります。
いよいよ堂々と
演劇をしたり鑑賞したりという
以前の日常が戻ってきます!