A 生物工場として、最も注目される企業がアメリカにあります。カリフォルニア州にある企業です。売り上げは、この5年で3倍になりました。急成長を支えているのが、製品の多彩さです。お酒やパンなどの発酵に使われる「酵母」を生物工場にして、全ての製品が作られています。例えば、車のオイル・タイヤの素材・ビタミン・マラリア薬・化粧品・香水など、現在は数百種類の製品を製造・販売しています。
B 世界で開発競争が激化する中、日本の切り札はカイコです。5千年にわたる交配の結果、さまざまな分野に役立つよう品種改良が進んでいます。例えば抗がん剤を作ったり、ワイヤーより強い糸を作ったりするなど、日本独特の物質も生み出しています。この生物工場の技術は今後、身近な暮らしを豊かにし、地球環境の課題を打ち破る鍵になるかもしれません。
A ところで、この蚕が遺伝子組み換え技術によって注目を集めています。代表例は暗やみで光る蚕です。オワンクラゲなどの遺伝子を、蚕の卵に注射して生まれます。農業生物資源研究所が2007年には蚕の糸を光らせることに成功しました。現在は、繭を2万個使った「光るドレス」作りまでこぎ着けています。その他に、カイコの体内で薬・化粧品・人工血管などを作らせる研究も進んでいます。
B もっとも蚕の世話や大量飼育は重労働です。日本でカイコを育てる農家は、昭和初期の220万戸から現在、500戸以下にまで減りました。そういう中にあって群馬県の農家は、世界文化遺産の名誉にかけて、遺伝子組み換え蚕の飼育で生き残りを図ろうとしています。