生物工場
.

2022.11.5


コメントの部屋へもどる




恐ろしきかな生物工場


 「生物工場」とは、植物や微生物など生物に、別の生き物の遺伝子を組み込み、有用な物質を作る工場に変えてしまう技術のことです。テレビの特集を視聴して、ビックリ仰天しました。

 遺伝子組み換えで、イネに花粉症予防成分、イチゴに歯周病治療薬を作らせる。

 蚕の繭から、抗がん剤やワイヤーより強い糸を作る。

 イチゴの細胞に犬の遺伝子の一部を組み込んで、炎症を抑える物質を作る。

 ヤギの遺伝子に人間の血液サラサラ成分を作り出す遺伝子を組み込んで、ミルクの中に血液が固まって血栓ができるのを防ぐ「抗凝血剤」を作る。

 大腸菌の遺伝子に、樹脂を作る特殊な菌の遺伝子を組み込むと、大腸菌がプラスチックを作り出す。

 稲の遺伝子に、スギの細胞から取った花粉成分を作る遺伝子を組み込んで、花粉症の薬を作る。

 酒やパンなどの発酵に使われる酵母を生物工場にして、リンゴなどが持つ精油成分を作る遺伝子を組み込むと、劣化しにくい新素材のタイヤができる。

 藻からエネルギーとなる油を作る。

 トウモロコシからバイオ・エタノールを作る。


 自然の中でも遺伝子は変化していきますが、自然界で起こらない遺伝子操作を強制的に行うのが「遺伝子操作」です。この技術は人為的にクモの遺伝子をヤギ入れるとか、魚の遺伝子をトマトに入れるとか、バクテリアの遺伝子を大豆に入れるなど、まさに人為的に遺伝子を操作します。

 遺伝子組み換えというと、一般にはマイナスイメージがあります。ジャガイモ・トウモロコシ・大豆(アメリカではすでに94%が遺伝子組み換え。日本の消費の80%が遺伝子組み換え)など、すでに市場に出回っている「遺伝子組み換え植物」が沢山あります。人体に有害な影響を及ぼさないか危惧する声もあります。

 しかし、今回のテレビ番組で紹介された威力を知ると、大いに研究の余地があると思います。ただ、研究開発の基盤には「道徳的配慮」「人間的な良心」が前提です。さまないと、とんでもないものを産み出し、人間社会が破壊される可能性があります。

 テレビ視聴後、さっそく2本の「要約学習」の教材を作りました。

.




さっそく作った教材2本





生物工場

@ 植物や微生物などを使って、人に役立つ物質を作らせる生物工場が注目されています。イネにスギの細胞から取った遺伝子を組み込むと、食べるだけで花粉症が治る物質が誕生します。イチゴの細胞に犬の遺伝子の一部を組み込むと、歯周病治療薬ができます。大腸菌の遺伝子に樹脂を作る菌の遺伝子を組み込むと大腸菌がプラスチックを作り始めます。

A 生物工場として、最も注目される企業がアメリカにあります。カリフォルニア州にある企業です。売り上げは、この5年で3倍になりました。急成長を支えているのが、製品の多彩さです。お酒やパンなどの発酵に使われる「酵母」を生物工場にして、全ての製品が作られています。例えば、車のオイル・タイヤの素材・ビタミン・マラリア薬・化粧品・香水など、現在は数百種類の製品を製造・販売しています。

B 世界で開発競争が激化する中、日本の切り札はカイコです。5千年にわたる交配の結果、さまざまな分野に役立つよう品種改良が進んでいます。例えば抗がん剤を作ったり、ワイヤーより強い糸を作ったりするなど、日本独特の物質も生み出しています。この生物工場の技術は今後、身近な暮らしを豊かにし、地球環境の課題を打ち破る鍵になるかもしれません。

.






光るドレス


@ 2014年、群馬県の富岡製糸場が世界文化遺産に選ばれました。ここで115 年間、糸の原料を供給し続けてきたのは蚕です。蚕は蓋のない箱からも幼虫が逃げずにおとなしく繭をつくり、成虫になっても飛びません。ほかの幼虫が体の上に乗っても、嫌な顔一つせずじっとしたままです。まゆを作る時だけ、わざわざ人が捕まえやすい場所まで上ってきます。これがカイコの特徴です。しかも絹が採れる繭だけでなく、あとに残ったサナギは魚のエサになります。カイコが食べる桑の葉には、血糖値の上昇を抑える効果があります。

A ところで、この蚕が遺伝子組み換え技術によって注目を集めています。代表例は暗やみで光る蚕です。オワンクラゲなどの遺伝子を、蚕の卵に注射して生まれます。農業生物資源研究所が2007年には蚕の糸を光らせることに成功しました。現在は、繭を2万個使った「光るドレス」作りまでこぎ着けています。その他に、カイコの体内で薬・化粧品・人工血管などを作らせる研究も進んでいます。

B もっとも蚕の世話や大量飼育は重労働です。日本でカイコを育てる農家は、昭和初期の220万戸から現在、500戸以下にまで減りました。そういう中にあって群馬県の農家は、世界文化遺産の名誉にかけて、遺伝子組み換え蚕の飼育で生き残りを図ろうとしています。

.








生物工場に不安も


 生物工場は現在、アメリカが全世界の4割を占め、トップ。それをイギリス・ドイツ・中国が追随し、日本は5番目とのことです。また、国を挙げて力を入れているのがイギリスです。政府は、生物工場を「再生医療」「ロボット工学」などと並ぶ、8つの重大技術の1つに指定し、223億円をも投資しています。

 さらにフィンランドの公的な機関が去年公表した資料によると、洋服や生活用品など、身の回りにあるあらゆるものを生物工場で作り出してしまおうという壮大な計画が盛り込まれているとのことです。

 しかしながら、(遺伝子組み換え食品の割合が非常に高い)アメリカでは遺伝子組み換え食品の出現とともにガン・白血病・アレルギー・自閉症などの慢性疾患が急増しているという報告があるそうです。まだまだ断言できる研究はありませんが、危険の可能性はゼロではありません。

 興味を持ちつつ、今後の動向に目を光らせていく必要があります。

.