マシュマロ実験
三つ子の魂百まで
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2020.5.31


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脳はあなたにウソをつく


 『脳はあなたにウソをつく』(篠原菊紀:河出書房新会社)を読みました。「マシュマロ実験」という興味深い観察記録の場面が心に残りました。その場面とは、下の図式の通りです。

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 マシュマロ実験とは、子ども時代の自制心と、将来の社会的成果の関連性を調査した実験。スタンフォード大学の心理学者、ミシェルが1960年代後半から1970年代前半にかけて実施した実験です。

 幼稚園の4才の子ども600人が実験に参加しました。机の上には皿があり、マシュマロが一個載っていいます。実験者は
「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ。」と言って部屋を出ていきました。

 子どもたちの行動は、隠しカメラで記録されました。映像を分析した結果、マシュマロを見つめたり、触ったりする子どもは結局食べてしまう率が高いこと。我慢できた子どもは目をそらしたり、後ろを向いたりして、むしろマシュマロから注意を逸らそうとする傾向があることが観察されました。実験に参加した者のうち、1/3はすぐにお菓子を食べます。1/3は、テストの途中でお菓子を食べてしまいます。我慢してマシュマロを食べずにいられた子どもは1/3ほどでした。

 12年後、追跡調査が実施されました。その結果は、就学前における自制心の有無は十数年を経た後も持続していること。1分未満に食べた子の多くは、感情を抑えることが難しい傾向があり、また、問題行動を起こしていること。

 一方、マシュマロを食べなかった子どもと食べた子どもをグループにした場合、【我慢できた子】は、次のような傾向にあったそうです。
○ 対人能力に優れ、自己主張がきちんとできる。
○ ストレスに強く、プレッシャーに混乱しない。


 さらに両グループ間では、大学進学適性試験(SAT)の点数には、トータル・スコアで平均210ポイントの相違が認められました。

 ミシェルはこの実験から、「
幼児期においてはIQより、自制心の強さのほうが将来のSATの点数にはるかに大きく影響する。」と結論づけました。40年後にはさらに追跡調査が行われ、この傾向が生涯のずっと後まで継続していることが明らかにされました。

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三つ子の魂百まで


 幼児期においてはIQより、自制心の強さのほうが将来のSATの点数にはるかに大きく影響する。」

 この結論はすぐに信じがたい所がありますが、自制心と学力テストとの相関関係は、これまで出会ってきた子ども達をトータルで見たとき、なるほどと思うところもあります。

 
1分未満に食べた子の多くは、感情を抑えることが難しい傾向があり、また、問題行動を起こしている。

 つまり「自制心が乏しい子は、問題行動を起こしやすい傾向にある。」ということのようです。納得です。

 
40年後にはさらに追跡調査が行われ、この傾向が生涯のずっと後まで継続していることが明らかにされました。

 「三つ子の魂百まで」という諺がありますが、人間の根本的な部分は幼いときに形成されるという、その証明の一つと見て良さそうです。



 「マシュマロ実験」、興味深い実験だと思います。

 人が生きていくということは、自制心を発揮することの連続です。中学生が制服を着て登校する。服装はきちんとする。始業までに席に着く。先生の話を黙って聞く。学校ではおやつを食べない。ジュースも飲まない。授業中、先生の指示に従う。給食当番や掃除はきちんとする。部活動の時間までに準備を済ませる。下校時刻は守る。買い食いはしない。……。

 当たり前に、自然に出来る子がいる一方、こういう「枠」(校則などによる拘束)からはみ出しがちな子もいます。帰宅したら宿題はほったらかして、テレビ・テレビゲームに没頭する子もいます。

 やるべきことが普通に出来るということは、当たり前のようで、人として生きていく上で実に重要だと思います。学校生活・家庭生活の中で、怠惰な生活を送ったり、守るべきこと(やるべきこと)がルーズになり勝ちな子は、気の毒だと思います。

 中学生ぐらいにもなると、「性向」を正すということは膨大なエネルギーが要ります。それ以上に、本人自身が「枠(ルール)の中で生きることが出来かねる」ストレスや、そのために生じる注意・叱責のストレスに苦しみます。

 「三つ子の魂百まで」です。

 乳幼児期、周りの家族が慈しみ深い愛情を注ぐとともに、「がまん」という体験を通して「自制心」を育むことに、特に留意する必要があると、この「マシュマロ実験」を読んで改めて思いました。

 ちなみに、愛犬「もも」(ラブラドール8歳)は、もらい受けた生後2ヶ月から、特に「待て」を訓練してきました。今では「待て!」という指示に忠実に従うことが出来ます。何の「苦」も「努力」も必要ないように見えます。

 おやつを目の前において「待て!」と命じ、その場を離れて戻ってきても、まだじっと「伏せ」の姿勢で待っています。飼い主よりはるかに立派です。尊敬します。

 ですから、山の中を散歩中もリード(引き紐)無しで飼い主(私)に付いてきます。少し離れたら「来い!」と言うと、すっ飛んできます。 ……私は勝手に思っています。こういう「自制心?」があるから、「もも」はきっと幸せに違いないと。

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同じく
『脳はあなたにウソをつく』の
中に書かれていたことです。
同じ褒めることでも
その後の子どもにとって
大きな差があるそうです。






蛇 足
賢さを褒められた子と
努力を褒められた子と
その違いは?