プレゼンのポイント
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2020.5.24


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プレゼンとはプレゼントすること
〜プレゼンテーションの語源は贈り物〜


 プレゼンテーションの語源を調べていくと「プレゼント」という言葉にたどりつきます。プレゼンテーションの基本的な考え方は、贈り物です。

 プレゼンが贈り物であるとすれば、話題の中心は自分がしたい話ではありません。相手が聞きたい話をしないと、贈り物にはなりません。相手が聞いてよかったと思う内容、喜んでもらえる内容でなくては、プレゼンテーションとは言えません。

 もともと、人前で話をするということは、聞く人の貴重な時間を戴くことでもあります。いただいた時間に感謝をし、一生懸命にベストを尽くしてお返しをする。これが基盤にないと、プレゼンテーションとは言えません。プレゼンテーションは自慢の場でもないし、何かを押し付ける場でもないのですから、……。

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プレゼン3要素


 プレゼンは、どの本を読んでも次の3要素が掲げられています。

@ 話す内容
A 話す人の人柄(ものの見方・考え方)
B 話す工夫


 @については、現役時代に校長として子ども達に(公に)話す機会が増えてから、特に重要性を認識し始めました。時には、「全校朝礼は校長の話だけ」という日もありました。極寒の体育館に、私の話を聞くためだけに生徒は集まってくるのです。生徒はガタガタ震えながら聞くのです。これはプレッシャーでした。

 Aについては、私の体験を振り返ってみても、いつもやはり、ここに行き着きます。話す内容がいかに優れていても、日頃の私の「人となり」(人柄・人格・正確・教養・識見・……)が問われています。まして、子ども達は注目するしないにかかわらず、私の言動を日常的に見ています。逃げ隠れ、ごまかしはききません。

 言葉が相手の心に通じるかどうか、届くかどうか、……。これはひとえに私自身の「心ばせ」が問われます。発達障害の生徒と関わるとき、いつもそのことを意識させられました。心にも思っていないことを言葉で言っても、ちゃんと生徒は見抜いています。言葉に反応しているんではなくて、私の心に反応しているんです。

 @もAも、実に奥が深い。死ぬまで捉えることは出来ないと思います。せめて意識すること、心かげること、努力すること、……。これは大事にしていきたいと肝に銘じています。

 最後の3つ目のポイントが、B「話す工夫」です。この部分を「要約学習」で鍛えてもいます。ただし、学校教育の場ですから、機器に頼ることを前面に押し出すのは、それは筋違いだと認識しています。あくまでもシンプルな音声言語であるべきだと、私は考えています。

 基本的には、話す内容を図式にして、聞く人に立った話の構成を試行錯誤する。決定した図式を、脳裏にたたき込む。その脳裏の図式を頼りに、堂々とプレゼンする。 ……これが、要約学習で行ってきているポイントです。

              

 ちなみに、3原則には挙げられてはいませんが、日頃から大事にしたいと思っていることが、もう一つあります。それは、何としてもこの内容・思いを届けたいという「熱い気持ち」です。この伝えたいという熱意がベースにあってこそ、プレゼンテーションが成果を上げるのです。 

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以下は
要約学習の教材として
赤来中学校2年生向けに
作成した文章です。

直後に校内で全員が
一人一人プレゼンする機会があると聞き
スピーチに関する教材を4本
準備しました。




プレゼン三要素


@ プレゼンテーション(略してプレゼン)とは、聞き手に対して情報を提供し、理解や納得を得る行為のことです。このプレゼンを効果的に行う三大要素は、誰が(人柄)、何を(内容)、どのように伝えるか(伝達技術)です。これら3つが合わさってこそ、すばらしいプレゼンテーションが生まれます。

A ここでは一つ目の「人柄」について説明します。アメリカの心理学者ズーニン氏は、「人の第一印象は、最初の4分で決まる。」と言っています。聞き手が初対面の場合、話し始めてから最初の4分間でどの程度相手との壁を取り除けるか、「好感」や「信頼」を得られるかが、大事なポイントです。

B シャイな人だな、生意気そうな人だな、正直そうな人だななど、聞き手は最初の4分間で話し手に対しての印象が決まります。むろん、人にいい印象を与える人柄は一朝一夕には出来ません。日頃から心がけ、日々人間的に成長するしかありません。 ※ 一朝一夕 =短い期間。

C そこで今、大事になるのが「どのような心構えでプレゼンを迎えようとしているか」です。嫌々ながらプレゼンに臨み、ぼそぼそと話し始めたら、聴衆は話し手に嫌みな印象を抱きます。聞く意欲を無くします。そうなると、心から聞いてはもらえません。

D 逆に、「自分が伝えようとしていることは、とても価値があることだ。全身全霊を傾けて伝えたい。」という熱い思いでプレゼンに臨むと、その熱意と誠意が自然と表情や態度になって表れるものです。その熱意が、プレゼンにおける人柄を作ると言っても過言ではありません。

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分かりやすく話す
(その1)


@ 分かりやすく話すための留意点について、ここでは4点について述べます。

A 一つ目は、重要ポイントを強調するということです。ここぞという場面で、「ここが大事です……」と伝え、特に端的に印象深く話すのです。まるで先生が授業中に「はい、ここはテストに出るぞ!」と注意を喚起するやり方です。ぼんやりと聞いていた人も、一転して集中してくれます。

B 二つ目は、できるだけ具体化して話すということです。一般的な話や抽象的な話は、記憶に残りにくいものです。そこで、聞き手がイメージしやすかったり、記憶に残りやすかったりする工夫をします。例えば自分の体験談を語ってみたり、数字やデータを用いて説明したり、写真や実物を示したりするのです。

C 三つ目は、大きな声でゆっくり目に話すことです。声が聞き取りにくいと理解しにくいだけではなく、聞く気を無くします。練習の時から、口を大きく開けてはきはきと話すように心がけましょう。また、ゆっくり話すと、聞き手にいい印象を与えるとともに、お互いに心にゆとりが出来ます。アナウンサーのようなプロの話し手の場合でも、ベテランから受ける指導で一番多いのが「早口すぎる」という指摘です。それほど大事な心得です。

D 四つ目は、プレゼンテーションの途中で、相手の理解度を確かめたり、聞き手とのコミュニケーションを取ったりすることです。例えば、区切りの良いところで質問を投げかけたり、クイズ形式にして「Aだと思う方」「Bだと思う方」などと聞いて挙手してもらったりします。こうすることで、聞き手を話に引き込むことが出来ます。

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分かりやすく話す
(その2)


@ 分かりやすく話すための留意点について、ここでは4点について述べます。

A 一つ目は「結論から話す」ということです。話の結論を最後に持ってくると、聞き手は時には「けっきょく反対なのか、賛成なのか、……?」とイライラしながら聞くことがあります。その点、最初にずばっと「私の言いたいことは○○です。というのは……」とか、「私は消費税増税に賛成です。なぜ賛成なのかについて説明します。」とかいう話し方(話の構成)をすると、聞き手の理解はぐんと上がります。

B 二つ目は、「余計なことを話さない」ということです。余計なことを話してしまうと、本当に伝えたい重要な情報が、それほど大切でない情報に埋もれてしまいます。意外と多くの人がやってしまっています。「ちょっと話がそれるんですが……」と、本論と関係ない脱線した話をすると、強調したいことがぼけてしまいます。

C 三つ目は、「予告する」ということです。これから話すことはどんな内容かを、コンパクトに予告してあげると、聞き手の負担は大きく減ります。また、「ポイントは3つです。一つ目は、……」という話し方をすると、聞き手は内容を整理しながら聞けるので理解を助けます。

D 四つ目は、「一文を短くする」ということです。一文が長くなればなるほど話は分かりにくくなります。特に、「〜で、〜で、〜で」とか「〜が、〜が、〜が」などと、だらだら続けてしまうのは最悪です。そうではなくて、「〜です。(ちょっと間をあけて)そこで……」などと、短い文を重ねていく話し方の方が、ずっと理解しやすくなります。

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「あがり」のメカニズムと克服法


@ なぜ人はあがるのでしょう。実は、「あがり」は脳が正常に働いている証拠でもあるのです。私たち人間の脳は生命維持のための安全機能を備えています。例えば危険を察知したとき私たちの体は、とっさに跳びよけます。これは脳の安全機能が、物理的な面から命を守ろうとしたのです。同様に脳は、精神面からも命を守ろうと働きます。

A アメリカの心理学者ウィル・シュッツは、人の自尊心には「好かれたい、理解されたい」という“自己好感”、「重要な存在として認められたい」という“自己重要感”、「有能であると評価されたい」という“自己有能感”の3つの欲求があると唱えました。大げさにいえば、私たち人間にとって自尊心とは精神面での生命そのものです。それが傷つけられるかもしれないと感じた瞬間、脳は「あがり」というアラームを鳴らすのです。
※ 自尊心 =自分の人格を大切にする気持ち。プライド。
B そもそも、生まれつき「あがり症」の人などいません。必ず過去のどこかで、自尊心が傷ついた体験があったはずです。小学校時代に朗読で失敗した、授業中に自分の発表を笑われたなど、自分でも忘れているようなことかもしれません。それでも人間は、常に過去の体験に基づいて未来を予測しています。「過去もこうだったから未来もこうだろう」と予測してしまうのです。

C 「あがり症」で悩んでいる人の多くは、とても真面目です。「うまく喋らなくてはならない」と自分を責めるあまり、「うまく喋れない」自分にいら立ちを覚えるのです。結果、喋ることが怖くなってしまっているのです。喋りは下手でもいいんです。人はペラペラと器用に話す人よりも、朴訥でも一生懸命に話す人に好意的です。「ぜひ伝えたい」という熱い思いを最優先して、心を込めてプレゼンに臨みましょう。

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