数年前、学生時代の後輩が「NHK[ラジオ文芸館]を録音したCD」を48枚プレゼントしてくれました。一話がおおむね40分、短編小説の朗読です。以後、長距離運転(30分以上)の車中は、このCDを聴くのが大きな楽しみの一つになりました。
気に入った作品は6〜7回、平均3回は聴きました。ストーリーは分かってはいても、表現力に酔いしれます。実に心地よい感じです。
何事につけ、何が書いてあるかはむろん第一義です。が、「どのように書いてあるか」という視点が、私にとって大きな関心事です。次の二つの観点から、いつも気にしています。
一つは「要約学習」で取り組んでいる図式が関係しています。伝えたい内容が脳裏に塊としてある。それを構造化したのが「図式」です。どこから話し始めて、どのような順番で伝えていけば一番効果的か? これを意識的に学ぶのが「要約学習」であり、その基盤をなしているのが「図式」です。
今ひとつの視点が「表現力」です。語彙という側面もありますが、文学的表現も見逃せません。そして、近年の関心事は後者(文学的表現)です。退職して「赤名短歌会」に所属し、短歌を作ったり鑑賞したりし始めてから富みに意識するようになりました。
このときから、車中の過ごし方は青空文庫やユーチューブなどの「小説の朗読を楽しむ」ことが習慣になっています。
以下は『幼き日のこと』(井上 靖)の一部です。