日本語の特色
[bQ]

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2019.11.10(日)


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前回は、
@語順
A関係代名詞
を取り上げました。
今回はその続きです。



B 主語を省略することがある


 英語を初め、欧米語の文には、命令文を除いて「主語がある」のがふつうです。ところが日本語においては、主語が無い文が少なからずあります。

 「あなたは朝ご飯を食べましたか?」という問いかけに、⇒「はい、私は食べました。」と答えるよりは、⇒「はい、食べました。」の方が、日本語としては自然です。

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 主語が当たり前に省略される日本語。そのことを意識させられたのは高校時代です。特に古文で主語が省略されるのには、(誰の言動かが理解しにくくて)ほとほと困ったものです。

 ただ、日常の会話ではしょっちゅう主語が省略されます。不都合を感じたり、不自然に感じたりすることは、ほとんどありません。主体者(主語)を勘違いしやすい場合には、話し手は意図的に主語を入れているからだと思われます。

 この日本語の特徴は、はたして長所なのか短所なのか?

 一概には言えませんが、日常生活の中で時として主体者(主語)を勘違いすることもあります。まして、文章の中ではしっかりと主語を入れてあった方が、勘違いを避けることが出来ます。

 では、なぜ日本語においては「主語を省略」するのか、省略できるのか? という問題です。それは、(英語と比べて)日本語は敬語が圧倒的に豊富だからです。

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C 敬語


 【丁寧語】日本語の場合、一つの貴重として、丁寧な言い方(常体の表現)とぞんざいな言い方(敬体の表現)と2通りあります。相手が目上なのかどうか、改まった場なのかどうかなどで使い分けています。

 
【尊敬語】また、相手の動作に経緯を添えて表現する言い方をしたり、

 
【謙譲語】自分の動作をへりくだって表現する言い方もあります。具体例は下表の通りです。

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普段 尊敬語 謙譲語
する される、なさる いたします
くれる くださる
思う お思いになる 存じます
いる いらっしゃる おる
言う おっしゃる 申し上げる
聞く 聞かれる 拝聴する
見る ご覧になる 拝見する
行く 行かれる うかがう
来る いらっしゃる 参る
会う 会われる お目にかかる
帰る 帰られる 帰らせていただく
待つ お待ちになる 待たせていただく
知る ご存知になる 存じる
読む 読まれる 拝読する
書く 書かれる 書かせていただく
送る お送りくださる 送らせていただく
食べる 召し上がる いただく





 これだけ煩雑に(豊富に)敬語が存在する言語は、他には無いと思われます。日本語をマスターする外国人はたいへんです。

 我々日本人にとっても、社会人になるに当たっては、一通りマスターしないといけません。上記の「尊敬語」「謙譲語」の他に、「もの」「こと」に関する名詞にもいろいろあります。

◎ 貴社・御社・貴邸・尊邸・貴殿・貴兄・御尊父・……

◎ 弊社・小社・拙宅・拙文小生・愚弟・愚息
・……

 改まった手紙を書くときなど、辞書を調べたりして気を使うこともしばしばです。やっかいで面倒な日本語ではあります。

 テレビを見ていると、「先生が申されたように」など、若い世代の人が尊敬語と謙譲語とを取り違えていたり、目上に対してぞんざいな言い方をしていたり、……。何かと気になる「敬語」の世界ではあります。

 おそらくは、日本語の敬語も簡素な方向へと変化していくように思います。また、個人的にはそうあるべきだと思います。

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D 男女の言葉の違い


 「敬語」との関連で、日本語には(英語には存在しない)「男女の言葉の違い」もあります。

 日本語において男女差が見られるのは、
1) 人称代名詞(「僕」「わたし」など)。
2) 間投詞(「あら」など)。
3) 終助詞(「わ」「ぜ」など)など


 そのほか、女性は男性に比べて次の特徴を持っています。
4) 命令形(「行け」「見ろ」など)を使わない。
5) 美化語が多く、丁寧な表現を好む。
6) 修飾語が多い。
7) 「親父」「食う」などの一定の語彙や「ぶっ倒す」「ぶんなぐる」などの乱暴な用語を用いない。


 たとえばの例としては、次のような言葉が挙げられます。
【女性語】 あら、あたい、あんた、いやーん、うち、うふっ、おほほ、〜かしら、「どうかして?」、ひどーい、まあ、ませ、……

【男性語】 俺、僕、わし、おいら、自分、お前、君、あいつ、連中、クソ暑い、バカでかい、おい、……

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 近年、ことばの性差は縮まりつつあると言われて います。

 いや、縮まるどころか、女性の男性語化が進んでいるようにも見受けます。仲間を呼び捨てにしたり、ぞんざいな言葉遣いをしたりが気になります。中学校の廊下などで、ふと耳にした(女子生徒の)言葉です、……。

 
「おい山田、水飲みに行こうや!」
 「はよぉーせえやぁー。」(=早くしなさい)
 「おまえも付いて来いや。」
 「おい、いいかげんにせぇやぁ〜。」


 悲しい気持ちになるのは、私だけでしょうか、……。いや、男女同権の過渡期なのでしょうか? いずれにしても、「尊敬語」「男女言葉」さえなければ、気にならない問題なのです。

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E 終助詞
男女の違い ⇒ 感情を細やかに表現


 男女の言葉の関連で、日本語には「終助詞」の存在があります。

 男性特有の「終助詞」としては、「これでいいぞ。」「すごく綺麗だぜ。」などがあります。一方、女性特有の終助詞としては、「これでいいわ。」「とても綺麗よ。」などがあります。

 これまた、女性の男性化ではありませんが、女子生徒が「すごいぞ。」、とか、「行くだろ?」など使っている例が、まま見受けられます。今後、どうなっていくのでしょうか?


 一般に、終助詞は、日本語の特色として注目すべき一つです。

 「いいよ。」「いいねぇ〜。」「いいぞ。」「いいなぁ〜。」、「いいぜ。」「いいわ。」など、様々な形で、話し手の態度や感情が細かく表現されます。

 英語にはこういう要素がないためか、(日本人に比べて)西欧人は、顔の表情やジェスチャーが派手になりがちだと聞いたことがあります。

 日本語の「終助詞」は、こういう視点から「特長」の一つだと言えるのではないでしょうか。

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★ 助詞には、性質上、格助詞・副助詞・接続助詞・終助詞があります。