2019.11.3 (日)

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日頃何気なく使っている日本語ですが
ふと立ち止まると
なんだか不思議な気持ちになります。
文法など意識しなくても
ふつうに日本語を理解したり
話したり話し合ったりしています。
今回から4回連続で
日本語の特徴を取り上げることにしました。
日本語は世界第6位
現在、世界中で使われている言語の数は、二千数百種と言われています。そのうち、日本語は使用人口で言うと
1億2,000万人。世界第6位となっています。
順位 |
言語 |
使用人口 |
1位 |
中国語 |
10億 |
2位 |
英語 |
2.8億 |
3位 |
ロシア語 |
1.7億 |
4位 |
ヒンディー語 |
1.6億 |
5位 |
スペイン語 |
1.5億 |
6位 |
日本語 |
1.2億 |
7位 |
ドイツ語 |
1億 |
8位 |
アラビア語 |
0.8憶 |
9位 |
ベンガル語 |
0.8憶 |
10位 |
ポルトガル語 |
0.8憶 |
「日本語は系統関係の不明な孤立言語のひとつであり、ルーツはいまだ明らかになってはいない。」というのが一般的な考え方となっているようです。ただ、現在の研究の状況としては、アルタイ語族説が一番有力とされています。
アルタイ語族とは、ツングース諸語(満州語など)、モンゴル諸語(モンゴル語など)、テュルク諸語(トルコ語、ウズベク語など)を指しています。
また、アルタイ語族とは、中央アジアのアルタイ山脈にちなみ命名されたもの。北東アジアから中央アジア、アナトリアから東欧にかけての広い範囲で話されている諸言語と規定されています。
その特徴として、次のようなことが挙げられています。
@母音調和を行う。
A膠着語である。
B原則としてSOV型(主語 - 目的語 - 述語)の語順をとる。
C固有語に語頭Rの単語をほとんど持たない。
(@Aについては、欄外に簡単な説明)
中学生になって「英語」を習ったとき、日本語との違いに驚き、興味を抱いた記憶が残っています。特に、必ず主語があったり、「語順」が決定的に違っていたりしたことです。
英語の習得と違って日本語は、物心付いたら、努力なく(?) 自然に聞いたり話したり出来るようになっていました。不思議な世界ではあります。ありがたいことではあります。
もっとも、(日本語ではあっても)読んだり書いたりということになると、がぜんハードルが高くて、その努力たるや並々ならぬものがあります。
これに関しては以前、「臨界期」と題して学説を紹介しています。(下記)
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@母音調和を行う。
=ある種の語尾がくっつくと母音調和して音が変化することを言う。
「降り」がくっつくと「雨降り」(あめふり)だが、「宿り」がくっつくと「雨宿り」(あまやどり)に母音調和している。
「漏り」でも同じだ。「雨漏り」(あまもり)になる。
「酒」でも似たようなことが起こり、「酒好き」(さけずき)、「酒浸り」(さけびたり)では変化しないが、
「酒屋」(さかや)、「酒樽」(さかだる)では母音調和して変化する。
「風」も「風向き」(かざむき)と変化する。
A膠着語である。
=膠着語の「膠着」は単語に接頭辞や接尾辞を貼り付けるという意味だけで使われている。
例えば、「飛ぶ」という動詞だと、tob という語幹に、
tob anai:「飛ばない」、tob imasu:「飛びます」、tob eba:「飛べば」、tob
ou:「飛ぼう」
のように語尾をくっつけて変化させる。
このように日本語における膠着語とは、語幹に語尾をいろいろ変化させてくっつけていく言葉をいう。
臨界期
『子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!―脳を鍛える10の方法』 (幻冬舎新書)
@ ラットの実験で、「臨界期」の存在が説明されています。狭いケージで1匹で育ったマウスと、広いケージで10匹で育ったマウスとでは、大きな差。環境の影響力をまざまざと知らされます。
A 「進化的に予測されている環境」(EEE)、本来あるべき環境に置かれることの重要さを知る実験でもあります。進化は、環境への適応過程でもあります。
B 8歳までの幼少期での環境や教育が、子どもの知能・性格・情動に重要であることは、脳の発達過程からみても明らか。これは「臨界期」からも明白です。 ……「臨界期」を過ぎると、そのほとんどを学習できなくなります。
C 音声言語は人類の歴史が古く(約50万年)、「EEE」が存在している。つまり、「幼少期に音声言語に囲まれる」という環境が予め予想されている。 ⇒環境が与えられていれば、努力しなくても自然に身に付く。(環境が与えられなければ、永遠に習得は難しい。←野生児の研究で実証済み。)
D その点、文字言語はたかだか歴史が6,000年。文字言語の能力は「EEE」とはなっていない。そのため、文字言語の能力は自然にしていれば身に付くという能力ではない。それなりの教育と努力が必要である。 ……「読み・書き・そろばん」すべて同じ。
E 移住の事例から分かったことは、7歳までに環境が与えられれば、第2言語の能力は「ネイティブ」と同程度になる。8歳以降は、第2言語の習得能力は一気に低下し、17歳以降では低レベルの第2言語能力しか習得できない。(「臨界期」の問題)
F 「絶対音感」は8歳までがポイント。8歳までに音楽教育を受けると50%が絶対音感を身につける。が、それ以降だと、わずか3%にとどまる。(「臨界期」の問題)
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EEE=Evolutionarily Expected
Environments
日本語の特色を扱った
教科書教材
ところで、以前の教科書(光村図書3年)には、「日本語の特色」と題した教材が掲載されていました。これは、英語を習い始めて2年以上が経過し、日頃何気なくお世話になっている「日本語」について改めて見つめる上で、実に優秀な教材でした。私の場合、この教材を授業で扱うとき、殊の外
気合いを入れて授業を行っていたものです。
残念ながら、現在の教科書には(東京書籍にも光村図書にも)、「日本語」をこれほどくっきりと扱った教材はありません。
ここで、「日本語の特色」について、教科書教材の内容を思い出しながら、以下に整理整頓することにしました。基本的に、英語と比較しています。
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以下は、日本語の特色です。
取り上げる内容
@語順
A関係代名詞
B主語の省略
C敬語
D男女の言葉の違い
E終助詞
F格助詞・副助詞
G擬音語・擬声語・擬態語
H文字
I音韻
@ 語 順
日本語は、「主語」⇒「目的語」⇒「述語」という語順。これに対して英語は、「主語」⇒「述語」⇒「目的語」となっています。実に特徴的で、そして根本的な違いです。
去年は 雪が たくさん 降った。
We had a lot of snow last year.
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関係代名詞
英語には、(日本語には存在しない)「関係代名詞」があります。日本に存在しないので、英語を学び始めた中学生には、理解するのにやっかいな品詞でもあります。
関係代名詞とは、接続詞と代名詞の2つの機能をもったものといえます。関係代名詞の導く節の中で、その名のとおり代名詞として働くので名詞の働きのうちのどれかの働きをします。つまり、主語・動詞の補語・動詞の目的語・前置詞の目的語のうちのどれかになるわけです。
I know a lot of people who live in New York.
私はニューヨークに住んでいるたくさんの人々を知っている。
He is not the man which his father wants him to be.
彼は父親が望んでいるような(性格の)男ではない。
This is the book which I bought yesterday.
この本は昨日買った本です。
The man whom I spoke to is my English teacher.
私の話しかけた人は私の英語の先生です。
I know a lot of people who live in New York.
私はニューヨークに住んでいるたくさんの人々を知っている。
I cannot find the watch which I bought last week.
先週買った時計がみつからない。
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日本にも、こういう「文」を整理整頓する品詞があればよかったのに、……。つくづく、そう思わされる重宝な品詞です。
長い文の場合、聞き手や読み手にとって「分かりにくい文」になりがちです。また、主語と述語が照応しない、文脈の崩れた文を生みやすくもなります。例えば、
私は、松の林を通して遠くに海がわずかに見える鎌倉の先生のお宅の、山崎さんから贈られたというセザンヌの見事な模写と、北斎の暁の富士の版画と、弘法大師の複製のかけてあった書斎を思い出します。
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こういう日本語の短所(気を付けるべき点)を念頭に置いて、長文にならないよう気を付ける必要があります。(一般的は、40字〜50字が長さの限度とされています。)
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[推敲例]
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山本先生のお宅は、鎌倉にあります。先生のお宅からは、松の林を通して遠くに海がわずかに見えます。私は、お宅の書斎が心に残っています。その書斎には、山崎さんから贈られたというセザンヌの見事な模写と、北斎の暁の富士の版画と、弘法大師の複製がかけてありました。
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