2019.10.27(日)

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民度の高い日本人
『世界の偉人たちが贈る日本賛辞の至言33撰』(波田野毅;著)を読むと、日本人の特性に関して、興味深い分析を紹介しています。抜粋して紹介(青字部分)します。

フランシスコ・ザビエルは、スペイン生まれのカトリック教会の司祭、宣教師。1549年、日本に初めてキリスト教を伝えたことで知られています。
海外布教の関係で、西欧人以外の多くの異人に接してきているそのザビエルが、日本人があまりにも民度(知的水準や教育的水準)が高く、優秀なので驚いたと言います。例えば、次のように述べています。
彼らは親しみやすく、一般に善良で、悪意がありません。驚くほど名誉心の強い人々で、他の何よりも名誉を重んじます。名誉は富よりもずっと大切なものとされています。大部分の人は貧しいのですが、武士も、そうでない人々も、貧しいことを不名誉とも思っていません。
また、次のようにも紹介しています。
「好奇心が強く、しつこく質問し、知識欲が旺盛で、質問はきりがありません」「とても気立てがよくて、驚くほど理性に従います」「日本の人々は慎み深く、また才能があり、知識欲が旺盛で、道理に従い、総じて優れた国民性があります」。
近世において、西欧諸国は世界中の後進国を植民地化したり、属国化したりしています。しかし、そういう中にあって日本は、この恐るべき植民地化の罠に捕らわれることがありませんでした。世界史的にも特筆すべき、長期の平和な江戸時代を築きあげています。
この日本の奇跡 は、上に紹介した日本人の特性と無縁ではないと思います。日本が植民地化されなかった理由については、欄外に箇条書きにしました。
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@武士の存在
武士は名誉心が強く、人に誇りを傷つけられるのなら、死を賭してでもそれを防ごうとする。
征服する側としてはとても手ごわい存在だ。
イタリアのイエズス会巡察師のアレッサンドロは言っています。
「日本国民は非常に勇敢で、しかも絶えず軍事訓練を積んでいるので、征服可能な国土ではない。」
A進取の気風
種子島に鉄砲がきて、2挺買い取ったらすぐそれを自らの手で作り上げ、10年のうちに日本に普及させた。
これは、新しい物を取り入れる気概と明敏さがあり、また、伝達網がしっかりしている。
B民度の高さ
字の読み書きできる人が多く、理知的で理解が早い。
高い道徳性で秩序が保たれている。つけいるスキもない。
C上の命令はよく聞き、統率が取れている。
いざ戦いとなると手強い存在。
D地理的条件
日本はヨーロッパから遠く、また東南アジアの植民地からも距離がある。
また海に囲まれ、征服の軍を出すにしても、陸続きのように兵隊・兵糧などの供給ができにくい。
有能な日本人は何処から来た?
ザビエルの時代、西洋人には「日本人は侮れない存在」と写ったようです。が、それ以降、特に明治以降、日本人の「民度」のレベルはどうなっているのでしょうか?
文明開化を経て、日清・日露戦争に打って出るまでに強国化(?)した近代日本。そして、無謀にも大国アメリカを相手に、日中戦争⇒太平洋戦争へと突き進みました。結果、完膚無きまでたたきのめされ、敗戦に至った近代日本の最終章、……。
しかしながら、驚異的な戦後復興を遂げ、東アジアの奇跡とまで言わしめた、日本の恐るべき経済発展。数年前、中国に抜かれたとはいえ、世界経済大国ランキングで堂々第3位です。資源の乏しい島国小国;日本、私から見たら「世界の奇跡」でさえあります。
経済大国ランキング 2018年 GDP
順位 |
国名 |
単位: (10億USドル) |
1位 |
アメリカ |
20,580.25 |
2位 |
中国 |
13,368.07 |
3位 |
日本 |
4,971.77 |
4位 |
ドイツ |
3,951.34 |
5位 |
イギリス |
2,828.83 |
6位 |
フランス |
2,780.15 |
7位 |
インド |
2,718.73 |
8位 |
イタリア |
2,075.86 |
9位 |
ブラジル |
1,867.82 |
10位 |
韓国 |
1,720.49 |
ただ経済状況がよいだけではありません。海外旅行をして、いつも強く感じるのは「治安の良さ」です。安堵感です。加えて、四季が織りなす美しい、住みやすい環境です。

この日本の奇跡は、いったい何処から来るのでしょうか?
上に紹介した著書の中では、ザビエルをもっとも驚嘆させた言葉を紹介しています。
それは「大部分の日本人が、読み書きができる」ことだったそうです。識字率は「少なくとも自国のスペインの民よりは高そうだし、今まで接してきたインド人、中国人よりも、一般日本国民は読み書きができる」と驚いたそうです。
私は、ここに注目しました。
日本の文字は、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3種類があります。とりわけ「漢字」こそ日本人の識字率を高め、教養を高め、日本人の気風を醸成してきた、一番の功労者ではないかと考えています。
日本の表記から「漢字」が無くなったら、……。そう考えるだけでぞっとします。抽象的な思考、複雑な思考は、漢字(漢語)抜きには考えられません。
また、漢字をマスターする過程で、いかに「脳力」を磨き、「こころ」を鍛え上げているのかと思います。
以下は、以前「日本語の特色」を特集したときに記載した内容です。
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H
文字
日本語表記は、漢字仮名交じり文です。
同じく漢字文化の中国は、マスターすべき文字数(漢字数)が多すぎる(最低5,000文字)ので、ローマ字化を試みた時代もあります。が、同音異義語が多すぎるため見切りを付けて、「略語」の方向に動いています。
韓国は、新たらしい文字(ハングル文字)を考案して、漢字を捨てました。ただ今でも「漢字復活」を主張する学者が、少なからず存在します。理由は、韓国語には「同音異義」の「漢語」が数多く存在し、理解に混乱を来しているとされています。
ベトナムは、ローマ字化することによって漢字を捨てました。
その点、日本は漢字から「ひらがな」「カタカナ」を考案し、それらを使い分けることによって、漢字の長所(表意文字)とひらがな・カタカナの長所(表音文字)を織り交ぜながら併用しています。
日本・中国を除いて、調べたところ(文明国においては)表意文字(漢字)を使用している国は皆無です。 ……なぜ日本に「漢字」が現在でも使われ続けているのか?
「ひらがな」「カタカナ」が存在するおかげです。日本語の構造上、「漢字」(読みと意味とを兼ね備えた文字)と、「ひらがな」(助詞・助動詞など、読みだけを表す文字)と、上手に使い分けたからです。
漢字表記だけにすると、習得すべき漢字が多すぎる欠点があります。ひらがな表記だけだと読みにくい上に、同音異義の漢語が多すぎて混乱します。日本人の祖先の叡知に頭が下がります。
もっとも確かに、漢字の読み(約2,000文字)、書き(約1,000文字)をマスターするには、そうとうの労力が必要です。
しかし、膨大な語彙を獲得していく過程で「漢字」の存在は欠かせません。漢字無くしては、抽象語彙の獲得は困難を来します。
日本人は漢字をマスターしていく過程で語彙を獲得し、語彙を獲得していく過程で漢字をマスターしてきているのです。日本において、漢字と語彙とは表裏一体の関係にあります。
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日本語は 優れた表記法
★ ひらがな ……助詞、助動詞、送りがな。その他、接続詞、感動詞など。 |
★ カタカナ ……外来語、擬音語など。 |
★ 漢 字 ……実質的な部分。名詞、動詞など、文章骨格(主語・述語等)となる部分。 |
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