キレる子
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2019.7.28(日)


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心療内科医 明橋大二 氏の
子育てに関する心得についてかかれた著書
「リセットできない子育て」
を読みました。
今回は
明橋先生のごドバイスを取り上げます。






明橋大二 氏の紹介


大阪府出身の精神科医。京都大学医学部卒業。
名古屋大学医学部附属病院などを経て現在、真生会富山病院心療内科部長。
専門は精神病理学、児童思春期精神医療。
NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。
子どもの権利条約フォーラム2009実行委員長。

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リセット出来ない子育て


 子育ては、テレビゲームのように「リセット」が効きません。後戻りしてやり直すことはできません。しかも、子育てにおいて大きな比重を占めるのが、乳幼児期です。

 私自身を振り返ってみると、わが子がかわいい、愛おしいという、ただ本能的な思いで、わが子に関わってきました。そして、児童期・思春期を迎えるにしたがって、「乳幼児期の子育て」の重要性に気づきました。しかも、失った過去は取り戻せないというのが、人の世の習いです。

 はたして私は、父親としてわが子3人にどれほどのことがしてやれたのか? すでに3人とも結婚して自立した生活をしています。親の役目が「自立させる」ことにあるならば、一応、世間並みに親としての役割は果たせたのかな、という達成感? のようなものはあります。

 が、もう一度乳幼児期からわが子に関われるチャンスを与えられたら、もっともっと愛情を注いでやりたい、関わってやりたいという気持ちがあります。心の何処かで不完全燃焼の印象が残っています。

 私自身のことを振り返ると、わが子の乳幼児期は、部活動にあくせくしている熱中教師でした。平日の帰宅は、シーズン中は7時半頃。土曜日の帰宅も遅く、日曜日は(バレー部の)練習試合(=遠征)のため、ほとんど家を空けている状態でした。週末、親子そろって遊びに出かけることは、物理的に難しい生活を続けていました。

 自分が父親として確かに継続してきたことといえば、毎晩風呂に一緒に入ること、絵本を読んでやること、添い寝をして寝かしつけること。(もっとも、絵本を読んでやりながら、また添い寝をするといいながら、逆に自分が先に寝込むこともしばしばでしたが、……。)

 この間、教員としてさまざまな生徒と関わってきました。持って生まれた素養というものもあるかも知れません。(学業の世界でもそうですが、)スポーツの世界では、天性のバネ、運動神経は、これは否めない事実です。神様のいたずらとしか思えません。

 しかしながら、生徒の家庭環境、生い立ちなどが、どれほど大きな影響力があるものか! ……教員という立場から、生徒一人一人(のものの見方・考え方・言動・人柄など)を見つめるとき、その因果関係を強く意識させられます。

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要約抜粋
厳しすぎるしつけ

 最近「キレる」子が増えているといいます。ちょっとしたことで、感情を爆発させる状態です。どうして子どもがキレるのかを考えてみたいと思います。

 最近は、脳機能からの研究も進められていますが、大人側の接し方を考える上で、二つの点を指摘します。

 まず、キレる子は、体罰を含めて厳しすぎる躾を受けている子どもが多いということです。

 キレる原因として、よく耳にするのは「過保護、わがままに育てられたから、忍耐力が育っていない」という見方です。

 しかし実際は逆で、過保護に育てられた子がキレる割合は少なく、むしろ、厳しすぎる躾を受けたり、過剰に叱られたりした子どもがキレる割合が多いのです。

 親としては愛情のつもりではあっても、キレる状態まで叱り続けると悪循環になってしまいます。そんなときには、子どもへの要求水準をぐっと下げてみましょう。

 「できて当たり前」ではなくて、「子どもなんだから、できなくても普通」と思い直して、子どもなりの頑張りを見つけていくようにしてはいかがでしょうか。

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 現役時代、キレる中学生に関わったことがあります。特に著しいのは、私の体験の中では2人います。そのうちの一人は、「軽度発達障害(アスペルガー症候群)」と診断されていました。この生徒をA君と呼ぶことにします。

 A君は、他人(特に教員)に対して暴言を吐くという特徴がありました。例えば朝、出会ったときに「おはよう!」と声をかけると、「ボケ!」と返事? が返ってきます。女先生に対しては特にひどくて、「くそばばあ」「お化け」「ゾンビ!」という言葉すら返ってきます。

 そういう状況ですから、教員を「○○せんせい」などと呼ぶことはありません。呼び捨てか、勝手に付けたニックネームか、「ぼけ」「はげ」「おい」「てめえ」「おじさん」など、人権問題に発展しかねない言葉を平気で使います。

 おそらくは、こういう言語環境を作り出す心理状況は、「支配されたくない(反動で権威者を支配してやる)」という一面があると、私は分析していました。

 こんな状態ですから、行動はわがまま勝手、傍若無人。人(教師)の言うことは聞きません。「やるな」と注意してもやります。「やろう」と促しても「うぜー」で終わりです。こういう状態に対して強い態度で出ると、キレるのです。

 暴言で相手を屈服させ、卑屈にさせ、相手を支配しようとします。もし相手が強く出ようものなら、「キレる」という行為で撃退してきます。

 机や椅子を蹴飛ばす、モノを投げる、暴言を吐く、文房具をボキボキバキバキ壊す、学習プリントを破く、……。

 「フラッシュバック」と専門的に言うそうですが、突然(以前に腹が立ったことを急に思い出して)暴れ出すのです。机を蹴飛ばして、筆箱を壁に投げつけて、「あのやろう、ぶっ殺してやる!」と押し殺した声で言います。見ると、目つきや表情が、一瞬のうちに凶悪犯のように大変身しています。

 この子の育ち(生育歴)は、いったいどうなっているんだろう? と、小学校時代や保育所時代に関わってこられた先生方に尋ねました。また、本人自身が幼児期・児童期を思い出して話してくれることもありました。

 明橋先生が指摘しておられるとおりです。A君の場合は、特に母親との関係が病んでいました。幼児期(児童期)、母親に完全に支配されていたようです。厳しすぎる躾と、叱責(暴言)、……。母親自身が、わが子に対してキレまくっておられたのです。

 A君が、(私の前で)ぼそっとつぶやいた言葉があります。「おれが こがあになったんは、くそばばあ(=母親のことはいつもこう呼んでいました)のせいだ!」。

 さまざまな図書を読んでみると、こういう「押さえつけ支配した育て方」をされると「前頭前野の健全な発達が阻害される」とのことです。「キレる脳」になってしまうということです。

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上記のような激しい状態は
特に2年生前半までの時期です。
以後においては
暴言やわがまま勝手な行動は続きましたが
いわゆる「キレる」状態は
次第に改善されました。
3年生後半になると
自分でも「キレるのをガマンできるようになった」と
分析できるほどになりました。

卒業頃には
表情も言動も
ぐんと穏やかになり
暴言もほぼ無くなり
普通の会話が出来るようになっていました。

現在は
立派に社会人として
自立した落ち着いた生活を送っています。

ただ
人格形成の重要な時期(乳幼児期)は
二度と取り戻せません。
今でも彼とは交流がありますが
私の見立てでは
彼の中では
依然として
大なり小なり
自分の中で戦っている
苦しんでいると分析しています。










キレるとは?


 キレる、という意味は、「堪忍袋の緒が切れる」の「切れる」から来ています。が、現代の青少年を中心に使われる「キレる」とは少々意味が違うかもしれません。

 堪忍袋とは、ガマンしてガマンして何とか理性で怒りを抑えている、この「理性」であると思います。

 しかし青少年の凶悪犯罪を見るとき、いとも簡単に衝動的な行動に出ています。これはもはや「理性」を失った、ただの“野生動物”と同じ状態になっているとも言えます。

 「キレる」子どもたちは、自分の内部にある激しい攻撃性や衝動を、うまくコントロールできないところに問題があると考えられます。

 知性や情などの理性を司るのは、新しい皮質と言われる大脳皮質です。「キレる」の正体は、この大脳皮質の働きに障害が生じていることが判明しています。

 実際、欧米で殺人などの事件を起こした凶悪犯の脳を調べると、前頭葉の血液の流れが普通の人より少ないという調査結果があります。こうしたことから人がキレるのは、前頭葉のコントロール能力が弱くなっているからではないかと、専門家の間で言われています。

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〜以上は、「ヤマト生活情報館」より引用させていただきました。〜
http://www.yamato-gr.co.jp











要約抜粋
キレる子は
気持ちをうまく話せない


 次に指摘したいのは、キレる子は、自分の気持ちをうまく話せない子が多い、ということです。

 キレる子は、自分の気持ちを言葉で伝えるのことが、とても苦手です。生まれつき苦手な場合もありますが、自分の気持ちを大人にしっかり聞いてもらっていないため、はなせなくなってしまったケースも多いのです。

 子どもは、人に話すことで自分の気持ちを自覚し、もやもやとたまった気持ちを人に伝えることですっきりできると知ります。

 自分の気持ちをしっかり表現できる子どもを育てるためには、子どもとの会話を大切にすること、そして子どもの気持ちをくんで、言葉にして返すことです。テレビやビデオを子守り代わりに長時間観させておくことは、子どもが話す機会を奪うだけでなく、言葉の能力の発達にとっても、大きなマイナスになると言われています。

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 「キレる子は、自分の気持ちをうまく話せない子が多い」というご指摘、全く同感です。

 A君がキレたとき、落ち着いた環境の中でキレた理由を聞こうと試みます。が、きちんと話してくれたことは、ほとんどありません。眉間に深い皺を寄せ、一点を見つめて頑なに緘黙を貫きます。

 なぜそういう思いに至ったのか? どうしてほしいのか? ……自分の心の内を分析したり、人に話したりということがありません。いや、彼の生い立ちの中で、そういう体験がなかったのではないか、……?

 それまでの親子関係の中で、心の内を説明したり、聞いてもらったり、という経験が乏しいのではないかと予想されます。(わが子の言動に関して)親が気に入らなかったら、A君の事情や気持ちを聞くこと無しに、頭ごなしに叱りつけたり、体罰を与えたり、……。この積み重ねが、彼の防衛本能(相手を威圧したり攻撃したり無視したりキレたりして、相手を支配する)を強化していったのではないかと、私は分析しています。

 A君にとって「ことば」は、相手を傷つけるモノ(武器)。相手と心を通わす大事なコミュニケーション手段ではないのです、経験的に、……。

 こんな生育歴を持つA君ですから、教師の権威を笠に頭ごなしに叱りとばすと、その拒絶反応たるや尋常ではありません。そこには、理屈も理性もありません。一気に暴言を吐いたり、暴れたり、完全無視したり、……短絡的な行為に及びます。

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だらだらと長くなったので
今回は
とりあえずここでペンを置きます。