意見を図式にする
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2018.8.5(日)


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下の図式は
小学校4年生です。
指導者(私)が
学校をノーチャイムにしよう!
と呼びかける提案スピーチを
図式化したものです。

約6分間
あれこれとしゃべりましたが
要は下の図式のとおりです。







下の図式は
いえいえ
学校はチャイムがあるべきです!
という自分の考え(意見)を
表現した図式です。



児童の皆さんには
作文の形ではなく
図式の形で
自分の考えをまとめるよう
指示を出しました。

要約学習2時間目でしたが
構造化の出来不出来はありましたが
おおむね3人に2人の児童の皆さんが
上のサンプルのように
見事にキーワードのみで
図式に出来ていました。

なぜ
要約学習では
意見を作文の形で書かせないのか?

一つの理由として
「作文」ということになると
学級の実態
児童生徒の実態が
千差万別だからです。

作文に抵抗を感じる子が
相当数存在する学習集団だと
ある程度まとまった時間を
与える必要があります。

45分(中学校は50分)の制約の中で
苦しいというのが正直なところです。

自分の意見を図式で!
ということになると
3分〜4分もあれば
十分大丈夫です。

書く労力が必要ない分
考える時間に多くの時間を
費やすことが出来ます。

実は
もっと大事な理由があります。
たまたま先日
ある学校の先生から
「要約学習ではなぜ児童の考えを
作文ではなく
図式でまとめさせるのか?」
という質問がメールでありました。

以下のように
返信しました。
なお
一部書き加えたところがあります。







なぜ
自分の考えを
図式の形でまとめさせるのか?


意見文を図式で書かせる……ということについて
付け加えます。

日常生活において
人前でプレゼンやスピーチを行う場合
事前に作文を書いて朗読する方法が
かなり一般的になっています。
ところが、作文を書いたら
ついつい朗読します。
この方法だと
当日、緊張しないという安心感もあります。

しかし、朗読すると伝わりにくい
聞く方は理解するのに労力がいるという欠点があります。

では、原稿を朗読しないということになれば
暗誦しなければなりません。
その労力たるや大変なものです。
その例として、中学校の弁論大会があります。

しかも、よほど書き慣れていない限り
作文するという行為には
時間とエネルギーが要ります。

日常生活においては
限られた時間内に(短時間で)
さっさっと自分の考えをまとめて
発表するというケースが
少なからずあります。

そういうとき
図式が有効です。

一方
考えをめぐらしながら図式にしていると
話の構想があれこれ湧いてきます。
その過程で、内容が脳裏に「絵」「図」となって残ります。

そのイメージを念頭に
スピーチが出来ます。
これは
話し合い(会議)でも威力を発揮します。

図式を基に話すと
スピーチが
より的確・端的になります。

図式化は、慣れれば時間も労力も
ぐんと省力化されます。

これぞ、日常生活に生きてはたらく能力です。
社会人になって
結婚スピーチや社内プレゼンなどで
必ず役立ちます。

以下は
実際にあった例です。
数年前、愚弟の長男(私の甥)の
結婚式がありました。
仲人を立てないので
兄貴が親族代表で挨拶してくれと頼まれました。

いつもやっているように
前日に図式を書きながら
話の構想を考えました。

その図式を見ながら
数回、リハーサルをし
当日朝は、軌道修正もしました。
準備にかけた時間は
たぶん合計でも40分〜50分程度です。

結婚式では
友人代表として
新郎・新婦側それぞれ2名がスピーチしました。
内容は祝福に満ちた
友人としてのエピソードを盛り込んだ
とてもいい内容でした。

ただ、4人とも
ザンネン
予め書いた原稿の朗読でした。
これが聴衆を見回しながらのスピーチなら
更にいっそう感動を呼んだろうにと
惜しまれました。

その後、宴が始まりました。
するとスピーチをした若者(男性)2人が
私の所に「お酌」をしにやってきました。
そして言いました。
「おじさん、すごいですね!」

何故か聞き返すと
原稿を見ずにスピーチしたことだそうです。
なるほど
この若者2人も
朗読を突き破りたかったんだと
知りました。

その場は雰囲気から
「年の功だよ……」と答えました。
が、本当はそうではありません。
場数でもありません。

キーワードは図式です。




考えてみれば教員は
プレゼン(スピーチ)の連続です。
プレゼン力のある先生に習う子ども達は幸せです。

道徳の授業で
友達に影響されず自分の考えを持たせるために
よく「書く」時間を設けます。
すると話し合いに入ると
子ども達は、下を向いて作文を朗読しあいます。
これでは
話し合いになりません。

その点、図式で意見をまとめると
みんなの方を見ながら
堂々と語ることが可能になります。
また
友達の意見を念頭に、
流れに沿って自分の意見が言えます。
作文と違って臨機応変だからです。

以上の理由で
要約学習においては
自分の意見をまとめるとき
作文させずに図式の方法を採っています。

なお、長くなったので
作文に関しては今回は触れませんが
作文がいけないというわけでは
むろんありません。
作文にしないといけない場面も
学習や日常生活には
沢山あります。


一方
作文に抵抗感を持つ児童生徒が
少なからずいるのも現実です。

大事なのは「書く」機会を多く持たせることです。
さらには
作品主義(添削主義)ではなく
習作主義(加点主義)で
教師が対応することも大事です。

よりよい文章を書けるようにするためには
優れた文章をたくさん朗読したり
暗誦したりすることも
その一方で欠かせません。

たいへん長くなりました。

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蛇足
私の場合
より相手が
読みやすいために
メールは上のように
どんどん改行しながら
書いています。