@ 1991年、イタリアの学会でベニクラゲは「ある特性」を持っていることが発表され、一躍有名になりました。このクラゲは、浮遊生活の時期に再生困難であるほどのダメージを受けると必要な細胞のみが「若返り」、ポリプに戻ります。まさに不老不死のクラゲなのです。
A ベニクラゲは世界中に広く分布する、最大でも1cm程度の大きさのクラゲです。1996年、イタリアのボエロ博士(レッチェ大学)のグループの学生が、水槽に入れておいたベニクラゲの世話を忘れ、長時間ほったらかしにしていました。しばらくして、とっくに全滅してしまっただろうと思って中を覗いてみると、クラゲの死体は見あたらず、 そこには生まれたばかりの赤ちゃんクラゲの姿がありました。一般にクラゲの仲間は、成熟し子孫を残した後、徐々に衰弱し海中に溶けて消滅します。しかし、ベニクラゲは衰弱した後、クラゲの成長段階である"ポリプ"と呼ばれる状態に"若返り"し、"ポリプ"から再びベニクラゲが生まれてくるのです。
B 死んだような状態になってから復活するまでに丸二日かかります。この奇跡の48時間で彼らは完全によみがえり、新しい一生が始まるのです。今まで筋肉であった組織は卵や精子、神経細胞などに変わり、今までと異なる組織に変化させることが可能だということが、その後の研究で明らかになりました。もしこの若返りの仕組みが解明されれば、人間など他の生物にも応用できる可能性があると、ボエロ博士は語っています。