@ 熊本地震では、地域の心のよりどころでもあるお寺や神社も大きな被害を受けた。熊本県内では少なくとも1,000を超す神社仏閣に何らかの被害があり、再建や修復に数億円の費用がかかるケースもある。文化財指定を受けている一部を除くと、国などからの補助金は出ない。被災した地域住民からの寄付に頼るのも難しく、関係者は頭を抱えている。
A 熊本県益城町にある浄信寺の本堂は、柱にひびが入って傾き、本堂を囲む鐘突き堂や石灯籠も崩れた。本堂にあった仏像などは別の部屋に移した。住職の父を継ぐことが決まっている僧侶の小田孝道さん(41歳)は、空っぽの本堂を見渡し「寂しくて涙が出てきますね。」とつぶやいた。
B 小田さんは、寺の再建には1億円以上かかると予想している。私財や保険金、お寺の貸付金などを見込んでいるが、それでも全く足りないという。これまでは建物の修復などの際には門徒からの寄付を募ってきたが、今回は約500戸いる門徒のほとんどが被災した。家が全壊した人も多く、「とても寄付をお願いできる状況ではない」と肩を落としている。