@ 「がんウイルス療法」と呼ばれる、新しい「がん治療」が発表されました。この治療には、「ヘルペスウイルス(G47デルタ)」という、口に水泡(できもの)を作るウイルスを使います。元のままのウイルスを使うのではありません。遺伝子工学を使って、このヘルペスウイルスの遺伝子を変化させます。
A 研究で用いているウイルスは、毒性を減らした上に副作用もなくしてあります。そして、がん細胞だけを殺して正常細胞は傷つけないように、ウイルスを作りかえてあります。がん細胞を破壊したウイルスは、細胞膜を破って広がります。こうやって、周りのがん細胞を次々に破壊するのです。
B 実はがん細胞は、そのヒトの細胞から発生しているため、免疫(自分と違う物質を攻撃する)を働きにくくするという性質を持っています。他の病原菌やウイルスのように攻撃されないのです。ところがG47デルタウイルスに攻撃されると、この特徴が無くなってしまいます。ヒトの体の免疫機能が働くようになり、こちらの方向からもがん細胞は攻撃されることになります。
C 東大医科学研究所では、2009年から安全性や有効性に注目して、がんの中でも特に治療困難と言われる悪性の脳腫瘍である膠芽腫(こうがしゅ)を対象にして研究を進めてきています。これまでの「治験」では副作用がないこと、3ヶ月〜6ヶ月生存が5年に伸びていることなどが確認されています。さらに2013年からは前立腺がんなど、他のがんへと応用範囲を広げてきています。