イスラーム国とは、イラクとシリアで活動するサラフィー・ジハード主義組織である。AFPの記事によると、2014年6月29日、イスラーム国家の樹立を宣言し、組織名ISIS/ISILの名を廃止し、「Islamic State イスラーム国」を国名として採用すると宣言した。
国家の樹立を宣言したが、欧米諸国や、イラク、シリアなどの政府が認めていない。さらに、周辺のシーア派スンニ派イスラム教諸国などからも、国家としては承認されていない。日本も、今のところ、国家とは認定していない。
ただし、「イスラーム国」はラッカが首都だ、と宣言しており、ラッカでは一般市民に税金を納めさせており、次第に国家としての体裁を整えつつある。また防衛省・保健省・電力省などの省庁を置き、各省庁には閣僚もおり、治安組織(警察組織)も持っており、パトロールカーも巡回させている。また、支配地域の住民のために、独自のパスポートも発行しているという。シリアの油田地帯を掌握し、原油販売も行っていると伝えられている。
さらに、2014年11月13日には、イスラーム国は、独自の金貨・銀貨・銅貨を発行すると発表した。
シリア人など現地の人々だけが組織のメンバーになっているわけではなく、イスラム国は外国でもメンバーを募集しており、世界80ケ国から1万5000人の戦闘員が集っている。外国人戦闘員は、現地人の5〜10倍の給料が支払われているという。
2014年に入り、シリアの反アサド政権組織から武器の提供や、戦闘員の増員を受けたため、急速に軍事力を強化した。その軍事力を使い政権奪取を目指して、イラクの各都市を攻撃し始めた。これに対して、8月25日、アメリカ合衆国のバラク・オバマ大統領は、アメリカ軍によるシリア上空での偵察飛行を承認した。
シリアのアサド政権は、イスラーム国の勢力拡大に対して国際社会と協力する用意があると表明した。これまでアサド政権打倒を目指してきた反政府派を支援してきたイギリスやアメリカ合衆国の協力も歓迎するとしている。
8月31日、ドイツはイスラーム国が自国の安全保障の脅威になるとして、イスラーム国と対峙するクルド人勢力に武器を供与する方針を発表した。ドイツは世界第3位の武器輸出国である一方で、これまでは紛争地域への武器輸出を見送ってきたが、方針を転換した。
9月1日、国際連合の人権理事会は、イスラーム国のイラクでの人権侵害を「最も強い言葉」で非難する決議を全会一致で採択、イスラーム国の行為は戦争犯罪や人道に対する罪に当たるとした。
さらに9月19日、国連安全保障理事会は、全会一致でイスラーム国の壊滅に向けて対策強化を求める議長声明を採択した。また同日、フランスはイスラーム国のイラク北東部の補給所に対して、初の空爆を実施した。
9月23日には、アメリカ主導による有志国がシリア国内でも空爆作戦を開始した。さらに11月8日にはアメリカ軍などによって、イスラーム国の幹部たちが乗る車列が空爆された。アル=アラビーヤが地元部族の話として伝えたところによると、この中に、最高指導者のアブバクル・バグダディが乗っており、バグダディは致命傷を負ったという。