@ 健康な人の便を腸を患っている患者に移植する「便微生物移植」が注目されています。アメリカでは、実に8割が治癒するとのこと。方法は、健康な人の便 100g(10兆個の菌を含んでいる)を生理食塩水に溶かして、濾過。それを患者の肛門から注射器で注入します。
A 慶応大学では今年3月下旬、「潰瘍性大腸炎」の40代男性にこの移植を行いました。国内では1例目となります。人間の腸内には数百種類、数百兆個の細菌が棲んでおり、免疫や栄養素の分解などにかかわっています。しかし、潰瘍性大腸炎など腸の病気の患者では、細菌の種類も個数も少ないため、細菌の恩恵を十分受けていないことが分かりました。
B 以前の治療は、抗生物質によって悪い菌を叩くという方法がとられてきていました。ところが、この抗生物質がやがて効かなくなり、さらに新しい抗生物質を開発する。また効かなくなる。この繰り返しでした。
C 「便微生物移植」治療のヒントになったことがあります。一つは、昔の日本では肥料に糞尿を使っていたので、微量が口を通して体に入っていました。二つ目のヒントは、パンダやコアラです。誕生後、赤ちゃんは母親の糞を舐めます。三つ目は中国の医学書です。「食中毒には便を投与する。」と記されています。
D 海外では、慢性疲労症候群・不眠症・肥満症などの患者に、同じ移植を行う臨床実験が始まっています。手術や薬に頼らない画期的な治療法として、世界中から注目されています。