@ iPS細胞を活用した、医療への応用は2種類あります。一つは「再生医療」です。先日(9/12)は、患者のiPS細胞から作成した網膜の細胞を使って、移植手術が行われました。失った視力回復を目指した、世界初の試みです。
A もう一つは「難病の治療薬開発」です。9月17 日付けのイギリス科学誌「ネイチャー(電子版)」によると、「軟骨無形成症」(軟骨が出来ず、低身長になる難病)にスタンチン(コレステロール低下薬)が効くことを発見した、と報じられました。これまで京都大学・兵庫医科大学のチームによって、患者のiPS細胞から軟骨細胞を作成し、軟骨が形成される化学薬品を探す実験が繰り返されてきました。そしてこの度、「軟骨無形成症」に効く薬が発見されたのです。
B これまで、この難病に対しては有効な対策がなく、患者にとって負担が大きい外科的手術が行われるのみでした。また、これまでの新薬開発は原因物質を究明し、それに対応した薬を開発するという方法がとられてきました。ところがマウス実験で成功しても、人間には効かないケースもあったり、重い副作用の危険があったりして、新薬の開発には多くの時間と費用と労力がかかっていました。
C その点、このiPS細胞を活用した治療薬開発は、病態・症状から直接的に薬を発見しようという方法です。これまでの新薬開発とは、全く方法が違います。実際に人間に薬を投与する前に、効く効かない、副作用あるないについて、細胞段階で調べることが出来ます。したがって、たとえ投与できる患者が少数であっても、新薬承認が可能になります。
D なお、京都大学・兵庫医科大学のチーム代表、妻木教授(京大)によると、「スタンチンの投与は、マウスでも効果が確認できた。今後、安全性・有効性を検討し、2年以内に人体への治験を開始する。」とのことです。