@ 2014年9月12日、再生医療の切り札、iPS細胞を使って目の網膜の移植手術が行われました。これは、世界初めての試みで、夢の治療法と言えます。
A iPS細胞は 2006年、山中伸弥(京都大学)教授によって開発されました。開発からわずか8年後、iPS細胞を使った手術という画期的な速さでの実現です。なお、教授は
2012年、ノーベル賞を受賞しておられます。この再生医療の臨床実験は、ES細胞を使って行われてきており、まだ移植手術には至っていません。特にアメリカやイギリスで盛んに研究されていますが、iPS細胞より安定しているとされています。
B 手術が行われたのは、滲出性加齢黄班変性という難病に冒されている50歳代の女性です。この病気は全国で約70万人いるとされ、矯正視力でも
0.1未満、失明の原因第4位になっています。まずは女性本人の腕組織から細胞が採取され、iPS細胞を経て網膜の細胞(1.3mm×3mm)が作り出されました。続いて、患者の網膜から異常な血管を取り除いた上で、作成された細胞を移植しました。この細胞は本人の腕から採取されているので、拒絶反応はありません。
C 手術から一夜明けた9月13日、患者は「視野が明るくなった。」と話しているとのこと。しかし、手術が成功したかどうかは、安全性や効果など一年かけて評価します。特にガン化していないか、慎重に様子を観察します。もしガン化していれば、レーザーで患部を焼くことになっています。もし安全性が確認されたら、iPS細胞を活用した移植手術が有効とされる、心不全・角膜疾患・パーキンソン病・脊髄損傷など、他の臓器でも移植手術が行われることになっています。
D この「滲出性加齢黄班変性」に対する同じ治療は、今後6人に行われます。ただ、一人数千万円かかること、手術に当たっては網膜の出血・剥離・扱いの難しい細胞シートなど、クリアーすべき課題が沢山あります。普通の治療が出来るようになるのは、早くて10年後とされています。