読書感想文をめぐって
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2014.8.17(日)


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 夏休みも、いよいよゴールが見えてきました。子ども達にとっては、宿題の方も気になるところではないでしょうか?

 そこで今回は、「読書」「読書感想文」にスポットを当てることにしました。まずは、「読書の意義」です。これが「読書の意義」の全てではありませんが、一般的に語られている内容を図式にしてみました。

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全体像













三点セット


 一般的に「読書感想文」の体裁として、三点セットが求められています。

 その本はどんな内容か?
 その本のテーマは何か?
 自分の意見は?(本の内容に関する意見文)

 これらを盛り込みながら「読書感想文」に仕立てていきます。

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自由に思いつくまま


 「読書感想文」と聞くと、何だか難しいイメージを浮かべる子どももいます。

 読書そのものが嫌いな子、コメント(感想や意見)を持つことが苦手な子、思ったことを作文することが苦手な子、……こういう子は、「難しい」「嫌い」というイメージを抱いているように思います。

 読書そのものが嫌いな子については、日頃からの関わりがとても大事です。学校を卒業してから得る知識や教養を考えるとき、読書抜きには考えられません。何としても、在学中に(出来れば幼児期に)「読書の喜び」を体感させ、「読書習慣」を身に付けさせてやりたいものです。

 コメントが苦手な子がいます。こういう子は、日頃の生活の中でも、感想を求められたら「別に……」「ふつう……」などとつぶやくタイプの子です。これまた、幼児期からの関わり方が左右します。さまざまな出来事、事象に対して、自分なりの考えをまとめてアウトプットする子(やがては社会人)にならないといけません。

 最後に「作文が苦手な子」に関してです。こういう子は、井戸端会議は賑やかに楽しくできるのに、いざ改まった場でスピーチすることが苦手な子でもあります。

 このタイプの子は、日頃から文章を書く機会を数多く持たせることが大事です。それも「作品主義」ではなく「習作主義」が大事です。負担のない短い作文の機会を重ねるのです。この積み重ねを通して、「書くことは負担ではない」「書くことはへっちゃらだ」というところに持って行ってやる必要があります。

 作文の内容とか、表現力などについては、回数を重ねることと並行して、優れた文章に触れる機会を持たせることで、自然に着いてきます。

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なぜ? が大事


 物語の本にしても、実用書にしても、読み進める中で立ち止まる場面があるはずです。

 面白い、悲しい、すごい、なるほど、……。そういう心動かされたところを、読書感想文では取り上げます。どこを取り上げるかは、まさに十人十色です。そこが面白いところです。

 大事なのは、「なぜ面白いと感じたのか?」、「なぜ『なるほど』と思ったのか?」という感情の根拠です。そこで読書の質が問われます。読書感想文のレベルが決まります。

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生活作文との違い




 生活作文と読書感想文は、ちょっとした違いがあるだけです。

 生活作文は、体験を題材にして自分のコメントを述べます。

 読書感想文は、読書の内容に関してコメントを述べます。

 なお、読書感想文は「書評」ではありません。読書感想文は「自分を語る」作文でもあります。自分が出ていない読書感想文は、読んでも味わいがありません。

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自分を語る


  自分にしか書けない、世界でたった一つの読書感想文、……それは、「生活作文」が盛り込まれていることが原則です。同じ本を読んでも、まさに十人十色・千差万別になるのは、「自分を書いている」という側面があるからです。低学年になるほど、生活作文の色が濃くなります。

 問題は、どの程度「生活作文」的な文章を盛り込んでもいいかということです。これは、言葉で割り切れません。説明し切れません。ひと言で言うと、「自分を語っていながら、見事な読書感想文」です。 ……答えになっていませんかね?

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書き出し


 子ども達を見ていると、この「書き出し」でつまずいています。ここがクリアーできれば、黙々と鉛筆を動かしていきます。

 この「書き出し」は、読書感想文のなかでも重要な部分でもあります。「おっ?!」と読み手の気を引くかどうか、読みたいと思わせるかどうか、……ここで決まります。

 いろんなパターンがありますが、上の図式を参考にしてください。

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まとめ


 何事も、最後の部分は印象に残るものです。読書感想文の場合も、最後の「しめ」がばしっと決まっていると、読書感想文全体、きりっとします。よい印象が残ります。

 おおむね、上の図式の通りですが、やはり期待したいことは、「その本を読むことによって、この子は本当によかったなぁ」という印象を抱かされることです。多くは、その本の出会いによって、今後の生活、生き方考え方に成長が感じられることです。

 ただし、「これからは、友達の気持ちを大事にします。」と書いてあっても、心に響く場合と響かない場合とあります。文脈的に素直に読めるか、取って付けたような印象を抱くかの違いです。

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これで
読書感想文に関して
全てを語った
というわけではありません。
とりあえず現時点で
私の脳裏に浮かんだ内容を
図式化したに過ぎません。

読書感想文に関しては
以前
そういうテーマで
サイトを開いています。
次の通りです。




読書感想文の書き方
読書感想文を好きになろう
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以下に
読書感想文の
構想パターンについて
5つほど
例を掲載します。


















読書感想文のパターン
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T


 ずばっと、自分の意見から入るパターンです。以下、そう考えた理由を述べるとともに、具体的な事例を挙げます。本の中からの他に、自分の体験も紹介すると、立体的になります。

 その後の流れは、「もしも、……」と仮定した場合のことを述べたり「ぼくだったら、……」と自分を前面に出した後、「だから、……」と最初に述べた「意見」に戻り、強調して終わります。

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U


 自分の体験から切り込む書き方です。その流れの中で、本の内容に入っていきます。そして、作者の思いや願いについて書くとともに、自分の考えを書いて締めくくります。

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V


 小学生によくあるパターンですが、その本との出会い(きっかけ)から入る書き方です。

 心に残った部分を取り上げるとともに、似たような体験を紹介し、登場人物を自分に引き替えて書いた後、自分の考えを述べて締めくくります。

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W


 本の中で、一番印象的な出来事、あるいは「せりふ」を最初に持ってきます。これは、なかなかインパクトがあるので、多くの感想文や生活文で見かけます。

 つづいて「なぜそこか?」についてのべるスタイルが通常です。自然の流れとして、自分の体験談へと内容を進め、最後に意見を述べて締めくくります。

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X


 Uと似ていますが、「本の中の事例」「体験談」を織り交ぜながら入る書き方です。自分のこととして読み進めている、わがことに引き替えて考えているという印象が残る書き方です。

 そこから考えさせられたことについて、理由を添えて述べ、最後に自分なりの結論を書きます。

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せっかくよい本に出会って
多くのことを学んだのに
いざ原稿用紙に向かったら
頭が真っ白になったり
鉛筆が動かなかったり
というケースがあります。

その際
付箋を使って
内容の概要を書き
並べ替えながら
読書感想文の構想を練る
という方法があります。

書くことによって
強く心に残る
という良さもあります。
より深く考える
ということもあります。

想い出に残る
読書感想文が書き上げられることを
願いつつ
今回のコメントの部屋を閉じます。