物語・小説の類にあっては、基本的にストーリーを楽しむのが読書です。架空の世界に入り込むわけですが、やはり注目すべきは「登場人物」です。
さまざまな出来事に遭遇して、登場人物は怒ったり泣いたり笑ったり、……さまざまな態度や表情を繰り広げます。読者は、自分が登場人物になったような感覚を味わうこともあります(内の目)。また、第三者的に登場人物を客観的に眺めることもあります(外の目)。
こうやって読み進めながら、いつの間にか「自分を見つめ」ています。自分の言動を振り返ったり、似たような場面を思い浮かべて反省したりもします。こうやって、自然な形で「心を育て」ているのです。「人生を知る」「生きる力を得る」と言い換えることも出来ます。
時には「疑問」を抱いてあれこれ思いをめぐらすこともあります。自問自答の末、「人」「こころ」「生き方」について何らかのヒントを得ることもあります。
自分の人生は紆余曲折あるといえども、限られています。その点、物語の中では、幼児になったり大人になったり高齢者になったり女性になったり、都会の高校生になったり、看護士になったり、江戸時代の人物になったり、未来の人物になったり、動物になったり、……。さまざまな人物になり、境遇に出会い、出来事に遭遇します。
読むと読まないと、それはきっと「たった一つの人生」に微妙な影響を与えることと思います。