@ 人間始め動物にとって、寄生虫は嫌われ者である。病気を運んでくることもあるし、寄生されれば体が弱ることもある。しかし、逆に動物は寄生虫に大いに助けられて生きてもいる。例えば、宿主の免疫系を調節してくれる(有害なウイルスを退治してくれる)寄生虫や、体内に取り込まれた有害物質を取り除いてくれる寄生虫もいる。だから、あらゆる動物に寄生する回虫・ダニ・シラミなどの寄生虫も、保護すべきだという研究者もいる。
A マッケンジー教授(シンガポール大学)は、鉤虫(こうちゅう)という寄生虫が果たす役割について研究発表した。鉤虫は腸に寄生して腸の病気を引き起こし、貧血の原因となる。だが、実験用マウスを用いた研究で「鉤虫は宿主(この実験ではマウス)の免疫反応を刺激して、さまざまな病気から守ってくれている」ことが分かった。腸内の宿主の数が多すぎれば害になるが、少数がいる程度ならウイルスから宿主(動物)を守ってくれているのだ。
B 別の研究によると、魚の消化管に棲んでいるサナダムシは、魚の体内に取り込まれた有害物質を取り除いてくれていることが分かった。ただし、寄生したサナダムシが多すぎると、寄生された魚は死んでしまう。適量が宿主(魚)を守ってくれる条件なのだ。