要約学習
疑問に答えて

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2016.11.27(日)


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先般
K中学校に於いて
要約学習の研修会を行いました。
事後
感想などが送られてきましたが
その中に「疑問」「質問」もありました。
今回は
この質問に応える形で
コメントを書きました。






要約学習を教科学習につなげたいが
要約学習が具体的に
何の役に立つのかがわかりにくかった。

要約学習の授業で
伸ばそうとしている能力


 要約学習の授業を通して、基本的に次の力を伸ばすことを目指しています。
1)人の話を聞きながら(聞いて)、構造的に内容を理解する能力。
2)文章を読みながら(読み終えて)、構造的に内容を理解する能力。
3)スピーチ(プレゼン)をする際、端的で理解しやすく話すことが出来る能力。
4)文章を書く際、読む人にとって、すっと内容が脳裏に残るよう構造的に書く能力。

◎ つまり、日常生活において欠かせない言語力(「聞く」「読む」「話す」「話し合う」「書く」という人間的な活動を支える力)を総合的に伸ばすことを目指しています。その根幹を為すのが「図式」を描く(書く)力です。図式力を伸ばすことによって、言語力を総合的に伸ばすことを目指しています。

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調べ学習をする際
丸写しをさせない


 ところで、要約学習がスタートしたのは「総合的な学習の時間」です。「調べ学習」をする際、子ども達の多くが「文章の丸写し」をしていたことが問題点として挙げられました。その打開策として、学校ぐるみで「要約学習」が始まりました。

 丸写しをしないために、「文章を図式化し、その図式を参考にしながら文章を再現する。」という手順と手法を学ばせます。「文章を再現する」という部分については、(図式を参考にしながら)文章化する時間に個人差が大きいことや、時間がかかることから、「要約学習においては音声言語によるプレゼン」を導入しています。

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原稿を棒読みしない
プレゼン(スピーチ)を目指して


 音声言語によるプレゼンを導入した経緯には、もう一つ理由があります。「総合的な学習」の時間で発表(プレゼン)をさせる際、文章を棒読みする傾向がありました。これを打開するためです。「図式を参考に(できれば見ないで)、聴衆の方を向いてプレゼンする」訓練と位置付けたのです。

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要約学習の手法を
教科の学習に応用する


 上記の質問の場合、この手法を教科学習に繋げたいとのこと。これについては、各教科、各先生が創意工夫をしながら生み出してほしいというのが、私の基本的な立ち位置です。が、質問がありましたので、あえて(専門が国語科の)私が考えるアイデアを次に列挙します。

1)国語科では、説明的文章を扱うときには、私は基本的に「図式化」を導入していました。その文章を一人一人の生徒がどのように読んだのか、読解の程度はどうなのか、生徒の図式をみれば一目瞭然です。

2)国語科で文学(物語)教材を扱うとき、作品にはいくつも「伏線」が存在しています。そこで読み深めさせるために、話の構造を時間・空間で図式化させることがありました。作品を図式化する過程で、生徒は様々なことに気づきます。ちなみに、この学習方法は大学時代の演習において『それから』(夏目漱石)でやらされたことが参考になっています。

3)社会科では、歴史・政治経済などの授業でどんどん活用されることをお勧めします。教師が知識を伝授するのではなく、まずは子ども達自身が教科書教材の解説を読み解く経験をさせる方が、その後の学習に生きてくると思います。

 その際、長文を図式化させると負担感を感じさせたり、時間がかかったりするので、範囲を限定して行う方が良いと思います。4人グループで分担し、「要約学習」の授業で行っているように「相互プレゼン」という学習指導過程をとる方法もあります。

 この方法は、出雲市立O小学校のK先生が「アクティブラーニング」の一環として導入し、全国研究会で高い評価を受けておられます。

4)理科では、各単元・各種実験など、図式を取り入れるアイデアはたくさんあると思います。赤来中学校では、かつてM先生が各学年とも一単元、調べ学習をさせるという方針で臨んでおられました。「一年生は人体」「二年生は天体」「三年生は環境」で図式化の学習を導入しておられました。

5)数学では文章題の際、図に描くことができるかどうかがポイントとなります。文章題を図式化し、お互いに比べあうという方法が考えられます。

 赤来中学校では、かつてI先生が図形学習・証明学習の際、グループで相談した後、(代表者が)「解く道筋を教師にプレゼンする」という学習指導過程を取っておられました。

6)保健体育の「保健」の学習においては、(社会科と同じく)教科書の文章を図式化したり、それを基にプレゼンしあったりする学習が考えられます。赤来中学校では、かつてN先生がこの方法を導入しておられました。

7)技術家庭科・音楽などでも、調べ学習を導入する際、要約学習の手法(学習指導過程)を取り入れた方が学習成果を上げられると考えています。

8)特別活動では、どんどん導入すべきだと考えています。例えば「学級活動」で修学旅行事前調査(調べ学習)などに導入できます。

 実際、赤来中学校では修学旅行の事前学習で「沖縄の調べ学習」を展開。その際、要約学習の手法を導入しておられます。他にも、例えば一年生の宿泊研修の事後報告、二年生の職場体験学習(総合学習)などに活用しておられます。

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図をイメージできない生徒
読み取りが難しい生徒には
どのように指導したらいいのか?


別に評価規準を設ける


 文字(漢字)が読めても、文章内容が読み取れない生徒がいます。こういう生徒には基本的に、一人一人に対応した個別指導、評価をすべきだと考えています。

 赤来中学校では特別支援学級(知的障碍)の生徒も「要約学習」の授業に参加します。その際、事前に担任が文章(教材)を一緒に読んで、共同作業で「図式化」(実際にはキーワードの抜き出し)をし、プレゼン練習をして、本番の授業に臨んでいます。生徒はこの時の学習を想起しながら授業に参加しています。授業においては様子(出来具合)を見ながら、全体発表をさせることもあります。

 なお、私の教諭時代、学習の遅れがちな生徒については「図式」を求めず、文章の中で「絵になる箇所を選んで描かせ」ていました。また、かつて要約学習の授業では、図式を書かないで「絵」(たとえばゾウリムシの絵)だけを描く生徒がいました。その生徒は、図式代わりの絵を示しながらプレゼンしていました。私は、それでよしとしていました。

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図式のコツは?

習うより慣れよ


 基本的には、中心キーワード(例えば、アメンボ・アマガエル)を中心に持ってきます。その中心キーワードを中心に置き、文章(教材)を読みながら、情報を(できるだけ)単語の形で書き抜いていきます。それらの情報に囲みをしたり、矢印を付けたりしながら、文章の構造を形作っていきます。

 具体的には、図式を描く回数を重ねることが、向上のコツです。同時に、「模範的な図式」を生徒に示してやる必要があります。要約学習においては、この模範的な図式と自分の図式とを見比べながら、「よい図式」を学ぶよう仕向けていっています。

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