要約学習で身に付く学力
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2018.9.30 (日)


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先日
出雲市教育委員会主催の教員研修会があり
要約学習の講師として出かけました。
その際
先生方に研修会の締めくくりとして
以下のようなことを話しました。






要約学習で身に付く学力


@ 一つは調べ学習をする際、丸写しをしない方法を実践的に学びます。

A もう一つはプレゼンをする際、予め書いた作文を朗読しない方法を実践的に学びます。


 このために身に着けるのは「図式力」です。上記二つは、図式力が向上すれば連動して伸びます。

@ 文章を読みながら図式化し、その図式を見ながら作文すれば、著作権に係りません。書いた文章は、自分に著作権があります。その際、「参考文献」を記載するのはマナーとされています。

A 人前でスピーチ(プレゼン)する際、予め作文を書くという労力と時間は少なくありません。まして原稿を見ないでスピーチしようとすれば、暗誦が求められます。その時間と労力は計り知れません。

 その点、話す内容を「図式化」すれば、その過程で内容が脳裏にインプットされます。話し落としがないよう、ときどき図式に目をやるだけで十分です。

 しかも、作文と比べて図式化は、時間と労力が格段に省エネです。実際話す場に臨んで、スピーチする時間が伸縮自在です。そこが「予め作文する」方法と比べて、大きな長所です。

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伝えたいという熱い思い


 調べたことをプレゼンする際、ノウハウやテクニックはあった方がいいに決まっています。が、相手の心の琴線に触れるには、「熱い思い」です。このことは価値があるから、是が非でも伝えたいという強い思いがあれば、テクニックを乗り越えて相手に伝わるものです。

 人前で「話す」機会があるごとに、このことは強く自分に言い聞かせたいものです。

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究極は話す内容


 ノウハウやテクニックも大事です。それ以上に「熱い思い」も欠かせません。しかし、究極は「話す内容」です。価値ある内容、聞き手の求めている内容など、話の中味が全ての中核であることは言うまでもありません。

 そういう意味でも、要約学習で使用する教材については、全力投球で題材を捜しています。子ども達にとって「面白い」「なるほど」「へ〜え」という内容を探し求めています。

 ここがヒットすれば、その教材を図式化した児童生徒が「ぜひ伝えたい」というプレゼン意欲が湧きます。

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良い聞き手を育てる


 要約学習の授業においては、「話す」「聞く」「話し合う」という言語活動を重視しています。

 その際、「聞き手」の心構え・姿勢が重要です。よい聞き手に恵まれてこそ、話す方も燃えます。プレゼン力も向上します。ということで、授業でプレゼンしあう学習指導過程の際、心がけて子ども達に伝えるようにしています。

 このことは、日常生活においても同じです。聞き手の誠実さ、熱心さこそ人間関係の潤滑油です。なかなか及第点には届きませんが、私の心がけていることの一つです。

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ほんらい調べ学習は生活読み


 文章を読んで図式化する際、国語科の要約と総合学習における「調べ学習」とは違いが出て当然です。

 前者(国語科)の場合、文章を正確に要約しないといけません。国語科では要約力の伸長を目指しているからです。

 その点、後者「調べ学習」の場合は、一冊の本を読んでもA4判1枚の図式で済む場合があります。なぜなら「調べ学習」のときの意識は「求めている情報を探す」作業でもあるからです。

 したがって、同じ本(文章)を読んで図式化しても、書き出された情報が十人十色ということもあります。

 ただ、要約学習の授業「図式化」にあっては、正確さも求めています。教材の内容をコンパクトに再現する力を求めています。この力が根底にあってこそ、「調べ学習」に生きて働く力になるからです。

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日常生活全てが要約学習


 要約学習で身に着けよう(向上させよう)としている学力は、授業以外(日常生活)にふんだんにあります。

 聞くこと、聞いたことを人に伝えること、話すこと、話し合うこと、書くことなど、要約学習ではごっそりレベルアップしようとしています。

 考えてみれば、これら言語活動は日常生活そのものです。日常生活に学ぶ場、伸ばす場が沢山あるということです。このことを意識するだけで、言語力(聞く・話す・読む・書くなど)は日常的に伸ばすことが出来ます。

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メディアリテラシー


 リテラシーとは、「読み書き能力。情報の応用力。情報を受信するだけでなく、発信できる能力も含めた活用力。」のことです。

 メディア・リテラシー(英: media literacy)とは、「情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力のこと。」です。

 「新しい学力観」がクローズアップされてから、このメディアリテラシーの能力(情報活用能力)を伸ばすことが、強く意識されるようになりました。

 テレビ・新聞などマスメディアで報道されていることは、全てが真実とは限りません。立ち位置、考える視点などによって、見方・考え方、結論が違うからです。ましてインターネットには、さまざまな情報が精査されることもなくアップロードされています。このホームページも同じです。

 その際、情報を受け取る側は、さまざまな視点からの情報を取り入れ、吟味し、自分なりの考えを構築していくことが大事です。また、発信していくことも重要です。

 そういう意味で要約学習の授業にあっては、情報を図式化してプレゼンするだけではなく、情報(見方・考え方)に関連して反論したりディスカッションしたりする学習指導も導入しています。

 これこそ、「総合的な学習の時間」創設の目的でもあるのです。

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図式に情報を落とし込む


 私が教材づくりをする際、A4一枚の紙にさまざまな情報源から情報を集め、図式に落とし込みます。テーマ発掘は、テレビや新聞の発端が大半です。「空飛ぶ車」「生物工場」「光るドレス」「ローソンスマホペイ」などなど……。

 その後は、インターネットでの情報収集が中心になります。そうやって集めた情報は、次の紙を準備して「情報の取捨選択」が始まります。小学校高学年向けだったら、5・6年生を意識しながらの「情報そぎ落とし」になります。

 この方法は、「総合的な学習の時間」における調べ学習も同じです。いろんな方面から情報を集め図式化します。その後、プレゼンに必要な情報を念頭に、情報のそぎ落とし作業です。最後に書き上げた図式が、プレゼン用の図式となります。

 そのときには、既に脳裏には内容が構造化された立体的な情報として、インプットされているはずです。どこを皮切りに、どのようにプレゼン(スピーチ)を展開していくべきか、その構想も練ることが出来ます。

 あとは、プレゼン用の図式を見ながら、時間を計って数回練習をします。もう大丈夫です。ほとんど手元の図式を見なくても、堂々とプレゼンテーションが出来るはずです。

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図式の活用


 図式を手に入れたら、日常生活においてさまざまな方面で活用出来ます。私が活用しているのは、例えば次のような場合です。

読書しながら内容を図式化する。
講演会を聞きながら図式化する。
テレビ視聴しながら図式化する。
スピーチをする前に図式化する。
文章を書く前に(構想を)図式化する。

 これらは手元に残ります。後日、その図式を見れば、あっという間に内容を思い出すことが出来ます。

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「いじめ防止対策基本法」


 飯南町教育委員会では「いじめ防止対策基本法」が策定されます。先日の定例会で、事務局から原案が出されました。20ページ以上にわたる膨大な文章量です。通し読みしていると、頭がこんがらがります。どこが頭かシッポか、どういう流れになるのか、全体構造はどうなっているのか?、……。

 ところが大丈夫です。原案の原案の段階で、担当者に基本法全体を図式化してもらいました。まさに一目瞭然です。担当者も重複や記載ミスなど、図式化しながら気付いて訂正したとのことです。

 こういう場合でも、人に説明する場合は文章より「図式」を基に説明した方が、はるかに理解しやすくなります。

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パワーポイント


 学校の調べ学習(発表会)にあっては「パワーポイント」花盛りです。

 しかし待ってください。パワポを使うと話す方も聞く方も楽な反面、大事な「プレゼン力」「聞き取る力」が伸びません。

 学校教育にあっては、そういう機器を使わずに堂々とプレゼンする力を付けるべきです。便利な機器を使う分、伸ばすべき能力が伸ばし切れません。

 パワポなどの機器は、単純明快な音声言語だけによるプレゼン力が伸びてからこそ、威力を発揮します。足らざるを補うために機器を活用するという考え方があれば、見直して頂けたらと願っています。

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要約力は受験学力


 文章要約力と文章読解力とは、相関関係にある。このことは、国語の授業を通して確信めいたものがあります。実際に昭和63年度の島根県国語教育研究大会に際して、研究発表もしました。

 高校で受験学力(国語科)に実績がある先生に、読解力の付け方(国語の点数向上)について質問したことがあります。その先生曰く、「私のやり方は単純です。最初はひたすら新聞の社説を写し書きさせます。そのうち、文章を1/2に縮めさせます。最後は1/8の分量にまで縮めさせます。これを愚直に繰り返させていると、着実に必ず点数が上がります。」

 そういえば「公文式」の学習方法も「縮約」と命名された要約学習が基本となっています。

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