勉強する意義
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2019.7.7(日)


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要約学習の授業で
なぜ勉強するのか?
について取り上げました。







要約学習の授業
後半


 要約学習の授業、後半では「与えられた題目について、自分の考えを図式にする。」→「発表する」「ディスカッションする」という学習指導過程を導入しています。

 調べ学習の資質能力を背景に、「総合的な学習の時間」創設の趣旨「
社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成」「自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむ」ことを念頭に授業を展開しました。


 これまで与えてきた題目は、例えば次の通りです。

弟が家庭で勉強しないけど、するための方策は?
土曜授業を復活すべきか?
学校週6日制に戻すべきではないか?
部活動は(欧米のように)地域で担うべきではないか?
学校給食は廃止すべきではないか?
飯南地域中高一貫教育連携校からの入試は特別選抜でいいか?
晩婚化・未婚化を打破する方策は?
沖縄への修学旅行は存続すべきか?
小学生への宿題は必要か?
学校へのスマホ持参を認めるべきか?
小学生にスマホを持たせるべきか?
教科書は学校に残して帰ってもいいか?


 今回(7月)、赤来中学校要約学習のお題目は「勉強」としました。指導者(私)が上掲の「勉強はなぜ必要か?」のスピーチを約7分間します。生徒は聞きながら図式にします。聞き終えたら、手元の図式を参考に40秒以内に(ペアの相手に)話を再現します。

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指導者が
スピーチ用に書いた図式



スピーチの概要


 「勉強」という言葉は、大昔の中国で使われ始めました。「勉強」はもともと中国語です。漢字の字義(もともとの意味)は、「勉」は「勉める」(頑張る・努力する)です。「免」はお産する様子(分娩)から出来た漢字です。もともと苦しい、辛いという意味が含まれています。

 「強」は「強い」という意味の他に、「強いる」(無理やりさせる)という意味があります。

 したがって、「勉強」という言葉が産み出された初めから「辛く苦しいこと」「無理やりやらされること」という、あまりイメージ的にはよくない言葉です。 ……皆さんにとって「勉強」のイメージはどうですか?

 しかし辛く苦しい一面があるから、勉強は価値があるとも言えます。「さまざまな誘惑や怠け心に打ち勝って勉強に立ち向かう」体験を積み重ねることを通して、人は立派な「人間」に成長していきます。教養や人間力を高めていきます。

 もう一つ、確かに勉強は辛い一面はありますが、それを乗り越える体験を通して「分かった!」「出来るようになった!」という大きな喜びを得ることが出来るのです。それは、実に気高い深い人間的な喜びです。

 もう一つ、勉強を頑張ったら成績が伸びます。そうしたら自分にとって、嬉しくありがたいことがあります。将来の職業選択の幅が広がります。入学試験・就職試験など、世の中にはさまざまな「試験」があります。成績が良ければ良いほど、選べる幅が広がります。自分の未来を切り拓く、と言ってもいいと思います。

 最後に人類全体にとって勉強(学ぶこと・研究すること)は、どんな意味があるかを言います。それは「魔法の国を造る」ということです。

 例えば江戸時代の人にとって、テレビ・エアコン・飛行機・自動車・スマホ・冷蔵庫・ドローンなどなど目の前に見せられたら、どんなに驚くでしょう??? ……人類は勉強を土台にして、一つ一つ夢を実現し、(昔の人から見たら)魔法の国を造ってきているのです。

 特に近年は科学技術の進歩は、驚くべきスピードです。近い将来、ロボットが農作業をしたり、料理を作ったり、診療をして薬を処方したり、高齢者の介護をしたり、……という時代が来るかもしれません。

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自分の考えを図式化する


 続いて、「小学校5年生の弟が、まったく家庭で勉強しません。兄(姉)として、どのように対応したらいいでしょうか? 対策を考えてください。

 ただし、作文してはいけません。浮かんだアイデアに関するキーワードを記録し、図式化しましょう。

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弟が勉強するようにする方策は?


 生徒は、さまざまな考えを発表してくれました。例えば……

 勉強が終わったら好きなことをしてもいいことにする。
 勉強はなぜ必要か、話す。
 一緒に勉強する。
 分からないところを教えてやる。
 優しく励ます。
 ご褒美を準備する。(一緒に遊ぶ・おやつ・ゲームなど)
 頑張ったらほめる。できたら褒める。
 親からも褒めてもらう。
 やらなかったらゲームを取り上げる。
 やらなかったら親に叱ってもらう。

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生徒の図式「方策」

図式化する時間=3分









図式化しながら思考をめぐらす


 要約学習におけるポイントは、これらの意見を図式化することです。日頃の生活の中でも、スピーチやディスカッションの機会は沢山あります。その機会に作文するのではなく、図式にしながら思考をめぐらせると、ぐんと労力が軽減されます。

 また、短時間で思考を巡らしたりまとめたりが可能になります。発表の際には、下を向いて書いた文章を朗読することがありません。発表のしあいではなく、話し合いのスタイルに近づきます。

 浮かんだキーワードをポンっと書き留め、次の浮かんだ言葉(考え)と関連があったら、矢印で結んだり枠で囲ったりします。実に単純明快です。

 実際、授業では自分の考えを図式化する時間は、たった3分です。子ども達の大半はこの時間で3つはアイデアをメモすることが出来ました。なお、プレゼン(自分の考えを話す)は、30秒間を設定しました。

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教養を高める


 「勉強はなぜ必要か」についての回答(解答)は、今回の私のプレゼンがすべてではありません。また、説明不足の部分もあります。しかし、プレゼン時間は7分以内としています。とりあえずという腹積もりで語りかけました。

 世の中には、さまざまな人がいることは確かです。せっかく高い成績を上げ、それなりの地位に就いても、身に付けてきた「知恵」を良からぬことに使う人もいます。学問イクオール「教養」「人格」(素直さ、謙虚さ、優しさ、純粋さ、品のよさなど)とならない例外もあります。

 せっかく培った知恵を、高齢者ターゲットの詐欺など様々な犯罪に使ったり、汚職に使ったり、人を陥れることに使ったり、……。ですから勉強を頑張ること(学問を納めること)は、そのまま必ずしも「教養」とはなり得ないところが悲しい現実です。

 とりわけ学業成績がよい人は、より影響力が大きい立場で仕事をしたり、振る舞ったりする可能性が高いのが、今の世の中です。ですから学業に優れている人は、より自らを律する能力、豊かな人間性が求められています。

 そういう意味で学校教育では古来、「知育」「徳育」「体育」の3つがバランスよく備わるよう配慮しつつ、全人教育が行われてきています。勉強と聞くと学業成績だけを思い浮かべ勝ちですが、そうではないという点について、今回の要約学習(授業)では深入りしませんでした。

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生涯学習の観点から


 平成4年度の学習指導要領改訂から、「新しい学力観」「生涯学習」が強調されるようになりました。学校を卒業したら、勉強(学習)は終わりではありません。社会や科学技術の進展は日進月歩、目覚ましいものがあります。インターネットが普及して、情報が乱れ飛ぶようにもなっています。こういう社会情勢を背景に日々、(学校を卒業してからも)学び続ける必要があります。

 子ども達には、情報収集の方法、情報のまとめ方、自分なりの考えを幅広い視点からまとめる方法、自分の考えをプレゼンする方法を、学校教育を通して身に付けていってほしいと、強く願っています。要約学習の研修会や授業に出掛けるときは、このことを自らに強く言い聞かせている私です。

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