『ふじつる』
子ども達との合同歌集

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2021.3.7(日)


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『ふじつる』は
毎年、年度末に発刊している
赤名短歌会の歌集です。

ここ十年間は
赤来地域の子ども達(小6・中3・高3)の作品を
併せて掲載するという
自画自賛ですが
画期的な短歌集です。

この趣旨を認めていただき
赤い羽根共同募金から5万円
(今年度の歌集制作決算は8万8千円)
寄贈いただいて発行しています。

この度は
歌集「序文」を掲載します。





 『ふじつる』第15集をお届け致します。今年も多くの皆様の深いご理解と温かいご支援に支えられて発刊できたことを、心より感謝申し上げます。

 この『ふじつる』は平成22年度から、赤来地域の各学校卒業学年の皆様の作品を届けていただいております。おかげさまで今年度も歌集『ふじつる』は、地域の「心の架け橋の一助」となることを願って発刊することが出来ました。児童生徒の皆さんには、素朴な作品、キラリと光る表現の作品、文学的な作品、なるほどと唸らせられる作品など、価値ある作品をお寄せいただき、この歌集に「華」を添えていただきました。先生の作品をお寄せくださった学校もあります。担当の先生、児童生徒の皆さんには、卒業を控えて忙しいなか作品を送っていただき、ありがたく厚くお礼申し上げます。

 短歌の魅力の一つは、リズムの心地良さが挙げられます。五・七・五・七・七という韻を踏む独特のリズムは、古来より日本人に愛されてきました。声に出して読んだとき、滑らかに心地よく響きます。テーマは日常にあるので、短歌を趣味にすると日常生活でも旅行先でも心象をとらえ感じようとする癖がつき、生活がとてもフレッシュで豊かなものとなります。季節の移ろいの微妙な美しさなど、毎日の生活一瞬一瞬を大切に生きることにつながっています。

 赤名短歌会の会員は十人という少人数です。一年一年、年齢を重ねてもいきます。しかしながら、地域の温かい支えを励みに、短歌という伝統文化の灯を赤来地域に点し続けていきたいと決意を新たにしております。

 終わりになりましたが、飯南町教育長 矢飼 斉様には「第十五集にはコロナ禍の特別な作品があるように思います」と終息を願う寄稿を賜りました。学校を代表して赤名小学校 廣澤 守校長様には「一即一切、一切即一」という言葉を引用された印象深い祝辞を賜りました。ご多忙の中から感銘深いご寄稿をいただき、ほんとうにありがとうございました。

 なお、この歌集制作に当たっては、発刊の趣旨をくんでいただき、「赤い羽根共同募金」から温かい助成をいただいております。この場を借りまして厚くお礼申し上げます。
                         
                              赤名短歌会会長 烏田勝信

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子ども達の作品から


【小学生】

遊びつかれボスッと雪にたおれこむ空は青いが町は真っ白

朝起きて雪のけはいに身もふるえ窓を開ければそこは美術館

ゆっくりと鼻にとまる白い粉空見上げると雪のまほうよ

中学か…… みんなと過ごした思い出は心のカメラに残しておこう



【中学生】

ほてる頬何がそんなに良かったの? でもありがとうひっつき虫よ

君と出会い一緒に過ごせた一年間だけどそろそろ話題持ってきて

全国の舞台を思い猛練習風は今君の思いをのせて吹く



【高校生】

全集中呼吸を整え家を出る高校生活もうすぐ終わる

マフラーは赤や緑のチェック柄JKらしく冬もかわいく

やるせなしマスク越しの私生活希望に満ちた思い出消えゆく

寒い冬こたつの中が天国でくまになってる気分です(ねこじゃね?)

移りゆく世間の情勢変われども何も知らずに雪は降りゆく

春風の蜜の香りに誘われて羽根を広げるアゲハチョウたち

空枯れて宿を訪ねる渡り鳥道を求めて羽はばたかす

君と見るこの風景はいつまでもしまっておこう引き出しの中

昼ご飯感染予防前を向き一人で食べる飯は悲しき

青い春我らの手にした栄光は何にも勝る宝とぞなりけむ

世の中に絶えてコロナのなかりせば2020はのどけからまし

体より心をやられるコロナ禍で一人の優しさ明日への希望に

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赤い羽根共同募金
実績報告書


 赤名短歌会は活動を始めて31年が経過。会員は今年度1名が加わり、現在10名です。

 毎月、第3金曜日(午後1時半〜4時半)に例会を持ち、持ち寄ったお互いの作品についてコメントを述べあっています。こういう交流を通して、よりよい作品づくりを目指すとともに、四季折々の風情を語り合ったり、世相を語り合ったりと話に花が咲き、楽しいひとときを過ごしています。

 24年前、一年間の成果を歌集という形で残すことを思い立ち、『ふじつる』(創刊号)を発行しました。第4集(平成22年3月発行)からは、赤名小6年生・来島小6年生・赤来中3年生、それぞれ全員の作品を併せて掲載しています。この取組が認められ、第6集以降は、貴事業の支援を受けることが出来、毎年発行することが可能になっています。なお、第7集からは更に飯南高校3年生の作品も掲載を始め、相互の交流を深めています。

 このように一人一人の短歌の作品を一つの「歌集」に納めることによって、児童・生徒(保護者)とが心を通わせあい、児童生徒の「ふるさとを愛する心」を涵養していると確信しております。また、地域の福祉向上にも幾ばくか寄与出来たのではないかと喜んでおります。

 これからも「赤い羽根共同募金」から浄財をご支援いただくなど、地域の温かい支えを励みに、短歌という伝統文化の灯を赤来地域に点し続けていきたいと決意を新たにしております。

【備考】短歌は、四季折々、自然の移り変わりの中で、自分を見つめたり自然を見つめたりします。そして、その時々の感動や思いを31音節(5・7・5・7・7)に歌い込もうと言葉を探します。その過程で感性を磨き、季節感を養い、優しさを育みます。短歌は散文にはない、奥深い世界が広がっています。

 こうやって生み出された作品を活字にし、歌集として残し、相互の作品を鑑賞しあうことは、お互いの視野が広がるとともに心が通いあいます。今後も歌集『ふじつる』は、地域の子ども達と大人との心の架け橋となることを目指して発刊したいと考えております。

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ありがとうメッセージ


 赤名短歌会会員も、高齢化が顕著になってきております。毎年、歯が抜けるように(介護等が理由で)退会される傾向が続いており、現在の会員は10名です。こういう現状にあって、「ふじつる」を発刊し、その中に小学生・中学生・高校生の作品が掲載されていることは、会員にとって大きな励みとなっております。一方、児童生徒の皆さんにとって小・中・高校と、在学中に3回、『ふじつる』に作品が掲載されることになります。実際に在学中の『ふじつる』参加が縁で、赤名短歌会に入会しされた若者が今年度あります。

 これも、ひとえに本助成事業から多額のご支援をいただいているおかげです。会員一同、感謝の気持ちでいっぱいです。改めまして、厚く感謝申し上げます。

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掲載した私の作品群

かたちなき時間といへどあらたまの年は静かにわが前にあり

豆まきをやり終え鬼は仰向けに倒れて園児の残響聞けり

さくら花咲きこぼれたる露天湯に手足伸ばせり職退きて

えいえいと山の坂道愛犬と走る木立にクマ鈴響く

今日もまた呼吸のごとく吹き過ぐる春風乱しコロナに暮るる

露天湯に手足伸ばしてくつろげどコロナ患者を叩くヒトの世

カタカナでコロナと書けば君になる君遠ざける盆の来たりぬ

慣れねばと思へど街は表情の見えぬマスクのひとひとの波

はやしこも露店も見えぬ秋祭りにコロナ無縁の苅田のカラス

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